青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ノアと真羽が俺達から離れて、サッと動いて消えていった人影を追いかけ始めた。さっき俺が見た女の人だろうか。俺はしゃがみ込んだままで、黒崎から抱きしめられた。そして、少しだけ身体を離した後、肩を軽く揺すられた。そこで、いつもの彼だと気がつき、ここが道路だと思い出した。

 俺達は今、歩道にいる。辺りが真っ暗ではなくて、店からの灯りがあるから怖くないと思うのに、背中がゾクゾクしている。ますます黒崎が心配そうな声を出した。ごめんなさい。そう口にするのが精一杯だ。こういう場所に気軽に来てはダメだと実感したからだ。

「夏樹!どうしたんだ?俺だぞ。ここにいるのは……」
「えーーん!あんたの隣に“鬼”が居たんだーーーっ。ゆうとーーー……」
「なつきー。今、おまじないをしたからね。もう怖くなくなるよ……。俺も見たよ。丑の刻参りの衣装の人だよね?角は白い蝋燭だよ。ここでの目撃情報にあったんだ。女の人のオバケだって……」
「わーーーん!」

 すると、俺のおびえ方に心配したのか、アンがそばに来てくれて、鼻先を俺の頬にピタッとくっつけた。彼女の湿った鼻の感覚に落ち着いた。

 そして、現実感が戻ってきて、やっと俺は、黒崎と悠人の顔を見ることが出来るようになった。すると、悠人も俺のことを抱きしめてくれた。

「わーーーん!」
「なつきーー。夏樹のそばに緑色の衣装の人が立っているのが、今、見えたよ。良いオバケなんじゃないの?妖精みたいな格好だし……。だからもう平気だよーー」
「わーーん!それでも怖いよーー。ゆうとーー、ノアと真羽はどこに行ったの?また撮りに行ったのかよ?」
「うん。向こうでカメラを回し続けているよ。でも、ずっと顔色が悪くてねーー。あ、黒崎さん。聖河さん達を呼びますか?」
「ああ。合流したい。なんだ。夏樹、俺のことが怖いんじゃないのか?」
「意地悪言うなよーーーーっ」

 俺が黒崎のことを見上げると、そういう意地悪を返されてしまった。そして、彼が聖河さんに連絡を取り、晴海さん達と合流することになった。ここよりも先にある道路を歩いているそうだ。

 彼ら一行はすぐに見つかった。そして、合流してホッとした後、トイレに行きたくなり、ビニールハウスのそばで待機しているユーリーと早瀬さんのことを連れて、トイレに誘おうという話になった。

 そして、しばらく歩いて行くと、ビニールハウスが見えてきた。2人が座って道路を見ていた。彼らの元に到着すると、ピッタリとくっついて座り込んでいるのが分かり、面白くて吹き出して笑った。賑やかだと、オバケが出ないらしい。俺の心は落ち着いていて、やっと普段通りに戻ってきていた。

「ユーリー。早瀬さんにそんなにくっつくなんて、やっぱり怖いんじゃん。俺、さっきオバケを見たんだ。え?黒崎さん?口を塞ごうとするなよ~っ。息ができないじゃん。俺の方がオバケになるよ?」

 あんなに怖い思いをしたのに、口から出たのは、普段の俺らしい言い方だ。しかし、ノアに背中をさすられているから、何かあったのは間違いないと、早瀬さんがユーリーのことを促して、立ち上がった。そして、俺が黒崎から頬をつねられているのを見て、ホッとした顔をした。2人にも何かあったのだろうか。

「早瀬さん。ユーリー。何か起きたのかよ……」
「ああ、夏樹君。その何かが起きたよ……。ユーリーから身を挺して守ってもらえた。いたたたた。さすがに足が痛くなったよ。はははは」
「なあ、裕理。起きたよなあ?はははは」

 ユーリーが早瀬さんの肩を叩いた。そして、俺の顔色と真羽の様子もおかしいと言い、眉をひそめた。脅かされたのか?と言いながら。

 そういう彼も脅かされたのだろう。面白がって来てしまったからだなと、ユーリーが言い出した。

 そして、黒崎が、お前が来たがるからだと文句を言い返して、みんなから笑いが起こった。俺の方はまた、黒崎から頬をつねられた。心配を掛けた罰を受けろという。
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