青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 これからヘアメイクを受ける。鏡の前に座り、ローザーさんが俺の髪の毛にドライヤーを当てた。そして、ワックスを付けて完成だ。5分も掛からない。今日ここに来たのは10時半で、その時にヘアスタイルを作って貰い、途中で悠人に髪の毛をかき混ぜられたのに、ほとんど崩れていない。 

 さすがはプロだと感動していると、ささっとメイクに移った。目尻にアイラインを引き、眉の部分にペンが走らされた。そして、今日は顔色が良いから、これで終了だと言われて驚いた。いつもなら入念にメイクをしているのに。 

「これでいいの?いつもの俺だよ。さっきのSNSのはすっぴん指定だったけど……」 
「事務所からの指定は、明日と明後日は、がっつり作るわよ~。悠人君は違うのよ。この後で、がっつり作るから」
「ひいいいいっ。今日はもう良いよーー。ローザーさんがペタペタ俺に触るんだもん」 
「リラックスさせるために、肩のマッサージをしていたのよ。ねえ、夏樹君。今日は山岸先生は来られるの?」 
「聖河さんなら、もう来ているよ。さっき、廊下で会ったよ。聡太郎君の手首を診てくれている頃だと思うよ」 
「そうなのーー。アタシ、避けられている気がしていて。あーーあ……」 
「そんなことは無いと思うよ。だって、”ローザー先生は来ているのか”って、聞かれたからさ」 
「それを避けているって言うんじゃないかしら……。この間のガーデンパーティーはお近づきのチャンスだったのに、あいにく都合で行けなくって。あーーあ……」 

 ローザーさんが肩を落としている。聖河さんのことを好きになったというのは冗談かと思っていたのに、本気なんだと言われたから驚いたのが、今日の午前中だ。聖河さんにデートの申し込みをしたらしいが、返事を聞かされていないという。こういう時は、まずは友達づきあいから始めていくと良いと思う。 

「俺と黒崎さんみたいに、友達づきあいから始めると良いと思うよ?」 
「そう?友達づきあいより、最初からかぶりつきたいのよねえ……」 
「だめだよ~。聖河さんって、昔付き合っていた人にフラれた後、誰とも付き合っていないんだって言っていたんだ。引きずっているんだって。傷つきたくないって言う気持ちだよ。俺、その気持ちが分かってさ。そうだよね~って言ったら、小学生1年生の時に付き合っていた相手だって言うから、笑っちゃってさ。悪かったなあって思ったんだ……。もちろん、同じクラスの男の子だってさ。付き合っているって思っていたのは自分だけで、相手は親友だって思っていたのが分かって、ショックだったんだってさ」 
「あら……。その親友の彼とはどうなったのかしら……」 
「今も親友で、同じ病院で働いているお医者さんなんだよ。聖加世病院だよ。外科の先生だってさ。悠人は会ったことがあるよね?」 
「うん。腱鞘炎の時、山岸先生の隣に立っていたから、紹介して貰ったことがあるよ。すっごく厳しそうな先生だったよーー。しかも裸足でさーー。診察室にいたからだと思うんだけど、せめて、スリッパを履けば良いのにって思ったから、インパクトがあったよ。部屋ではいつも裸足なんだって、山岸先生が言っていたんだ」 
「あら、珍しいわね。裸足だなんて。え?キャンプが好きな先生なの?あら、話が合いそう……」 

 ローザーさんが元気になった。独身だと聞いたからだ。そして、写真は無いのかと、ネットで検索を始めた。悠人から名前を聞き、病院名でヒットして、言葉を失った。だめなタイプだという。 

「写真から伝わってくるわ……。厳しそうな先生ね。こういう先生なら、患者さんの前ではきちんとした格好をしそうなのにね」 
「不思議だよね。黒崎さんが会社で裸足でいたらどうしよう?」 
「そういうことはないでしょう。いつもきちんとされていて、憧れているのよ」 
「うひゃひゃひゃ。ありがとう」 

 これでヘアメイクは終了だ。ローザーさんがテーブルに置いてあるカードを手に取り、占いを始めた。今日と明日の運勢は好調だという。明後日の占いは、明日にならないと的中しないのだという。もちろん明日も占って貰いたい。次は悠人の番だから、俺の代わりに鏡の前に悠人が座った。すると、肩に触れられて、声を上げていた。ぞわぞわするのだという。 
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