青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺達一行は、ミカさんが見たという現場の道路の歩道にたどり着いた。ネットの情報によると、位置がズレているようだ。ネットだと、もう少し先になる。歩いて3分だ。悠人が持っている地図アプリにそう出ていた。

 すると、ユーリーが早瀬さんを連れて行き始めた。兄弟よ!と言っている。だから、悠人が俺の隣を歩くようにした。早瀬さんは逃げたいわけでもなく、されるがままといった雰囲気だ。この人に何を言っても仕方がないのだろうという対応だ。そこで、後ろを歩くお義父さんが声をかけた。

「早瀬君!無理はしなくていいから、戻っておいで……」
「ああ、いいですよ。仕方がないでしょう。こんなに力強く、俺の腕を引っ張っているんだから……。バーテルスさん。そんなに引っ張らないでくれ……」
「おお!裕理!僕のことを愛称で呼んでくれるんじゃなかったのか!?僕達は兄弟だ。友達でもある。一緒に、ネットの情報通りの場所に行こうじゃないか!君達!僕と裕理はこの先のビニールハウスのそばで待機する。親交を深めるよ……。ん?どうしたんだ?夏樹君……」
「今まで夏樹って呼んでいたくせに。あんたも切り替えの早い人だねえ。何かあるんだろ?……呼び止めたのは、これだよ。虫除けスプレーだよ。今の季節でも虫がいるんだ。しておかないと、いっぱい寄って来るかもしれないよ。ほら、待ってよ。2人とも……」

 俺は持って来たトートバックの中から虫除けスプレーを取り出して、早瀬さんの首元に吹きかけた。ユーリーは僕は平気だと言ったけれど、強引にスプレーした。そして、お互いにむせかえった。そして、笑った。今日は粉っぽい、さっぱりした使い心地の物を選んできた。液体の方がよく効く気がするが、今の時間だと、冷たいだろうと思ってのことだ。

「これでよし。さあ、裕理、行くぞ。悠人君!少しの間、裕理を連れて行くよ。いいかな?」
「あ、はい!僕はOKです!」

 悠人の承諾も得たことだしと、ユーリーが楽しそうにして、向こうの方へ早瀬さんを連れて行ってしまった。

 後に残った俺達は所在なくて、なんだか寂しくなった。ヒューッという風も吹いてきた。お義父さんは眠くないだろうか。黒崎製菓を退職後、早く寝るようになっている。それを心配すると、なんでもないことだという答えが返ってきた。

 聖河さんがお父さんと腕を組んでいる。杖をついた身体を支えるためだ。こうした方が足に負担がかかりづらいということだ。そして、お義父さんが言った。くだらない遊びだよねえと笑いながら。ユーリーが向こうに行ったから、本音が出たんだと言い出して、みんなから笑いが起きた。黒崎も笑っている。横を向いてだ。本当は一番楽しんでいるくせに。そう言いたそうだったから、俺もおかしくて笑った。

「俺達はここにいようよ。ね、お義父さん。何か見えるかも知れないよ?」
「庭で見ている。もう見慣れた。ははは。つい、言ってしまった。ああ、怖い。晴海、圭一、そんな顔をするな……」
「お父さん。いい加減にしろ。連れて帰るぞ」
「夏樹ちゃん。助けてくれ。晴海に叱られたよ……。圭一にまで……」
「晴海兄さん、黒崎さん、叱っちゃいけないよ!今日はユーリーのおもてなしなんだから……」

 庭でオバケを見たというのは冗談だろう。その証拠に、晴海さんが苦笑いをしている。聖河さんもだ。一貴さんはどこかに電話をかけている。この時間に誰だろうと思っていたら、心霊スポットに来たんだと言っている。そこで、思い浮かんだ。電話の相手は怜さんではないかと。

「じゃあ、動画を明日、送らせて貰うよ」
「……」

 一貴さんの電話が終わり、怜さんかと聞くと、そうだよと言っていた。ノアに頼んで、今日の映像を受け取ることになっているそうだ。冷静なのかと思えば、そうでもなくて、なんだか顔が引きつっている。やっぱりさっき何か見たということなのか。しかし、一貴さんはここでは言いたくないと首を横に振っていたから、それ以上は聞かないようにした。
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