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桜島晴人

7話 怒る男

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「ふふ、………上手に出来ましたね。」

和泉はニコニコと微笑んで、琴音の事を褒めてくれる。琴音は頬が少しだけ赤く染まった。

「先生が、一緒に作ってくれたからですよ。私一人だったら、こんなに美味しくなんて無理です。」

琴音がそう答えると、和泉はクスクスと笑う。

「いえいえ。本当に、僕なんかに教わらなくても、良いくらい手際も良かったですよ?………お料理の才能が有るのかな?観音坂さんくらいの年の子なら、全く出来ない子だって多いですから、自信を持って下さい」

「あ、ありがとうございます」

(褒められて嬉しいですけど……、少し照れちゃいますね)

顔を真っ赤にして俯くと、和泉はクスクスと笑って、それから優しく琴音の髪を撫でた。

「…………きっと、良いお嫁さんになりますね、……未来の旦那さんが羨ましいです」

「や……、先生、褒め過ぎですよぉ」

手をブンブンと顔の前で振って、赤くなる顔を誤魔化す。未だに和泉はクスクスと笑っている。完全にからかわれている。

(むぅ……。先生ってば……。えへへ、でも嬉しいです。それに先生との距離が縮まった気がします。えへへ)

今は夕食を一緒に作り、出来上がった物を味見している所だ。場所は和泉の部屋で、琴音と和泉の二人っきり。和泉の態度は、かなり柔らかい。和泉には嫌われてないのかも知れない。そう思うと嬉しい。

(……………先生とも、またエッチしたいです。……先生)

チラリと横目で微笑む和泉の顔を見て、琴音はそう思う。

(次の周回で、桜島君が駄目なら先生とエッチでも、いいかも知れませんね♡………いえ、寧ろ後で誘って見ましょうか?だって……先生は私の体に興奮しますもんね♡ふふ♡)

今回は既にナスで処女を捨てている。桜島とは駄目だったが、和泉となら、さくっとエッチが出来るかもしれない。そう思うと顔が緩む。

(…………後、2日。今回は完全に割り切りでも良いので、楽しみたいですね♡………だって不完全燃焼なんですもん)

そんな事を考えていると、和泉は出来た料理を皿に盛り付け始めた。

「さあ。観音坂さん、食べましょうか」

「あ、はい。私も運びますよ?」

「じゃあ、コップとお箸をお願いできますか?」

「わかりました。」





◇◇◇◇◇◇






「ご馳走様でした。本当に美味しく、出来てましたね、百点満点ですよ」

「ありがとうございます。先生、嬉しいです。でも、もっと色々と覚えたいので、これからも教えて下さいね?」

「ふふ、君は勉強熱心な良い生徒さんですね。わかりました。ここでは簡単な物しか教えてあげられませんが、これからは毎日、夕食は一緒に作って食べましょうか?……その内に、皆さんも呼びましょう。きっと皆喜んでくれますよ。……さて、では片付けも、してしまいましょうか?お料理は片付けまで全て含めて、ですからね」

「はーい、後片付けなら、私一人で出来ます!!先生は座っててください」

夕食を食べ終えて、二人で笑い合う。和泉と今日作ったのは肉無しのシチューとバターライスにトマトソースを掛けた簡単な物だったが、かなり美味しく出来た。琴音一人では、こうはいかない。

(ふふふ。やっぱり先生に教えて貰うのは大正解でしたね。………それに、先生、時折こっちをエッチな目で見てました♡これはいけるんじゃ無いでしょうか)

スプーンでシチューを口に運ぶ琴音の事を、和泉は少し熱っぽい瞳で見ていた。本当に、何も知らない処女の琴音なら気づかなかっただろうが、琴音は和泉のあの瞳を知っている。あれはエッチな瞳だ。

(……………私と二人っきりで、先生も期待してるんですか?……ふふふ。だって先生ってエッチな大人の男の人ですもんね♡)

洗い物が終わって、キュッと蛇口を閉めて、手を拭いて、琴音はチラリとキッチンから和泉の様子を伺う。和泉はリラックスした様子でソファーに腰掛けている。

(………いつもみたいに、さくっとノーパンで、誘っちゃいましょう♡)

そっとパンツを脱いで、ポケットにしまって、琴音は和泉の元へと戻る。胸がドキドキと高鳴っていた。

(…………桜島君とは違う、先生の優しいクンニ♡楽しみです♡……デザート代わりに先生の甘い精子も、飲ませて貰いましょうか♡はうぅ♡)




「観音坂さん、お片付けありがとうございました。………さあ、君も少し一服したらどうですか?今度は僕がお茶を淹れますよ」

和泉は琴音の姿を視界に入れて、ニコリと微笑むと立ち上がった。キッチンにお茶を淹れに行く様だ。だけど、琴音は和泉の行く手を遮る。そして、スカートを捲くりあげた。勿論ノーパンなので、おまんこが丸見えだ。

「先生、……エッチしましょう?私、下のお口でも、お腹いっぱいになりたいです♡お茶じゃなくて、先生のドロドロのお精子を飲ませてください♡」

「っ…………、か、観音坂さん?………な、何を……っ………」

ゴクリと和泉の喉が鳴る。視線はおまんこに釘付けだ。

(うふふ♡先生見てますね♡やっぱり先生もチョロいです♡)

「あ、………そんな…、っ……か、かんのんざかさん……、っ……」

琴音が内心でほくそ笑んでいると、和泉は顔を真っ赤にして、オロオロとしている。ズボン越しにも少し股間が膨らんでいるのが分かるし鼻の下が伸びている。呼吸もハァハァと荒い。これはいける。

(先生?ふふ、今回は可愛い反応ですね?………先生のおちんちん、おっきくなってます♡嬉しいです……)

琴音はクスリと笑ってから、もう一度口を開いた。

(さてと、……後は、前と同じ様に、これで、完全に落ちますよね?)

「先生♡……割り切った関係で、良いんです♡私、処女じゃ無いですから、遠慮しないで、犯してください♡せんせえのおちんぽが欲しいです♡ね?先生、無責任中出ししても良いですよ?責任を取れなんて言いません♡ちゃんと分かってますから、私と先生は大人と子供。教師と生徒だって。だから、此処でだけの関係で良いんです♡今だけ、全部忘れて、楽しみましょう?」

コテンと首を傾げて、琴音がそう告げると、鼻の下が伸びていた和泉の顔から途端に表情が消えた。

(え?)

「………っ…………観音坂さん。……早く下着を履いて、……部屋に戻りなさい」

聞いた事の無いくらい冷たい声で、和泉はそう言うと、はあと大きく、ため息を吐いた。

「………………君には、ガッカリしました。……………お料理も、もう教えてはあげられません。……早く、部屋を出て行ってください。……早くっ!!!!!二度と僕に近づかないで下さい!!!!」

怒鳴られて琴音の体はビクリと跳ねた。前に嘘を付いた時も怒られたが、これ程じゃなかった。和泉の怒声を聞くのは初めてだ。その表情も、見た事の無い程の怒りに染まっている。

(ひっ!!!!怖い……) 

思わぬ状況に、琴音がぶるぶると震えていると、和泉は琴音の腕を掴んで、部屋の外へと引きづると廊下へと突き飛ばして、バンッと扉を閉めた。

廊下に尻もちを付いたまま、琴音は唖然と閉まった扉を眺めるのだった。

(え?え?な、なんでですか?)





◇◇◇◇◇◇




(う…………。うぅ……、やっぱり先生にも、嫌われていたんでしょうか?………ショックです……)

パンツを履き直して、トボトボと廊下を歩く。かなりのショックで、顔は青褪めて、まだ微かに体が震える。いつも優しい和泉が、本気で怒るとあれ程怖いのかと思って、思わず体を自分で抱きしめる。

(……………どうして、ですか?私に興奮してたのに、どうしていきなり怒るんですか……。怖いですよ、先生)

和泉の急変した態度に琴音の思考は追いつかない。確かに、和泉は琴音に熱っぽい視線を向けていた。おまんこを見て、股間も膨らませていたし、鼻の下も伸びていた。

(どうして、急に………。わかりませんよ……。だって、先生、いつもの先生なんですよね?それなら、何が駄目だったんですか?……最初に割り切りが良いって言ったのは先生なのに………。二度と僕に近づかないでくださいって、先生言ってましたね……。はぁ……、やっぱり今回は皆さんから、嫌われているんですね?だから、先生も、女の体には興奮したけど我に返ったって事ですか?嫌いな相手とはエッチなんて無理ですもんね?……………)

はあとため息を吐いたとき、後ろから声がした。

「あれ?コトちゃん?何してるッスか?そんな所で?」

振り向くとそこには太陽が立っていた。手には缶詰を持っている。

「あ………、太陽君。太陽君こそ、どうしたんですか?探索の帰りですか?」

テンションが上がらず、暗く落ち込んだ声でそう尋ねると太陽は眉を寄せた。

「オレ?オレはハル君に食べ物を差し入れッスよ。でも、出て来てくれなかったッスけどね。…………コトちゃん?平気?顔色が悪いし、なんか、悲しそうな顔してるッス」

「あ、……そうですか、桜島君の……。太陽君が訪ねても出てくれないんですね?」

「………うん。エヴァは会えてるみたいっスけど。………コトちゃん?」

意図的に太陽の質問をスルーしたのだが、太陽はそれを察してはくれなかった。

「………別に何も有りませんよ?ほら、私、元気ですよ、元気君だけに、なんちゃって………」

「コトちゃん、そのジョーク全然面白くないっスよ………。やっぱりおかしいっス…。……悩みが有るならオレ聞くし、体調悪いなら、無理しちゃ駄目っスよ?」

(うぐぅ………)

色んな意味で琴音は涙目になる。今は優しい言葉が辛いし、面白く無いと言われたのもショックだった。ジョークには結構自信が有った。

「コトちゃん?とりあえず、オレの部屋で、話すッスよ。……皆、辛いッスもんね……。大丈夫、悩みを吐き出せば、少しは楽になるッスよ?」

そう言って、ポンポンと優しく頭を撫でられて、琴音はコクリと頷いた。





◇◇◇◇◇◇






「…………太陽君、抱っこしてください」

「ん?良いっスよ。……コトちゃん、小さいッスね……。軽いし、ちゃんとご飯食べてるッスか?」

隣り合ってベッドに座っていた太陽は、琴音のわがままを聞いて、フッと優しく笑うと膝の上に琴音を抱き上げた。

(太陽君は………優しいですね。太陽君は、悪口なんて、言わないですよね?…………あの時も、お部屋にいて、談話室には居ませんでしたし)

「コトちゃん?大丈夫、大丈夫ッスよ。きっと、皆で此処から出られるッス」

ポンポンと太陽は琴音の背中を叩く。その手付きは本当に優しくて、安心する。

「…………太陽君は、私の事をどう思ってますか?………探索にも行かないですし、皆さんの足手まといで、なんの役にも立ってないです……」

琴音がポツリとそう零すと、太陽はキョトンとしている。

「………探索に行けないのは、仕方無いっスよ。………行きたくない、したくない事を無理にする必要は無いッス。寧ろ、無理に付いてこられても迷惑っス。」

「え………?」

太陽の発言に琴音は驚く。まさか太陽がそんな発言をするとは思わなかった。

「……ちょっと言い方はキツくなるかも知れないっスけど、したくない、出来ない事を無理にして、それで、もし死んじゃったら、コトちゃんはそれを納得出来るっスか?…………コトちゃんは怖いんスよね?探索に行っても化け物と出会ったら戦え無いっスよね?……なら、結局誰かに守ってもらわないと駄目って事っス。……だけど、その誰かも、絶対にコトちゃんを守れる保証も無いッス。………自分で行くって決めたのなら、仕方無いって思えるかも知れないっスけど、……そうじゃ無いなら、守れなかった誰かも、コトちゃんも、どっちも後悔するッスよ。だから、オレは無理に行く必要は無いと思うッス。………勿論コトちゃんが本気で、自分から行きたいって言うなら、止めないし、オレは絶対に守りきって死なせないって言えるけど。……でも、コトちゃんが、皆の顔色を、伺って……嫌嫌、やるなら、逆に止めるッスよ」

「え……。太陽君、……で、でも皆さんも、嫌なのに、……探索に行ってくれてるじゃ無いですか……」

「………んー。うん、そーかも。でも、オレは本当に、嫌だって思うなら行かなくて良いと思うッス。その代わりにオレが頑張れば良いし……。オレ、ミーちゃんやサトちゃんにも、言ったっス。無理しなくて良いって、でも二人は死んでも自己責任だからって笑ってたッス。…………その顔は本当に、本心って感じで……、だからオレ、止めないけど。だけど、コトちゃんは違うッスよね?…………………、それで、悩んでたの?悲しい顔してたの?……誰かに役立たずって言われた?探索に行かない事を責められた?…………………誰に?」

スッと太陽の瞳が細くなる。そこには確かな怒りの色が浮かんでいて、琴音の体はふるふると震えた。







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