青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 黒崎の車に戻ってきたところだ。後部座席の一番後ろに、さっき買ってきたお菓子の袋を置いて入れた。今話題になっているのは、黒崎が見た、俺の店内での様子だ。女性達に囲まれて抱きつかれて、しかも、俺もハグを返しているから、何もトラブルがなくて良かったと思ったそうだ。

「なんだよ。黒崎さんまで。俺は一人でも平気だよ~。だから、近所にあるスーパーぐらい、自分一人で行けるからさ~、行かせてよ……。どうしたの?黒崎さん。苦い顔をしているよ?」
「気づかれたからだ。街の中は一人で行動するのはやめておけ。ん?人気が出てきた証だと?そうだろうな……。しかし、トラブルは起きることだ。さっきの人達は良い人だったが、みんながそうとは限らない。いちゃもんを付けてくる奴が必ず出てくる……。それに、夏樹、お前は大学に行く途中の坂道の駅前で転んだだろうが。だいたいな、よそ見をするからに決まっている。この間も宮岡さんに助けられただろうが……。足を悪くしていたというのに、お前を見て、放っておけなかったんだろう。泣くからだ……」
「あの時は看板に気を取られていたんだよ!新規オープンのお店のさ~。スイーツのお店みたいだったから、気になるんだよ~。ずっと長く空き店舗になっていた場所じゃん。埋まって、しっくりくる感じだよ。なんだかホッとする感じがするもん。商店街の賑わいだよ。そうじゃないと、寂しいじゃん。美味しかったらいいね。俺の勘だと、あっさりめのスイーツだと思うんだ。あんたも食べてくれそうだよ……」
「俺は甘い物は一切食わないぞ。また泣いているのか?俺が言いすぎたのか?」
「泣いていないよ。みんなの前だから恥ずかしくってさ……。それに、テレビでは俺、化粧が派手だもん……。悠人と久弥もだけど……。気づかれないと思うんだ。学食に来てくれる人も居るけどさ……。なんだよ、ノアと大成も、この人を止めてよ~。笑うなってば~っ」
「あはははは!」
「ははははは!」

 すぐ後ろの席にいるノアと大成がビデオカメラで外を映しながら、俺達のことを見て、いいなあと言ってくれた。だから機嫌を直した。

「機嫌が直ったのか?ああ、よかった。お前が機嫌を損ねたら、こっちは何も言えなくなる」
「あんたの言い方が原因だよ~っ。大成さ~、こんな人と付き合っちゃだめだよ?あ、女の子が好きなんだっけ……。ごめんなさい。ノア~、どうしたんだよ~。沈んだ顔をしてさ~。大成のことが好きなんだっけ?」
「おい。そういう質問をするな。考えろ……」
「夏樹、黒崎さん。俺達は平気です!」
「そうだよ。大成は同級生の和人君が好きだって告白を聞いたところなんだ。俺も大成に、自分の気持ちを伝えたところだよ。黒崎さん達がお店に入っている間に……」
「ああ……」
「大成、返事は?」

 まさか告白したとは思わなかったからびっくりしつつ、冷静を保ちながら、大成に返事を聞いてみた。答えは、俺が思っている返事ではなかった。YESでもNOでもなく、今のままがいいというものだった。

 てっきり、俺としては、大成には好きな人がいるから断られると思っていたのに。しかし、これはNOという答えだろうと思いを読み取れたから、黒崎も沈んだ顔になり、車の中もそうなった。
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