青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
89 / 938

5-39

しおりを挟む
 一貴さんとユリウスの姿が見えなくなったところで、黒崎が俺の肩を揺すった。さっきは怖い思いさせたと、眉を寄せている。ユーリーに頼んで怖がらせようとしていた人なのに。今更だと思う。しかし、たまにはこういう外出もいいと思い、さっき見たオバケのことをみんなに話そうと決めた。しかし、黒崎が俺のことを止めた。

「夏樹、怖いんだろう?ユーリー、後で俺から話す。なんだ、夏樹。話すつもりなのか……。また泣くんだろう?」
「ああ。夏樹。可哀想に。こんなにおびえるなんて。顔色が悪いぞ?真羽君まで体調が悪くなったのか。僕は大丈夫だ。しかも、何も見ていない。人影だけだった。ビニールハウスのそばだと、この探知機は緑色に点滅しっぱなしだった。今回は見えるかと思ったんだけどね。圭一の部屋を覗いても、何も見えなかった……。夏樹、君のいる家の書斎ではなくて、隆さんの家の方だよ。圭一が学生時代に使っていたっていう部屋のことだよ……」
「なんだ~。ホッとしたよ~。うちにまでオバケが出るなんてさ~。考えたくなくって……。ユーリーはいつもオバケが見えるのかよ?」
「ああ。見えるんだ。今日は見えない。気配だけしか感じない……」
「ユーリー。何かあるといけない。心霊スポットへ行くのはやめたらどうだ?ほら、二葉が震えている。彼女も何かあったらしい……」

 黒崎の後ろの席には二葉が座って、ホットコーヒーを飲んでいる。寒いと言うより、怖かったそうだ。晴海さんも何かあったらしく、お互いに声が出なかったそうだ。そんな二葉の窓側に、ユーリーが立った。頭を撫でてあげている。

「ああーー、二葉、どうしたんだ?ああ、僕のそばだと安心するのか。晴海兄さんじゃなくてもいいのか?」
「晴海兄さんは今、コンビニのトイレを借りに行っているんだ……。みんな、トイレを済ませたよね?俺も落ち着いたよ……。お父さん……、おじいちゃんの方も、俺と晴海兄さんと同じだよ。肩を叩かれたんだってさ……。大成君は気がつかなかったみたいだよ。でも、風が吹いてきて、なんか変だなって思ったそうだぞ。俺達はまだ良い方だね。夏樹みたいに怖い思いはしていないからさ……」
「そんなことはないよ。肩を叩かれるのも十分、怖いと思うよ?」
「そうかな?そっちの方が十分怖いよーー……」

 二葉はお義父さんと晴海さん、一貴さん、聖河さんと大成とでビニールハウスを目指して歩いてるグループだった。大成がそのグループを選んだのは、ノアと真羽を一緒にさせたくてだった。引っ込み思案なのによく頑張ったと、俺が褒めると、照れくさそうにしていた。

 みんなでドキドキしながら歩いていると、二葉が後ろから肩を叩かれて、大成以外が同時に振り向いたそうだ。しかし、そこには誰もいなくて、お義父さんが”出た”と言ったから、聖河さんが”誰かいるのか?”と声をかけたが、返事は返って来なかったそうだ。そして、その後、黙ったままの晴海さんが、大成と二葉のことを促して、お義父さん達を置いて、歩き出したという。ここは危険だと言いながら。

 そう話している二葉が、俺の方を向いた。やっぱりオバケかな?と言いながら。一方、ユーリーは笑っている。何か起きそうだから笑うなと黒崎が言うと、二葉が首を横に振った。もっと聞きたいそうだ。怖いからだという。俺も同じ気持ちだった。気が合うと思っている。

「お兄ちゃんの横にいた人って、晴海兄さんが見たオバケと同じ人なのかな。ここにもそういう目撃情報があるって言うけど……。家から付いてきたんじゃないのかな?うわーー、怖いよーー」
「二葉。自分から怖くなるようなことを言い出すな……」
「そうだぞ、二葉君。来た甲斐があったということだ。ああ、圭一。怒らないでくれ。君も見られたら良かったのに……」
「はあ……」

 3人の会話を聞いた後、俺はため息をついた。ホッとしたような、そうでないよような心地だ。心霊スポットがこんなに怖い場所だなんて、想像もしてなかった。こういう気持ちで遊びに来てはいけないのだろう。大成以外は何か起きたということだ。黒崎はオバケを見ていないが、気配は感じたという。お義父さんにも何かあったなんて、思わなかった。てっきり、何も起きていない方だと思っていたのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...