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夢占(肆)
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翌朝、周雅も広仲も何事もなかったように起き出した。それでも周雅は魘されていたのだし、広仲も一瞬、幻想を見たので、何事もなかったはずはない。支度を整えると、広仲は訊いてみた。
「昨夜は夢はご覧になりましたよね?南に逃げた王・準を、王となった満が討とうとしたので、太子・解が倭に行ったと、御身は仰有っていました」
「えっ?」
何故知っているのかという顔をした後、はっとして周雅は赤面した。
「まさか、寝言を……?」
「ひどく魘されてもおられましたよ」
寝言を言ったのかと恥じ入る周雅に、広仲はかえって深刻そうな表情をして見せた。当然、寝言を笑う気持ちは微塵もない。
周雅が普段は寝言など言わぬことも、十分理解している。言わせたのは鳳勢だ。
周雅は兄弟子の気持ちを理解して、面を白皙に戻し、頷いた。
「幻の続きを見たのです。子解が筆大夫の助言を受けて、落城した都には行かず、そのまま船を南下させたところからを見ました。ですが、起きていた時に見た幻は、時の経過がゆるやかだったのに、夢の中は疾風のように早いのです。あまりに目まぐるしく景色が変わるので、目が回りました」
「それで魘されていたのですか?恐ろしい夢だったわけではなく?」
「はい。それに、子解の乗った船がひどく荒れて。高波に呑まれて、ぐるぐると致しました」
「そは大変な。寝ながら船酔いとは」
それはさぞかし寝苦しかっただろうと、広仲は同情した。だから、あんなに魘されていたのだ。
「夢の内容は、子余の国の最後の様子で間違いないようですね」
史書で学んで、周雅も広仲も知っているが、周雅の夢の内容はどうやら殷の後継国、箕子──子余の半島北部に存在した国で間違いないようだ。
その国の最後の王は準で、燕からの亡命者・満によって王位を失うのだ。それは史書にも見える。
準を追い出した満は、都を王倹城として即位する。だが、数代の後に漢に攻め入られて滅びる。以降、その地は楽浪郡、真番郡、臨屯郡、玄菟郡として漢の版図に加えられるのだ。
さらにその後は、漢と戦った朱蒙なる人によって、高句麗が建国されたという。
一方、満に追われた準は半島の南に逃げたという説がある。
「準王はどうしましたか?」
夢の中では準はどうしたのか。広仲が訊くと、周雅は首を横に振った。
「相変わらず子解の目となって、船に乗っていたので、王を直接見ていないのです。ただ、子解が左将軍を遣わして、それで得た情報では、王は後の百済か加羅の地周辺に来て、その地を制圧し、土民どもを従えて己の兵としたら、北へと攻め上り、王倹城を奪い返す計画であると。しかし、なかなかうまく行かぬ様子で、土民どもを従えるのに苦戦しているとかで、土民どもとの戦いが幾度も繰り返されているとのことでした。司母については、全く情報がなく──」
「ほう。どうやら王妃が総大将らしい国なのに、王自身が戦っているというわけですか」
司母辛の身に異変があったのかもしれない。
「で、太子は上陸せず素通りして、倭へ向かったと?」
「そうです。王とは合流しませんでした。ただ、子解には率いてきた軍勢があります。何艘もの船に乗せて。それらのうち難破しなかった船の多くは上陸させ、王と合流させたようです。全部が無事に上陸できたかは不明ですが、土民と戦う王には、頼もしい援軍だったでしょう」
「では、その軍を得て、王は土民を制圧してしまったかもしれませんね。王・準には韓の国(弁韓)を築いたという説もありますから」
「ええ、私は子解の目として、筆大夫と共に四艘の大船で倭へと向かいましたので、王のその後はわかりませんが──。ただ、筆大夫の見立てでは、子解の軍が加わったことで、王は土民を制圧できるだろうが、北上して王倹城を奪い返すのは難しいだろうと。それには、やはり、倭の援軍が必要だと」
「なるほど。それで、若君。太子は無事に倭に、つまり我等のこの日本に来ることはできたのですか?」
最も気になるのはそこである。
周雅は頷いた。
「随分流された末に漂着できました。私が考えていた姿とはまるで様子が違うので、本当に日本なのかわかりませんが──」
周雅の見た光景はかなり異様だった。原始的な村もあれば、かなり先進的な都市もあり、たくさんの国に分かれているようであった。
「王のいる国といない国がありまして。王のいる国は少なく、また、他国もその王に属していたりいなかったり──」
強国にのみ王がいて、周辺の弱小な国はその強国に属しているのだろう。
「ほう、王が何人もいるとは聞き捨てなりませんね。帝以外にも王がいたというわけですか」
「はあ……どうも幾人か王がいたようで、その中のお一人が帝のようです。おそらく、今の蝦夷のような者どもの国が、当時は幾つもあったのでしょう。本朝はそれらを討伐して、日本六十余州を統一したということだと思います」
「古は国土が今よりも狭かったということですか」
周雅は困ったように俯いた。
「はあ、そうなりましょうか。それとも、やはり子解がたどり着いたのは日本ではなかったのかもしれません。行き着いた先が異様な人々ばかりで。全身黥していましたし、青銅や鉄器の戈があって、やたら知恵の回る人々だったり……」
子解の漂着した土地は唐土に似て非なる、おかしな土地だったようだ。
「子解が会った王は、周人であると申しておりました。百越人、呉よりの渡来人もいたり、秦人もいるとか。近年の渡来人は秦人と呼ばれているそうです。もともとの土人もいるようで、それぞれに習慣の差異がございました」
広仲にはおよそ想像もつかないものである。
「周人というだけあって、姫姓の王でありましたが、子解が援軍を求めたところ、越の人々と秦の人々が虎視眈々と狙っているので、東方の大王を頼れと」
国と国との間に小競り合いが頻発しているのか、簡易な城のような造りの都市になっていた。兵を常に備えておかなければならないので、渡海までして援軍になど行けないというのである。
「王は子解の船に目を付けたようです。子解の一行に国を一つ割いて与えるから、このままここに住めと。船を製造してくれれば、他には何も要求しないからと、誘ってきました。近年、秦人が頻繁に来ているし、遠慮するな、新たな秦人として迎えると申すのです。そこで夢は終わってしまって──」
子解は援軍を断られて、項垂れて。周雅は目覚めた。
「では、熱田は出てこなかった?」
「熱田ですって?何故?」
「いえ」
広仲は答えなかった。自分が一瞬見た幻が、何を表しているのかわからなかった。もう少し話が見えてきたら、話そうと思う。今、混乱を極める周雅に、不確かなことを話して、余計に混乱させてはならない。
「とにかく、先ずは昨日の続きをしてしまいましょう」
広仲はてきぱきと塗籠の中で作業を始めた。目録を作ることが、今の二人がしなければならないことである。
目録は一日かけて完成させることができた。
二人はもう一晩泊まることにする。
目録の完成を祝って、軽く盃を交わし、寝るまでの間に、昨夜の続き──周雅の夢の曲を楽譜にする作業に取りかかった。
二拍分書き終えた時、周雅は疲れて伸びをした。
「若君、気分転換に一曲通して弾いてみてはいかがです?」
周雅はまだ夢の曲を、広仲の前で全て通して弾いたことがなかった。
周雅は相変わらず鳳勢を恐れて手にしない。鳳勢は目の前の琴卓の上に、じっと鎮座しているだけだ。
周雅はちらとそれを見た後、自身の膝の上の琴を見下ろした。
「鳳勢は絃を張り替えたばかりですし、それでどうぞ」
鳳勢で弾かずに、膝の上の琴を使ったらよいだろうと、広仲は笑った。
周雅は頷き、夢の曲を弾き始めたのだが、弾かれもせず鎮座している鳳勢に、たちまち異変が生じた。
鳳勢の槽に窓が開いて、そこから大海と、そこに浮かぶ蓬莱が見えてきたのだ。
周雅はその窓に吸い込まれて行く。
「若君!」
脳裏で広仲に呼ばれたが、そのままそこへ入り込み、彼はその世界の人となった。相変わらず手足の自由もきかない。また子解の目となったのだ。
「昨夜は夢はご覧になりましたよね?南に逃げた王・準を、王となった満が討とうとしたので、太子・解が倭に行ったと、御身は仰有っていました」
「えっ?」
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周雅は兄弟子の気持ちを理解して、面を白皙に戻し、頷いた。
「幻の続きを見たのです。子解が筆大夫の助言を受けて、落城した都には行かず、そのまま船を南下させたところからを見ました。ですが、起きていた時に見た幻は、時の経過がゆるやかだったのに、夢の中は疾風のように早いのです。あまりに目まぐるしく景色が変わるので、目が回りました」
「それで魘されていたのですか?恐ろしい夢だったわけではなく?」
「はい。それに、子解の乗った船がひどく荒れて。高波に呑まれて、ぐるぐると致しました」
「そは大変な。寝ながら船酔いとは」
それはさぞかし寝苦しかっただろうと、広仲は同情した。だから、あんなに魘されていたのだ。
「夢の内容は、子余の国の最後の様子で間違いないようですね」
史書で学んで、周雅も広仲も知っているが、周雅の夢の内容はどうやら殷の後継国、箕子──子余の半島北部に存在した国で間違いないようだ。
その国の最後の王は準で、燕からの亡命者・満によって王位を失うのだ。それは史書にも見える。
準を追い出した満は、都を王倹城として即位する。だが、数代の後に漢に攻め入られて滅びる。以降、その地は楽浪郡、真番郡、臨屯郡、玄菟郡として漢の版図に加えられるのだ。
さらにその後は、漢と戦った朱蒙なる人によって、高句麗が建国されたという。
一方、満に追われた準は半島の南に逃げたという説がある。
「準王はどうしましたか?」
夢の中では準はどうしたのか。広仲が訊くと、周雅は首を横に振った。
「相変わらず子解の目となって、船に乗っていたので、王を直接見ていないのです。ただ、子解が左将軍を遣わして、それで得た情報では、王は後の百済か加羅の地周辺に来て、その地を制圧し、土民どもを従えて己の兵としたら、北へと攻め上り、王倹城を奪い返す計画であると。しかし、なかなかうまく行かぬ様子で、土民どもを従えるのに苦戦しているとかで、土民どもとの戦いが幾度も繰り返されているとのことでした。司母については、全く情報がなく──」
「ほう。どうやら王妃が総大将らしい国なのに、王自身が戦っているというわけですか」
司母辛の身に異変があったのかもしれない。
「で、太子は上陸せず素通りして、倭へ向かったと?」
「そうです。王とは合流しませんでした。ただ、子解には率いてきた軍勢があります。何艘もの船に乗せて。それらのうち難破しなかった船の多くは上陸させ、王と合流させたようです。全部が無事に上陸できたかは不明ですが、土民と戦う王には、頼もしい援軍だったでしょう」
「では、その軍を得て、王は土民を制圧してしまったかもしれませんね。王・準には韓の国(弁韓)を築いたという説もありますから」
「ええ、私は子解の目として、筆大夫と共に四艘の大船で倭へと向かいましたので、王のその後はわかりませんが──。ただ、筆大夫の見立てでは、子解の軍が加わったことで、王は土民を制圧できるだろうが、北上して王倹城を奪い返すのは難しいだろうと。それには、やはり、倭の援軍が必要だと」
「なるほど。それで、若君。太子は無事に倭に、つまり我等のこの日本に来ることはできたのですか?」
最も気になるのはそこである。
周雅は頷いた。
「随分流された末に漂着できました。私が考えていた姿とはまるで様子が違うので、本当に日本なのかわかりませんが──」
周雅の見た光景はかなり異様だった。原始的な村もあれば、かなり先進的な都市もあり、たくさんの国に分かれているようであった。
「王のいる国といない国がありまして。王のいる国は少なく、また、他国もその王に属していたりいなかったり──」
強国にのみ王がいて、周辺の弱小な国はその強国に属しているのだろう。
「ほう、王が何人もいるとは聞き捨てなりませんね。帝以外にも王がいたというわけですか」
「はあ……どうも幾人か王がいたようで、その中のお一人が帝のようです。おそらく、今の蝦夷のような者どもの国が、当時は幾つもあったのでしょう。本朝はそれらを討伐して、日本六十余州を統一したということだと思います」
「古は国土が今よりも狭かったということですか」
周雅は困ったように俯いた。
「はあ、そうなりましょうか。それとも、やはり子解がたどり着いたのは日本ではなかったのかもしれません。行き着いた先が異様な人々ばかりで。全身黥していましたし、青銅や鉄器の戈があって、やたら知恵の回る人々だったり……」
子解の漂着した土地は唐土に似て非なる、おかしな土地だったようだ。
「子解が会った王は、周人であると申しておりました。百越人、呉よりの渡来人もいたり、秦人もいるとか。近年の渡来人は秦人と呼ばれているそうです。もともとの土人もいるようで、それぞれに習慣の差異がございました」
広仲にはおよそ想像もつかないものである。
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国と国との間に小競り合いが頻発しているのか、簡易な城のような造りの都市になっていた。兵を常に備えておかなければならないので、渡海までして援軍になど行けないというのである。
「王は子解の船に目を付けたようです。子解の一行に国を一つ割いて与えるから、このままここに住めと。船を製造してくれれば、他には何も要求しないからと、誘ってきました。近年、秦人が頻繁に来ているし、遠慮するな、新たな秦人として迎えると申すのです。そこで夢は終わってしまって──」
子解は援軍を断られて、項垂れて。周雅は目覚めた。
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「いえ」
広仲は答えなかった。自分が一瞬見た幻が、何を表しているのかわからなかった。もう少し話が見えてきたら、話そうと思う。今、混乱を極める周雅に、不確かなことを話して、余計に混乱させてはならない。
「とにかく、先ずは昨日の続きをしてしまいましょう」
広仲はてきぱきと塗籠の中で作業を始めた。目録を作ることが、今の二人がしなければならないことである。
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目録の完成を祝って、軽く盃を交わし、寝るまでの間に、昨夜の続き──周雅の夢の曲を楽譜にする作業に取りかかった。
二拍分書き終えた時、周雅は疲れて伸びをした。
「若君、気分転換に一曲通して弾いてみてはいかがです?」
周雅はまだ夢の曲を、広仲の前で全て通して弾いたことがなかった。
周雅は相変わらず鳳勢を恐れて手にしない。鳳勢は目の前の琴卓の上に、じっと鎮座しているだけだ。
周雅はちらとそれを見た後、自身の膝の上の琴を見下ろした。
「鳳勢は絃を張り替えたばかりですし、それでどうぞ」
鳳勢で弾かずに、膝の上の琴を使ったらよいだろうと、広仲は笑った。
周雅は頷き、夢の曲を弾き始めたのだが、弾かれもせず鎮座している鳳勢に、たちまち異変が生じた。
鳳勢の槽に窓が開いて、そこから大海と、そこに浮かぶ蓬莱が見えてきたのだ。
周雅はその窓に吸い込まれて行く。
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