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69話 サプライズ

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「助手……?………働きたいのかぁ?何故だ?………普通に生活するだけの金ならベルが払う。君が働く必要は無いぞぉ?」

アーノルドは不思議そうな顔だ。

「……………ずっと何もしないのもあれですし。それに今後自立……とかするかも知れないじゃ無いですか。ベルもずっと私と一緒って訳じゃ無いし……。………やっぱり迷惑ですか?」

(……………私ド素人だもんね。無理かなぁ……はあ。)

朝起きてすぐにアーノルドに早速働きたいと申し出たが余り良い反応じゃない。アーノルドは不思議そうに首をかしげている。

「………………ベルが責任を取って一生面倒を見ると言ったのだろう?………あいつはああ見えても結構稼ぎは有る。……ハルミが働く必要も無いし…………離れるなどあり得ないだろう?」

そう言うアーノルドの言葉はグサリとハルミの胸に刺さる。

(……………責任、責任って………皆して……いや、わかってるけど………でも、やっぱりずっと、おんぶに抱っこはなあ………。離れるなどあり得ないか……、確かにベルは優しいし。なんだかんだと頼めば側に居てくれそう、…………でも、そんなのやだよ)

自分の我儘でベルを縛り付けたくない。優しさにつけ込むような事をしたくない。だってベルの事が本気で好きだから。

「……………そうですよね。………すみません。………忘れてください」

しゅんとするハルミの頭をアーノルドは優しく撫でてくれる。

「一体何故そんな事を言い出したんだぁ?何か他にも理由があるんじゃないのか?」

聞かれて少しだけ戸惑う、働きたい理由は自立もそうだが一番はアーノルドが忙しそうだから何か手伝いたいのだ。

「…………その、アーノルドさん。最近ずっと大変そうだし。私でも少しは役に立てるかなって……」

言っていて恥ずかしくなる。役に立つも何もこの世界の事すらロクに知らないのに医者のアーノルドの手伝いなんてできる筈が無い。魔力も無いし。今更その事に気づいてハルミは羞恥心から頬が赤くなる。案の定アーノルドもポカンと口を開けている、呆れられたのだろう。

(うう…………恥ずかしい。私って本当に…何も出来ないんだ…………)

涙がちょちょぎれそうになる。

「…………………拙者の為に?」

アーノルドはポカンとしたままでポツリと呟く。

「………………アーノルドさんの事心配なのもあります…………けど、その、もしも私がベルの所を出る事になったら……雇って貰えてたら此処に置いてもらえるかなって……思って………。住み込み的な……………」

言葉は尻すぼみになる。

(くぅー!!言ってて、自分で自分に呆れるっ…………、結局は自分の為じゃん………はあ)

アーノルドの為だとか言って本心は自分が此処に居たいだけだ。

(グレンさんの所に行くより此処の方が居心地が良いもん。多分…………、でも、迷惑に思われてるよね。やっぱり…………)

ハルミの言葉を聞いてからアーノルドは何故か眉を寄せて難しい顔だ。

(…………困らせちゃったかな?……………………やめよ。バイトか何かするにしたってその内に街とかで自分で探そう)

「すみませんアーノルドさん。忘れてください。どうしても今働きたいって訳じゃ無いですし………、……………その内に適当に自分で仕事探しますから」

そう告げるとアーノルドはムッとした顔をした。

「……………そう簡単に仕事など見つからないぞぉ。君は異世界人だし仕事をするには保護者の許可もいる。申請手続きも面倒だ。…………街で働くのは難しいなぁ」

「え?!そうなんですか?」

ぎょっとして尋ねるとアーノルドは頷く。

「…………ベルが許可するとは思えんし…………拙者も反対だ。それに女性の君が働くとなると場所は限られてくるなぁ。倍率は高いぞぉ?………………まあ無理だな」

そう言われてハルミはしょんぼりと肩を落とした。

(とほほ。やっぱりそう簡単じゃ無いか……、そうだよね此処って異世界だし……ハロワも無いもんね……はあ)

しゅんとしてソファーに腰掛けるとアーノルドは隣に座って来る。

「………………君がどうしてもと言うのなら…………ちょっとした雑用仕事ぐらいなら任せても良いなぁ。他は、すぐには無理だ。専門知識もいるからなぁ。ゆっくりと覚えてくれれば助かるが………時間もかかる。そんなには君も無理だろう?ベルが戻ればここもすぐに出るんだろう?」

そう言われてハルミはアーノルドに飛びついた。

「えっ!!!良いんですかぁ!!!雑用でも何でもしますよ!!……………お仕事は覚えます。どうせやることも無いですから。それに…………、………………。ねえ。アーノルドさん、私がもしずっと此処に居たいって言ったらオッケーしてくれますか?…………それなら色々と覚えられますし…」

そう言うとアーノルドはまたポカンとしている。

「………………ずっと此処に居るだと?」

そう呟く様に言われる。

(………やっぱり………駄目かぁ……はあ)

「あー、その。今の無しで……あはは。雑用でも何でも任せてくださいよ!!!…………あと2ヶ月、少しはお役に立ちたいです」

誤魔化すように大きな声でニコリと笑って告げるとアーノルドは顔を顰めた。

(………………っ………)

それに胸が痛む。本当は少しだけ期待していた。アーノルドも喜んですぐに雇ってくれるんじゃないかと………。
だけどそんなに現実は甘くなかった。

(…………アーノルドさんは友達のベルに頼まれたから……。だから優しくしてくれるんだもんね?……………そんなのわかってるし。……………私の馬鹿)

「すみません。アーノルドさん、私部屋に戻ります。…………………今日はシュエルさんと精液摂取して大丈夫なんですよね?それじゃあ……失礼します。………………お仕事頑張ってください」

何だかモヤモヤとして逃げるようにその場を後にしてしまった。

(………………はあ。)




▷▷▷▷▷▷





「…………そう言えばこれどうしよう」

部屋に戻りハルミは頭を悩ませる。プレゼントの山にだ。

(うーん。…………………受け取ったけど実際、使い道が無いんだよなー)

キラキラと光る宝石も柔らかな手触りのドレスもグレンはハルミに似合うと言ってくれたが着ていく場所も無い今、タンスの肥やしになるのが目に見えている。

「うーん。……………売っちゃうか?」

そう口に出してから自分の頬をパンッと両側から叩く。

「それは駄目でしょ……流石に人として」

ドスンとベッドに腰掛けてふうっとため息を吐く。そのまま後ろにドサリと倒れてポツリと呟いた。

「……………………………会いたいなぁ、ベル」

独り言。なのに返事が返って来た。

「………一度拙者と見舞いに行くかぁ?」

ハッとして起き上がるとアーノルドがバツが悪そうな顔で佇んでいた。

「アーノルドさんっ!?いつの間にっ!!!!」

ハルミが目を白黒させているとアーノルドは目が泳いでいる。

「………………………いや。扉が少し開いていたからなぁ。…………聞こえた。拙者は耳が良いからなぁ」

そう言ってアーノルドは視線を完全にそらした。

(え………?扉開いてた?………気づかなかった……)

でも確かにアーノルドの入って来る音はしなかった。なら本当に開いていたのだろう。

うんうんと頷いてからハルミはハッとする。先程アーノルドは何を言った……?

見舞いに行くかと言った!!

「ア、ア、アーノルドさん?お見舞い行けるのっ?!」

立ち上がりアーノルドを見上げるとアーノルドは少し考えてから口を開いた。

「………………もうすぐ一月。多少は回復した筈だ。……………拙者と一緒ならベルのやつも妙な事はしないだろうしなぁ。来週にでも一度顔を見に行こう。だが…………ベルが暴れたらすぐに帰るぞぉ」

アーノルドはそう言う。その顔は余り乗り気では無さそうだが行けると言うなら行くに決まっている!!!

(ベル♡ベル♡顔が見れる♡嬉しい♡)

ベルに対して悩んでた事なんてそれだけで吹き飛んだ。

(私って………現金だなぁ)

内心でクスリと笑ってアーノルドにニコリと笑いかける。

「アーノルドさんっ!!!ベルには言うんですか?出来れば内緒にしておいてくれませんか?サプライズしたいです!!!…………ケーキ焼いて行こうかなぁ♡」

ワクワクと胸が高鳴る。

(ふふふ♡ベルって甘い物平気かな?果物は一緒に食べてたし……、そうだ!!!タルトとか作ろうかな?むふふ♡)

ハルミは手を口に当ててむふふむふふと笑う。ベルに会えるのがめちゃくちゃ嬉しい♡

「サプライズ?……別に構わないが……。っ………………、随分と……………………………嬉しそうだなぁ…………そんなにベルが好きか」


「え?あ、すみません。なんですか?今聞いてなかったです。も一度お願いします」

一人脳内で盛り上がっていてアーノルドの言葉がよく聞こえなかったので聞き返したがアーノルドは苦い顔で「何でもない」と答えた。














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