雨のふる星、遠い星

依久

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26話 ヘルプ

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翌日、あたしは社長に呼び出された。


「スミスです」
「入ってくれ」


社長のジャクソン氏は父の友人だ。




父はジャクソン氏の会社に転職するという選択以外は、惑星ルシーダに行くことは認めないと言い切った。


娘の心配くらいさせてくれよ、とも。


そこまで言われては折れるしか無かった。


ただし、生活費一切援助しないで、と念を押した。なので、家賃の安い所しか借りれなかった。


兄のエドワードは、お嬢さん育ちがいつまで持つやら、と呆れ顔だった。
母に至ってはさめざめと泣きだし父と兄が二人がかりでなだめていた。







「朝から呼び出してすまないね」
「いえ、ご要件はなんでしょうか?」
「今日からアスランチームのヘルプに入ってくれないか」
「それは社長命令ですか?」
「そうだ、シルヴィア」


命令と言われては断れるはずもなく、あたしは短的にわかりました、とだけ答えた。


詳細はアスランから聞かされるとの事なので、アスランのブースに出向いた。


「やあ、シルヴィア、今日から頼むよ」
「こちらこそよろしくお願いします」


チームの人たちに頭を下げると、うわーと声があがった。


「な?」
「こらこら、おまえらがっつくな!彼女いないの丸わかりだぞ」
「だ、だってわが社のマドンナと仕事が出来るだなんて興奮しちゃうよ」
「アルマン!」
「マドンナって…」


誰?と聞こうとしたら


「わからない事があったら僕に聞いてね」
と、アルマンさんに笑顔で言われ勢いに負けて頷いた。
「シルヴィア、無視しとけ。こいつは見かけも中身もミーハーだ」
「そりゃないぜ。やっとマドンナちゃんと口がきけると思ったのに!」
「マドンナって…」
「シルヴィアに決まってんだろ」


アルマンさんはウインク一つ残して自分の仕事に戻っていった。


「騒がしいヤツですまんな。まあ、何というか弟分みたいにヤツでな」


いつも酒の肴をたかりに来るんだよな。


アルマンさんて、アスランの家に出入り自由みたい。いいなあ…。


アスランに手招きされて、ブースの一つで打ち合わせが始まった。


「この資料を立体化したいんだ」
「いつまでに?」
「10日後に社内発表会がある」
「では、チェックを兼ねて2日前には仕上がっていないとまずいですね」
「出来そうか?」
「ええ」


多分ね…と心の中でこっそりと本音を呟いた。


「また瞳が揺らいでいる」
至近距離で覗き込まれ、思わず身体を引いた。
「少し自信ないと思っているな?」
アスランの視線が否とは言わせなかった。



「ヘルプのヘルプをもう一人頼んで来る」


社長室に向かうアスランが首だけこちらに向けた。
「アリスには頼まないから安心しろ。あいつは口から生まれたヤツだから喋りだしたら止まらなくなる」


ポカンとしたあたしを残して彼は社長室に消えた。
アスランは、なぜいつもあたしの困っているところを見抜くのだろう。
彼には心理学の心得でもあるのかしら…。


自分に振り分けられた資料をパラパラと眺めながら呟いた。


「惑星ルシーダにおける…学園都市構想…?」


確かにこの星には産業と呼べるものがあまり無い。なぜならルシーダは資源が豊富、特に良質の石炭はブランド名がつくほど。


石炭を輸出して今は経済が成り立っているが、いずれはこの星独自の産業を打ち出していかないと、資源の底が見えた時に経済は下降線を辿ると言われていた。


あたしはここに永住する気はないけれど、しばらくは住む予定なので、引っ越してくる前に下調べしてあったのだ。


思案しているとアスランが戻ってきた。


「資料、見たか?」
「学園を作る計画なの?」
「そうだ。この星はこれといった産業がない。石炭は、100年は持つと言われているが採ったらおしまいだ。水耕栽培や精密機械の産業だけではちょっと心もとないだろう?このルシーダに人が来るように流れを作らなくては、と考えているんだ」
「確かに、ここは土地だけはあるものね」


惑星の土地のほとんどは、雨季の間は湿原に沈んでしまう。これは、先住民が起こした核戦争の果てに天候がおかしくなってしまったから、という説を兄に聞いていた。


兄は考古学を生業としているし、あたしも歴史の話は好きな方だ。


「ここは、雨季が長いものね…」
「百年単位で考えると、雨季はだんだんと短くなり乾季とのバランスがとれてくる見通しだが、その頃、俺たちは生きていない。どのみち、産業が薄ければ過疎化が始まる。人類の歴史を見ても、資源発掘を終えた後は過疎化が始まり老人だけが取り残されて最後はそこに人が住んでいたことさえうやむやになってしまう」
「なるほど…。構想は良いけど…」
「けど?」
「う…ん。ここは土地はあるけれど惑星の60パーセントは湿原でしょう?そんな所にどうやって学校を建てるの?」 



シルヴィア、うちの会社で最近特許を取ったものがあるだろう?


とアスランが謎をかけてきた。


つづく

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