青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
88 / 938

5-37

しおりを挟む
 23時59分を迎えたところだ。俺達は今、黒崎とお義父さんの車に分かれて乗り込み、コインパーキングの中にいる。さっき近くのコンビニで買ってきたホットコーヒーとドーナツを食べた。聖河さんが買ってくれた。今夜は楽しい体験が出来たと言っている。あれほど、俺達のことを馬鹿馬鹿しいと言っていたくせに。

 そして、0時前の目撃情報の話を持ち出して、ほんの少しだけ、心霊スポットに来て良かったと思うことがあったそうだ。もうすぐでその時間になるから、もう一度、ビニールハウスのそばに行きたいと言い出したから、俺達は止めた。真羽は車の中で休んでいるし、俺も背中がざわざわしているからだ。しかし、聖河さんは行くと言って聞かない様子だ。

 一体何があったのだろう。しかし、今は聞けない。聖河さんが真羽のことを励まし続いているところだからだ。

 真羽は緑色の衣装を着た男の子が現われたところから、一部始終をカメラで撮影していて肩が痛くなったというから、聖河さんに診てもらっている。さっきはノアも肩をさすっていた。そして、悠人が俺にしたのと同じおまじないを真羽にした。その後で落ちつき、今、聖河さんに、何を見たのかを熱心に話している。俺が見た丑の刻参りの人ではないようだ。

 真羽は黒崎の隣にいたそのオバケは見ていないそうだが、緑色の衣装の子のことはカメラに収めていた。しかし、録画を見ると、ぼんやりとした光に変わってしまい、撮った時はモニター画面にはっきりと映っていたのにと言っている。それはノアも見ているそうだ。夢でも見たんじゃないのかと、黒崎が言うと、聖河さんが笑っていた。同じ意見だとは言えないと言いながら。オバケの存在を肯定することにしたのだろうか。

 そして、彼らの話題は、俺が見た丑の刻参り姿のオバケのことになり、急に怖くなって、黒崎にすがりついた。彼は今、運転席の窓を開けて、外に立っているユーリーと話しているところだ。立ったり座ったりしている。ビニールハウスのそばに座り続けていたから、足が痛くなったそうだ。そこへ俺達が迎えに来て、良いタイミングだったという。あのままだと、早瀬さんのことを押し倒しそうになるところだったという話を聞き、早瀬さんがそういうことをされそうになったと言った。

「はははは、何か変だと思ったんだよ。押し倒されそうな感じがあってね……。そっちの方が怖かったんだ……。その後、何か人影が見えたんだ。その人が立ち去って行くのを俺達が見送った後、ユーリーが覆いかぶさってきた。強い風が吹いてきたからだよ。今日は風がないのにね……」
「どさくさに紛れてみた……。庇う気持ちは本当だ。圭一、どうしたんだ?」
「一貴みたいなことをするな……」
「あ、いた!」

 そこで、黒崎がユーリーの頭を軽く叩きながら、怪我がなくてよかったとホッとした顔をしていた。俺はその珍しい光景に驚いた。黒崎が絶対に手を上げない人だ。それなのに、ユーリーの頭をもう一度叩いている。ほんの軽く叩くようにしている。それを見て、俺は気持ちが和んだ。

「ははは。圭一。そう怒るな」
「怒ってない。呆れているだけだ。その一貴はどこだ?ああ、いた。よかった……。ユリウスをトイレに連れて行っていたのか……」
「みんなが来てくれて助かったよ。圭一さん。ありがとう……」

 早瀬さんが笑いながらため息をついた。ユーリーはそのままそこで待機しておくつもりだったのを、早瀬さんが強引に車に連れて帰ってきた。言うことを聞いてくれたと言って、ホッとしていた。気温が低くなっているから、休まないといけないと言っていたそうだ。すると、ユーリーが手元のオバケ探知機を見て、笑い出した。何か起きたらしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

処理中です...