雨のふる星、遠い星

依久

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21話 畜生!

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突然の展開に頭がぼうっとする。


挑発ってなに?
挑発したのはアスランでしょ?
あたしは彼の瞳から視線が外せなかっただけ。



気がつくとあたしの手首は、アスランのゴツゴツした手に一箇所にまとめられシーツに縫い止められていた。その格好でアスランに唇を責め立てられる。



ちょっと待って…
あたし…自分の気持ちを整理しなきゃ…



婚約者がいたアスラン
婚約者を死に追いやったあたし
そのあたしに口づけるアスラン



でも、アスランはあたしを憎む事はあっても好きになるなんてありえない。



憎い相手ならチカラでねじ伏せるだろうに、優しく髪を撫でながら唇への攻撃は激しさを増してゆく。




困った事にあたしの身体の奥の方が疼いてきた。



これではまるで恋人同士の行為のようで、あたし、勘違いしてしまう。



出来れば一生勘違いしていたいけれど現実は甘くない。



勘違いして入れ込んで捨てられる



そんな図式が浮かんだ。





ポイっと捨てられるくらいなら最初から関わらない。
そうしないと自分を守れないから…。



変な気になる前にアスランに行為をやめてもらわなければ!



でないとこの気持ちに歯止めが効かなくなる!



あたしが憎いアスラン。
そのアスランに恋しているあたし。




報われぬ想い。



そんなものは重すぎる。



関わるな、関わるな、と頭の中で警鐘が鳴った。



渾身のチカラを込めて抵抗した。
アストロノーツ出身のアスランはビクともしない。



「ん、んん~~~!」


やめて!と叫んでみるが声にならない!


もう一度渾身のチカラを込めて抵抗した。
やはりビクともしない。



自分の無力さに悔しくて涙が出た。



その時、拘束が解かれると同時に、アスランがあたしの顔の横に拳を打ち込んだ。


「畜生!こんなつもりじゃ無かったのに!」
「こんなつもりってなに…」
「悪い、魔がさした」
「あなたにはエルダが…エルダがいるでしょう?こんな事、したらダメ…」
「そうだな、俺にはエルダが…。しかしエルダはもう…戻っては来ない」



心に突き刺さる一言だった。



ドクンと心臓が跳ねた。
苦しくて空気を吸い込む。



「シルヴィア、ダメだ!」
「はっ…あた…し…」
「息を吐いて」
「は…あ…」



今日、何度、この手に助けられただろうか。
しきりに息を吸うあたしの口をアスランの大きな手が塞いだ。



「鼻で息しろ、鼻で」


数分後、落ち着いたのを見てアスランはゆっくり息をするように指示し、あたしは従った。



「詳細は後々話すけど、エルダは再生している。だから死んだけど死んではいない」
「生きて?」



じゃあ、なぜここに居ないの?



と聞くと、アスランはとても切なそうな表情をしたのでそれ以上は聞けなかった。



「エルダ再生の件は思い出すのも辛い…」」
「なぜあたしに?」
「あんたがアクエリア号の責任者だったからだ」
「やっぱり知って…」
「………」
「なのになぜ親切にしてくれたの?」
「あんたはエルダに似ている…」
「え?」
「俺の愛したエルダにだ。再生した後の記憶が空っぽの方じゃなくてオリジナルの…ほう」




あたしは目を見張った。



オリジナルのほう…。




クローンを作るのには、オリジナルの身体の一部がいる。
例えば髪の毛とか……。



あたしはエルダの写真の裏に貼ってある髪を思い浮かべた。



「エルダの親は、クローン再生の時に、知識が無いばかりにエルダの子どもの頃の髪を預けてしまったんだ。俺はてっきり最近の髪だと信じて疑わなかった」
「クローンは、髪の年齢で再生される…」
「そうとも!エルダは10歳の姿で再生された」
「10歳だぞ、10歳。そんな子どもと結婚なんか出来るわけがない」
「アスラン…」


だからな、エルダにはもう会わない。
彼女にしてみれば、俺は見知らぬおじさんだよ。



「成長促進剤を使えば…」
「あれは、失敗すれば脳に障害が出る。特権階級だったあんたは知っているだろう?」
「ええ…」
「エルダは…【エルダちゃん】は時間の法則に従ってゆっくり大人になって、やがてふさわしい相手と出会う。俺はそれしかもう願えない。だから、ここに、辺境の星にわざわざ来たんだ。ここならエルダに会わなく…」



アスランの語尾が震えてきた。



「頭冷やしてくる。おやすみ」



バタンと扉が閉まり、あたしは暗闇の中取り残された。


つづく







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