青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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3-1 風邪を引いた夏樹

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 11月12日。月曜日。午前4時。

 すっかり朝晩が涼しくなった。寒いと感じる日もある。しかし、今は暑くてたまらない。俺は今ベッドで寝ていて、黒崎に抱きしめられている。彼は今寝ている。昨日はコンサートのリハーサルで朝から夜まで出かけていたから、ろくに話していないまま、ベッドに入った。そういう日は、たいていこうなる。

「暑いなあ……」

 喉も渇いてきた。サイドテーブルにタンブラーを置いてある。それには白湯が入っている。こまめに水分補給をするためだ。加湿器をつけているのに、部屋の中が乾燥している気がする。少しだけ喉がイガイガする気もする。

「まずいなあ……」

 まずは起き上がって白湯を飲みたい。黒崎の腕をほどき、腕の中から抜け出た。起きるかも知れない。なるべく起こさないようにタンブラーを手に取った。そして、白湯を飲んだ。やっぱり喉が痛んでいる。こういう時は、一日ゆっくりする方がいい。今日は大学があるが、休んだ方がいいだろうか。コンサートの5日前に定期試験がある。ノートは悠人に頼むことにした。

 彼はまだ寝ている時間だ。夜が明けてからラインをすることにした。マネージャーの長谷部さんにも。体調の変化は必ず伝えるようにしている。そして、ステージドクターの聖河さんにも。

(あ、今日って、心臓の検診の日だ。だから、黒崎さん、ゆっくり寝ているんだなあ……)

 俺が起きたら、黒崎は起き上がる。しかし、ぐっすり寝ている。黒崎も仕事の休みを取って、検診に付き添ってくれるからだ。今朝はいつもよりゆっくり起きていい。

 スケジュールがごちゃごちゃになっている。悠人にはもうノートを頼んであったと思うが、念のため、ラインをしよう。喉が痛いことを正直に伝える。久弥にもだ。伝える人がたくさんいる。後は長谷部さんが事務所に伝えてくれて、ステージスタッフにも伝わる。なんせ久弥の引退コンサートだ。絶対に成功させたい。みんな真剣だ。

(今日一日で直るかな?)

 俺のかかりつけは、近所の御園クリニックと、心臓の検診を受けに行っている聖加世病院だ。検診の時に喉も見てもらおうと思った。黒崎のことだ。俺を外に出したくなくて、御園クリニックを受診し、検診の日を一週間ずらそうと言うかも知れない。予約をずらすのは可能だ。

 しかし、それだと、定期試験の直前になりそうだ。俺としてはいつも通りに受けておきたい。安心するからだ。長谷部さんならどういうだろうか。そして、聖河さんなら、どう判断するだろうか。音楽の仕事をするまでは、なんでも黒崎が決めていたし、俺も言うことを聞いてきた。今は少し違う。まずは長谷部さんと話した後、黒崎に報告するパターンも出てきた。

 いつもより一時間早く目が覚めて良かった。白湯を飲んで良かった。喉の痛みに早めに気づけたからだ。洗面所に言って、喉を見てみようと思った。

(ゆっくり……)

 黒崎のことを起こさないようにベッドから下りた。そして、寝室から出て、洗面所に向かった。
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