青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 すると、一貴さんの顔を見た二葉が、ここに何かいるかも知れないと言いだして、お義父さんの横に立った。そして、一貴さんのことも引っ張ってきて、お義父さんと聖河さんのそばに立った。自然とそうしている。家の中でも、隣にいることが増えてきたから、親子として存在していくのだという思いが決心という形で表れているのだろうと思った。

(お父さんと呼ぶのは、倉口のお父さんだけ……。私達のことを育ててくれたお父さんなの……)

 数年前に、俺と黒崎とお義父さんに、二葉がそう言った。だから、お義父さんのことは”おじいちゃん”と呼んでいる。黒崎からそう勧められたからだ。それ以来、会社では社長と呼び、家の中ではおじいちゃんだ。しかし、今日は、二葉の口から最初に、お父さんという言葉が出てきた。そして、慌てて言い直していた。おじいちゃんと。それを思い出して、俺と黒崎が目を合わせた。同じ事を考えていたという事だろうか。

「あのさーー。今日の二葉さーー、お義父さんのこと、お父さんって、最初言ったよね?とうとうこの日が来たのかと思って、感激したんだけど、倉口のお父さんのことを考えると、喜んじゃいけないよね……」
「ああ。俺も聞いた。親父は聞かなかったんじゃなかったか。嬉しいだろうな。お父さんが2人いても、いいだろう。二葉にはそう呼ばせたいし、黒崎姓を名乗らせたい気持ちを持っている。紙一枚でそうできると聞いている。……何枚でも紙を出せば良い。正直になっただろう?沙耶に聞いてある」
「うん。あんたの気持ちは伝わってくるよ。もうここに住み続けてくれるだろ?二葉は……」
「ああ。結婚までな。どこかに嫁がせるつもりでいる」
「あんたね……。あの子は男の子だって言っているんだ。あ、そうか。パートナーが男性の場合もあるっていうよね。あんたが接待の二次会で行ったお店のママから聞いたんだっけ……」
「ああ、そうだった。相手は同性かも知れない。女性同士だ。夏樹。俺は二葉の心の中を見ることは出来ないが、女性だと思っている。そうとしか思えない。無理に男になろうとしている気がしている……。お前もそう思っているんじゃないか?」
「黒崎さん。俺も同じ考えだよ……」
「そうか。動物の人形と家のセットを、一貴が二葉にプレゼントしたことがあっただろう。今でも遊んでいるぞ。俺は見た」
「それは男の子でもそうじゃないのーー?面白いからって……」
「男の子の感覚とは違うと思った。彼女は女性だ。本人の納得がいくまで男の子扱いをしたいが……、女性だと思って優しくしそうだ。いいか?」
「ぷっ。いいよ。二葉には元から優しいじゃん。あんたさーー、カズ兄さんには結構言うくせに。朝陽になんか、もっと酷い言葉をかけているんだって、自覚ある?……自覚がないのか~。そうだろうねえ。やっと告白してくれたね~。俺も賛成するよ。でも、俺は二葉のことは男の子だって思うことにするよ。アンもそうするよね?ワン。そうだよねえ……」

 黒崎の腕に抱っこされた彼女の頭を撫でて、頬ずりした。そろそろお風呂に入れないといけないと思った。毛がふわふわではなく、チクチクしてきている。匂いも出てきた。庭を走り回っているから、毎日、外から帰って来ると足を洗っているから可哀想で、一週間もお風呂に入れていない。

 アンはシャンプーが好きではないようで、いつも苦戦している。そういう時に、一貴さんを呼びたい気分になる。お風呂場でアンのことを洗っているのを彼が見ているだけで、落ち着いて洗わせてくれるからだ。次は頼んでみようと思う。アンのシャンプーを見守ってくれと。もしかすると、寒いのだろうか。お風呂場は暖かいと思うのに。アンのために、黒崎が設計士さんに頼んで、温かくなるようにしてもらっていたことを覚えている。
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