青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 晴海さんが聖河さんに電話をかけると、もうこっちに歩いてきていた。やっぱり二葉達は寝ているようで、温かいうちが美味しいから、家には、レトルトパウチになった牛丼を持ち帰ることにした。 

「さあ、行こう……」 
「うん……」 

 店までみんなで歩いて行くことにした。それぞれ結構お酒を飲んでいるはずなのに、もう何ともないというから尊敬してしまった。俺は5時間も寝たのに。 

 この分だと、朝ご飯は昼ご飯と一緒でも良さそうだと思った。俺は味噌汁だけを飲む。それを黒崎からつっこまれて、ステーキ肉少しと、おかず少しと、フルーツしか食べていないことを指摘された。 

「また痩せて、久弥さんからイジられるぞ」 
「コンサートのMCで笑われることにするよ」 

 まだお腹がいっぱいだ。しかし、ハーフサイズの牛丼を食べても良いかも知れないと思った。今夜なら食べられそうだ。わりとお腹に隙間があるみたいだ。 

「俺、ハーフサイズの牛丼を食べることにするよ」 
「そうか。酒を飲んだから身体が温まったんだろう。顔色がいい」 
「そうだよね。自分でもそう思ったんだ。アンーー、黒崎さんがおいでって……」 

 ここから下り坂だ。道路が暗いから危ないと言い、黒崎がアンを抱き上げようとした。しかし、歩きたかったのか、スルリと腕から抜けて、リードを引っ張るようにして早足になった。 

「アンってば、おいでよ。ほら……。ほらね。こうやって俺が強引に抱くから嫌われるんだ~」 

 アンのもふもふの毛に頬ずりをした。抱っこは嫌がらない。機嫌が良いのか、黒崎のことを大きな目で見つめている。黒崎はこの視線に弱くて、どうしたんだ?とアンに聞き、願いを叶えようとする。俺に対しても同じだ。何とかしようとする。今だって、眠いのか?と聞いたり、帰りたいのか?と聞いたりしている。 

「この子なら大丈夫だよ~。ずっと寝ていたんだからさ~。元気いっぱいだから、歩きたいんだよ~。怪我が怖いんだよね。はいはい。大丈夫、店の前まで俺が抱っこしているからさ」 

 黒崎の背中を押した。前には晴海さんと聖河さんがいる。一貴さんは俺達の後ろを歩き、ユリウスをジャンパーの中に入れている。兄貴達の前で恥ずかしいと思ったのか、黒崎がアンに話しかけるのをやめた。 

「今更恥ずかしがるなよ~。あんたが犬語や猫語を話しても、誰も驚かないよ」 
「ばかやろう。着いたぞ。一貴と待っていてくれ」 
「分かったよ。いってらっしゃい」 

 駅の近くの牛丼店の前に着いた。店内には数人のお客さんがいた。テイクアウトの人も居るようだ。この時間でも混んでいるのだと分かり、驚いた。午前1時なのに。電話注文をしておけば良かったねと言いながら、黒崎達がお店に入っていった。残されたのは、俺と一貴さんだ。寒いから、お互いに身を寄せ合うようにして話した。 

「寒くなったよね。風邪は引いていないの?」 
「ああ、今年はまだ引いていない。僕が元気だと、役員達が不審がる。風邪を引いているのが定番になっているそうだ」 
「そんなに引いていたっけ?ああ、そうなのか。家に来て、食事が整ったって事なんだね。やっぱり、そうだよ。色んな食材を食べないと、元気にならないんだよ~。まあ、俺が言えることじゃないけどね……。カズ兄さんはネギ大盛りの牛丼にしたんだね。それ、美味しいよね。俺、キムチが乗った牛丼のハーフサイズを頼んだんだ」 
「それも美味しいな。聖河君は牛丼が好きだ。僕のざるぞばみたいに、いつもそればかり食べているそうだ」 
「ああ~、なんかうちの家の人っぽいなあ。お義父さんも決まったものばかり食べていたそうなんだ。身体を壊した後から、バランスを考えて食べるようになったんだって……」 

 それを聞いた一貴さんが笑顔になった。偏食っぽいのが自分だけではなくて、安心したそうだ。お義父さんとの食事の好みも似ている。性格も似ていることが、最近になり、新しい発見になった。黒崎とはまた違う感じでも無く、ああ、兄弟だなと分かる。 
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