雨のふる星、遠い星

依久

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24話 嘘

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身体の奥が疼いて仕方がない。
でも、これ以上はダメ。


あたしはエルダじゃないもの。
シルヴィアだと知れたらアスランはめちゃくちゃ自分を責める。
彼はそういう人だ。


彼が自分を責めなくてすむように、方法はふたつ。


このままエルダのフリをして抱かれてしまう。
彼が寝入ったところで何食わぬ顔して寝室で夜明かしをする。



二つめのやり方は、今すぐシルヴィアだと明かして行為をやめてもらう。
そして、あたしが誘惑したという事にする。


そんな事をしたらアスランに恨まれる。
エルダの事と重なり二重に恨まれる。


でも…


自分をエルダだと偽るよりは、自分が誘惑したと偽る方が信憑性が増すような気がした。



あたしは心を決めた。
どのみち悪者だもの。
今さら罪状がひとつ増えたところでなんとも感じない。



「アスラン…あたしを見て」
「いつもおまえを見ているよ」
「わかっているわ。でも、今一度、あたしを見て欲しいの」
「変な事を言うな。エルダらしくない」



仕方がないな、このまま後ろから挿入しようと思ったのに…。



そう言いながらアスランは、【エルダ】を組み敷いた。
薄闇の中、彼はあたしの顔を凝視した。



「なっ!シルヴ…」
「あたしが誘惑したの」
「なぜ?」
「丸まって寝ていたから、寒かったら一緒に寝てあげようか?て囁いたらあとは流れで…ね」
「俺をからかったのか?ひどい女だな」
「そうよ。だからあたしに関わってはだめよ」



あたしは自分の胸元を脱がされた服で隠した。


床に落ちているブラジャーを拾って立ち上がりそのまま寝室に逃げ込もうとした。



「ちょっと待て!」


アスランはあたしの服を取り去ると上半身をまじまじと見た。




「その傷はなんだ?」
「そんな傷なんてないわ」
「俺の前の仕事はアストロノーツだ。薄闇の中で見分ける能力は高い。首から胸に走る傷が一番大きいが…」



手首にも小さな傷跡が…



そう言って手首を掴まれた。



「あなたには関係ないわ」 
「自殺未遂?」
「ちがう、死のうと思ったんじゃない…」
「なら、その歯切れの悪いものの言いようはなんだ?」
「無意識…」
「無意識にやったのか?自分で?」
「答えたからもういいでしょう?服を返して!」



あたしはアスランの手から服をひったくり寝室に逃げ込んだ。



傷を見られた。惨めだ。



成り行きで忘れていたけれど、あたしを愛する男はこの傷を見る事になる。



ひきつれたような醜い傷跡を!



性感帯を弄られた羞恥と傷跡を見られた惨めさがごちゃごちゃになって寝付けない。



エルダの事、今更ながら知らなきゃよかった。
アスランとは会社だけの付き合いなら、ここに足さえ踏む入れなければこんなふうに泣く事なんてなかったはずだわ。



エルダに対しての罪悪感と、彼女に嫉妬を抱く自分自身の心の醜さに泣いた。




あたしは、アスランが好き。
その感情に気がついてしまった。



だからエルダの事は避けて通れない。



嫌でも自分の心のドロドロしたものを感じてしまう。



綺麗な心で在りたいと思う。
少なくともアスランの前では、綺麗なフリをしていたかった。

 


金髪のエンゼルフィッシュ



初めてアスランと会話した時にそう言われた。



エンゼルフィッシュはその姿形が美しく遠い昔から人気のあるサカナ。



でも、姿に似つかわしくなく残酷な性質を持ち合わせている。



綺麗でいたい
綺麗でいたかった…





帰ろう…。




自分のバックを掴むと、そろりと玄関に向かった。
アスランの気配を伺うと寝入ってしまったみたい。



玄関で静かに靴を履いた。
確かここ、自動ロックだったはず。


アスラン、お給料の手取りが良いのね、と思いながら玄関からスルリと抜け出た。



ごめんね。あとでメール入れるから…。



玄関の扉が閉まる直前に名前を呼ばれた気がしたけれど無視した。



つづく


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