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13-1 春のデート
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4月6日、土曜日。午前1時。
我が家のキッチンにて、黒崎の夜食を作り終えた。新入社員や人事異動者の歓迎会で遅くなるからだ。今月は会食も多い。こうして遅くなる日が多そうだ。
今夜は営業企画部全体のものだ。部長職は二次会には出ないのが、セオリーらしい。自分達の悪口が言えないからだと笑っていた。その後、役員や部長職のメンバーと飲んでくると言っていた。
「黒崎さんってば。”悪口を言われるとやりがいがある”って言っていたなあ……。タフな人だよ。トラップを仕掛けられるのもOK。うーーん。俺には難しい」
黒崎は本気で口にしていると思う。人間関係のことは滅多に話さない人が笑っていた。それも楽しそうに。上機嫌だった。
早瀬さん経由で伝え聞くと、黒崎は地獄耳のようだ。それをネタにイジって指示を出すという、半分脅しのようなことをやっているらしい。
「性格が出ているなあ。早瀬さんの方が怖いって?ほんとかな?優しいのに……」
今夜は豚しゃぶサラダにした。湯豆腐、漬け物、おむすび。それぞれにラップを掛けた後、リビングのソファーに寝転がった。
ギシ……。
ソファーが沈み込んだ。しばらくして、頭を撫でられている気がした。黒崎が帰ってきたのかな?ぼんやりしながら目を開くと、自分のいる場所だけ照明が落とされていた。
いつの間にか寝ていたようだ。加湿器をつけていないことを思い出して、起き上がろうとした。すると、何かに押しとどめられた。そして、耳元で低い声が聞こえてきた。温かい息がくすぐったい。
「……このまま寝ておけ。後で運んでやる」
「おかえり。何時になった?」
「1時半だ。先に着替えてくる。加湿器をつけてある」
「ありがとう」
どうりで喉の痛みがないはずだ。歌う機会が増えた分、痛むことがある。使う頻度が多いからだ。コツコツと労わるのが大切だ。長く歌っていきたい。自分よりも黒崎の方が気遣ってくれる。こういうところも大好きだ。
毛布を掛けてもらっていた。温かくなっているから、もっと前からだろう。ずっとそばにいてくれたのかな?そう思うと顔がニヤけてきた。
(いい感じだなあ……)
寝たふりがいいのか?それとも夜食につき合うか?お茶だけを用意して、ベッドに移動しよう。そう思って、キッチンへ行った。
カタカタ……。
茶瓶にポットのお湯を注ぎ入れようとした。しかし、お湯が出てこない。ここに住み始めた時に買い直したのに。蓋を開けたりボタンを押したりしても、うんともすんとも言わない。
「あれー?故障かな?今朝は普通だったけど」
「どうしたんだ?ヤケドをするぞ」
「ん?ん……」
いつの間にか黒崎が立っていた。耳元で話しかけられて、息づかいを感じて体が震えた。さらに腕が巻き付いてきた。寒いならベッドに運ぶぞと囁いてきた。その声が掠れている。
「黒崎さん。エロいことするなよ」
「していない。調子が悪いのか?」
「うん。ボタンを押しても反応しないんだ」
「見てやろう。……ああ。分かったぞ」
「おおー、すごいね。直るの?」
「簡単なことだ。コンセントを差し込んでいない」
「ヒョーー……」
笑っている黒崎とは対照的に、俺は軽くヘコんだ。顔まで熱くなり、カウンターのすみっこに隠れた。
「夏樹。そう落ち込むな」
「簡単には立ち直れないよ~」
「可愛い話だ。失敗のレベルでもない」
「笑ってるじゃん……」
「ああ。帰ってきた実感がする」
すると、脇の下に両手が差し込まれて、グイっと引き上げられた。向かい合わせになった後、軽くキスをされた。お酒くさいが、自分の方からもキスを返した。
我が家のキッチンにて、黒崎の夜食を作り終えた。新入社員や人事異動者の歓迎会で遅くなるからだ。今月は会食も多い。こうして遅くなる日が多そうだ。
今夜は営業企画部全体のものだ。部長職は二次会には出ないのが、セオリーらしい。自分達の悪口が言えないからだと笑っていた。その後、役員や部長職のメンバーと飲んでくると言っていた。
「黒崎さんってば。”悪口を言われるとやりがいがある”って言っていたなあ……。タフな人だよ。トラップを仕掛けられるのもOK。うーーん。俺には難しい」
黒崎は本気で口にしていると思う。人間関係のことは滅多に話さない人が笑っていた。それも楽しそうに。上機嫌だった。
早瀬さん経由で伝え聞くと、黒崎は地獄耳のようだ。それをネタにイジって指示を出すという、半分脅しのようなことをやっているらしい。
「性格が出ているなあ。早瀬さんの方が怖いって?ほんとかな?優しいのに……」
今夜は豚しゃぶサラダにした。湯豆腐、漬け物、おむすび。それぞれにラップを掛けた後、リビングのソファーに寝転がった。
ギシ……。
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いつの間にか寝ていたようだ。加湿器をつけていないことを思い出して、起き上がろうとした。すると、何かに押しとどめられた。そして、耳元で低い声が聞こえてきた。温かい息がくすぐったい。
「……このまま寝ておけ。後で運んでやる」
「おかえり。何時になった?」
「1時半だ。先に着替えてくる。加湿器をつけてある」
「ありがとう」
どうりで喉の痛みがないはずだ。歌う機会が増えた分、痛むことがある。使う頻度が多いからだ。コツコツと労わるのが大切だ。長く歌っていきたい。自分よりも黒崎の方が気遣ってくれる。こういうところも大好きだ。
毛布を掛けてもらっていた。温かくなっているから、もっと前からだろう。ずっとそばにいてくれたのかな?そう思うと顔がニヤけてきた。
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カタカタ……。
茶瓶にポットのお湯を注ぎ入れようとした。しかし、お湯が出てこない。ここに住み始めた時に買い直したのに。蓋を開けたりボタンを押したりしても、うんともすんとも言わない。
「あれー?故障かな?今朝は普通だったけど」
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「ん?ん……」
いつの間にか黒崎が立っていた。耳元で話しかけられて、息づかいを感じて体が震えた。さらに腕が巻き付いてきた。寒いならベッドに運ぶぞと囁いてきた。その声が掠れている。
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「見てやろう。……ああ。分かったぞ」
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