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38話 穴を埋める

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アーノルドに心配されながらもハルミは眠いからと言って部屋に戻る。何度も送ると言われたが断った。今は一人になりたい。部屋に戻れば紅葉は居るけど寝ているだろうし別にそれは良い。ベッドは広い、離れて寝れば良いだけだ。

(…………………妾。………その中の一人の写真を枕に入れているって事は絶対に好きじゃん…………。………………ベルの馬鹿)

フラフラと廊下を歩く。心にポッカリと穴が空いたみたいだ。

(……………最初からわかってたのに私の馬鹿。…………ベル、でも……なんで……早く子供作らないの?四人も居るんでしょ妾さん。………ヘタレだから?娼館も行けない童貞だもんね。………実はああ言う事苦手なの?………それならかなり無理させちゃってたのかなぁ………)

考えると気持ち悪くなってくる。あんなに求めてくれていた様に見えたのに全部義務感や責任感からかと思うと胸がぎゅうっと締め付けられる。あの幸せな触れ合いはやっぱりただの精液摂取と健康チェックだったのか?


(…………………嫌な事させちゃったのかなぁ。やだなぁ…………、ベルに………そんな思いさせたくないよ。好きな人に……嫌な思いさせたくない)

足が部屋の前で止まっていた。ハルミはハッとする。

(………いつの間にか着いてた。はあ。……いつまでもこうしてても仕方無いしさっさと寝よ)


そっと扉を開けるとムクリと紅葉が起き上がった。






▷▷▷▷▷▷





「ハルミっ!!!お帰り!!!今日は早かった…………良かった………」

紅葉は嬉しそうな声を出す。

(まだ起きてたんだ?…………はあ)

「ただいま紅葉君、………寝ててって言ったのに待ってたの?それとも起こしちゃった?ごめんね」 

そう告げて少し離れてベッドに入る。

「ハルミ?……?………?近くに居るのか………?ハルミ?何処だ?何処にいるんだ?」

紅葉は手を突き出して彷徨わせている、ハルミを探しているんだろう。その姿にハルミは少しだけクスリと笑う。

(………………目が見えないと心細いよね………ごめんね。)

ゴソゴソと近くに寄ると紅葉はぎゅうっと抱きしめて来た。

「ハルミ…………ハルミ♡」

スリスリと擦り寄ってくる紅葉。下半身が少し固い。それを擦り付けてくる。だけど今のハルミはそんな気分じゃ無い。それに昼間の事も有って何だか胸がモヤモヤする。

「紅葉君、…………寝よっか?私すごく眠たいんだ」

そっと胸を押して体を離してハルミは紅葉の手の届く範囲でゴロンと背中を向けた。紅葉は後ろから抱きついて更に固くなった下半身をスリスリと擦り付けてハルミの耳元で熱い吐息を漏らしている

「ハルミ………♡…………っ♡でも勃起した………、ハルミぃ♡飲む?………今なら沢山出せる」

紅葉は甘い声でそう言う。今はそれに少しだけイライラする

「……………ごめんね紅葉君、今日はもう飲まなくて大丈夫だよ?昨日いっぱい飲ませてくれたでしょ?………気持ちは嬉しいよ。ありがとう。……………でも眠いからもう寝るね?おやすみ」

少しだけ冷たく告げる。それでも紅葉はハァハァと熱い吐息を漏らしている。

「ならおっぱい♡おっぱい舐めたい♡…………ハルミぃ。舐めたら寝れるから………昼間したみたいに………して欲しい♡ハルミ♡キス♡キスもしたい♡」

そう言って後ろから揉み揉みと胸を揉んでくる。流石にこれには困る、寝られない。

(……………紅葉君、そんなに頑張らなくても良いのに。………でもそうだよね?不安だよね?………仕事ちゃんとしないと治してもらえないかも知れないもんね?)

嫌な考えばかりが頭に浮かぶ八つ当たりだ。

(紅葉君は何も悪くないのに…………誰も悪くない。ベルだって………、私が…………勝手に。…………あーやだな、こう言う女私が一番嫌いなのに……)

何だか情けなくなって来て涙が溢れた。

「も、紅葉くん……ごめん、今、本当に…眠いからっ………」

震える声で告げると紅葉の動きがピタリと止まり背後で息を飲むのが聞こえた。

「ハルミ?……………泣いてるのか?主様に何かされたのか?ハルミ?」

紅葉は心配そうにそう言う。ハルミはしまったなぁと思った。これじゃ構ってちゃんだ。

(…………最悪)

すうっと息を吸って声が震えないように我慢する。

「何でも無いよ。眠たいだけだよ、アーノルドさんには何もされてないから心配しないで…………………おやすみ」

そう告げて瞳を閉じる。流れる涙はシーツに擦りつけた。

「…………嘘、………ハルミ泣いてる……なんで?なんでだ?何故泣いている?」

紅葉は心配そうな声でそう言う。

(………っ………やだなぁ)

涙が止まらない、何だか疑心暗鬼で辛い。この優しさもハルミに取り入る為の嘘なのかなと思うと虚しくなる。心配する紅葉に何も答えずにハルミはぎゅうっと目を瞑り続けた。寝たと思えば紅葉だって
ハルミを心配するをする必要も無い。

(……………私性格悪っ、確かに可愛げ無いわ。アイツの言うとおりだなぁ。………誰とも上手く行かない)

元彼の言葉を思い出して腹が立つ。死ねっ!!そんな事を考えながら必死に寝たフリをして紅葉を無視していると紅葉はごそりと動いた。結構な時間無視していたから寝たと思って離れるつもりだろう。ハルミが寝たらくっつく必要だって媚びる必要だって無いもんね。そんな風に思っているとそっと髪を撫でられた。それから多分後頭部にキスを落とされている。

「…………ハルミ、………泣かないで。ハルミ、………………ちゅ、ちゅ、……ハルミ……いいこ……」

そう優しい声で言われてハルミの涙腺は決壊した。ボロボロと涙を流して紅葉の方へ体を向けると紅葉からぎゅうっと抱きしめられた、それから優しくあやすように頭を撫でて額にキスされる。

「ハルミ、…………大丈夫。…………………よしよし、自分はもう何も聞かない……。いっぱい泣いていいよ……、よしよし」

「紅葉君……紅葉君…………」

泣きながらハルミも紅葉にしがみついた。
そのまま子供みたいに泣きじゃくる。その内に緩やかに眠気が訪れる。

(紅葉君……………、貴方は本当に優しい人なんだね。………優しさを疑ってごめんね)

眠りに落ちる寸前にそう思った。







▷▷▷▷▷▷






頭を優しく撫でられる感覚に目が覚める。

「紅葉君?寝てないの?ずっと撫でてたの?」

頭を撫でて居るのは紅葉だ。もしかして一晩中撫でてたの?と思って青ざめる、無理をさせてしまった。

「…………ううん。少し寝た。………目が覚めてそしたら撫でたくなったから、ハルミの髪が……好きだから」

紅葉はそう答える。

(………………紅葉君、………ありがとう)

紅葉の言葉にほんの少しだけ胸に空いた穴が埋まった気がする。

「でも、まだ眠いでしょ?も少し寝よう?」

そう告げて紅葉の胸に顔を擦り寄せると紅葉はぎゅうっと抱きしめてくれる。

「ハルミ…………♡………キスしたい」

紅葉は甘い声でそう言う。それにハルミはクスリと笑った。

(……………疑っても仕方ないし本当に紅葉君は優しい……。なら、それに甘えさせてもらおう。……………そうだよ、たとえ恋愛感情の優しさじゃ無くても………良いじゃん。最初から一時の夢だってわかってたんだし。
…………なら紅葉君から求めてくるんなら全部応えよう………。そうしたら紅葉君も安心してくれるかな?………………ごめんね。少しだけ利用させてね)

そう心の中で謝ってそれからハルミも甘い声で返事を返す。

「紅葉君、………うん♡キスしよっか♡」

ちゅっと唇を合わせると紅葉の耳がピンっとなる、それからへにゃりと力なく垂れた。

「もっと……♡」

そう言う紅葉にクスリと笑ってハルミは何度もキスをした。胸に空いた穴を埋めるように。






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