青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺達には月の光が差し込んできた。ここで天体観測したら良いかもしれないと思った。それなら、黒崎に笑顔を取り戻せるだろうと思った。今の自分には、何を言ってあげたら元気を出してもらえるのか分からなくて、ただ抱きしめることしかできない。こういう時はアンが頼りだ。 

「アン、こっちにおいでよ~。黒崎さんが寒いんだって~」 
「アン、来てくれるのか……。おいで……」 

 そばに来たアンのことを、黒崎が抱き上げた。そして、アンが黒崎の頬をクンクン匂いを嗅いでいる。さっき、小さなカステラの食べたからだろう。匂いに敏感だ。特にカステラの匂いが好きなようで、尻尾をパタパタと振り始めた。 

「アンーー。カステラの匂いがするんだろ。食べたいよねえ。お砂糖の入っていないカステラを焼いてみようか?コンサートが終わった後、少しだけ時間が空くんだ。あんたもそれならパクパク食べてくれそうだよ」 
「ああ。頼む。小麦アレルギーはなかった。食わないかも知れない……」 
「甘い匂いがしないと、興味が無いかも知れないね。クンクンってしておいて、ふんって横を向くんだと思うよ~。甘くないじゃんって……。あれ?誰かいるよ」 

 するとその時だ。レンガの小道を過ぎた辺りに花壇があるのだが、そこに誰かが立っているのが見えた。カサカサという音もした。それは木の葉が風に揺れる音であり、足音ではなかった。すると、一貴さんがユリウスを連れて歩いているのが見えた。俺達の近くにいるのは、晴海さんだ。 

「おーーい、2人とも!ユリウスーー」 
「ああ、お前達も外にいたのか?寒くないのか……」 
「お兄ちゃんこそだよ。最近、夜中になったら星がよく見えるようになったからさ。見に出てきたんだ」 
「そうだな。去年よりもよく見える。不思議だな」 
「うん。曇っている感じが無いんだ。箱根で見た感じに近いよ。スッキリ澄んでいてさ……」 
「ユリウス。どこだーー?」 

 すると、俺達の足下に影が出来た。そして、ユリウスが俺達のことを見上げている。今日のバーベキューの間、彼もアンと一緒に寝入り込んでいた。ぐっすり寝たから元気なのだろう。 

 その後ろから一貴さんが走って来た。そして、彼のことを抱き上げて、ジャンパーの中に入れてしまった。その隙間から彼が顔を出している状況になり、黒崎が笑い声を立てた。 

「ユリウス、お前も散歩か。寒いだろう。そこは温かいか?」 
「うちの子はこの上着がお気に入りだ。僕が留守の間、潜って寝ている。圭一、腹は減っていないか?晴海君が腹ぺこになっているから、牛丼を食べに行こうかと思っている。聖河君もだ。24時間開いている店だ」 
「へえーー。黒崎さん、食べに行こうよ。あ、でも、アンが起きているから、お留守番だね。俺、アンと家で待っているよ。駅の近くだろ?行って来たら?」 
「いや、お前達を残しておけない。テイクアウトしに行こう。兄さん、それでも構わないか?一貴、一緒に来てくれ」 
「もちろん構わない。晴海君!そういうことだ。店は今度に……」 
「俺も行く……」 

 一貴さんの呼びかけに、晴海さんが首を横に振った。結局、聖河さんも入れて、みんなでお店にテイクアウトしに行くことになった。二葉とお義父さんが寝ているというから、牛丼はまた今度だ。起きたときに、自分たちも食べたかったと言うだろうか。 
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