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パタン。事務所の車に乗り込んだ。高宮さんはIKUの車だ。またホールでと手を振り合い、それぞれの車に乗って発進された。事故が無いようにと願いながらだ。
俺が座っているのは3列目だ。隣には聡太郎と悠人が座っている。高山さんと大和は前の席だ。助手席には長谷部さんが座り、事務所と電話で話している。これからホールに向かうという連絡のためだ。
ここからホールまでは歩いて行けるの距離だ。しかし、15分ぐらいかかるから、みんなで車で来た。スタッフ達さんを運んできた大きなバス4台は手前を走っている。湾岸線の静けさを車の窓から見て、まだ夜明け前だから、夜だと錯覚しそうになった。悠人も同じだという。
「ああーー、一昨年、お義父さんと市場に行ったのを思い出すよ。お正月前に行ったんだ。朝5時だったよ。人がそこそこ多くてさ。魚とお惣菜を買ってきて、一緒に食べたんだ」
「黒崎さんは一緒じゃなかったの?」
「もちろん、一緒に行っていたよ。もう空気みたいな存在だからさ。俺とセットになっているのって、先月までだよ。忙しくてさ。休みの日に別々に行動するなんて、思ってもみないことだったよ」
「そうだねーー。俺と居るときの方が多くない?」
「うん。悠人とは大学でも一緒だもん。でも、空気とは言わないからね」
「ふむふむ。気を遣ってくれてありがとう。味噌汁コマーシャルの時、もう別の世界の人みたいって言っていたのは、訂正するんだろ?」
「うん。やっぱり悠人だなあって思うよ。うちでご飯を食べている時と同じだよ。本当に行儀が良いよねえ。お箸の持ち方が綺麗だよ。コマーシャル撮りの前に練習しなくて良かったんだろ?」
「へへへ……」
悠人が出たコマーシャルには、マナー講師も呼ばれていたという。お箸の持ち方や、味噌汁の飲み方を伝授されるという。しかし、悠人はきちんとしているから練習することはなく、それどころか褒められっぱなしで顔が赤くなり、心を落ち着かせる方が大変だったという。その撮影の時のヘアメイクとスタイリストも、ローザーさんが担当した。
第4弾のCMでは、悠人はツンツンヘアをしている。その子が大人しく味噌汁を飲む光景が評判が良くて、ヘアスプレーの広告の仕事まで入ってきたそうだ。悠人は大忙しだ。
そして、俺にも仕事が入ってきた。黒崎製菓のチョコレートのCMのナレーションだ。シャルロットとジュリエットがチョコを食べているところをアニメーションの俺が現われて、なんと、チョコを奪い取ろうとしているCMだ。最終的には3人で仲良く食べるという構成になっている。
しかし、黒崎が俺にはCMに出さないと言っている。ナレーションでもいけないという。音楽の仕事と開発部の仕事だけでやってくれということだった。事務所とIKUとしては断れない話だと言い、俺もやりたい。
黒崎とは話し合うしかない。俺のことで心配事があるというよりは、独占欲からそう言っているのだと分かったからだ。俺が出ている雑誌記事を最後まで読もうとしないし、動画も観ない。しかし、伊吹の出ている番組だけは毎回見ている。一体、なんの違いがあるのだろうかと思っている。
「全く、うちの黒崎さんってば……」
「君の動画も記事も、こっそり読んでいると思うよーー?」
「そうかなあ……。俺のこと、もう餌をやらないって感じ?」
「そんなことはないよーー。リハーサルの時、ずっと送り迎えをしてくれただろーー」
「まあね。うへへ……」
たしかにそうだと思った。今朝の黒崎の寝言は俺の名前だった。うなされている感もあったから心配になり、途中で起こした。すると、俺が庭の溝に足を突っ込んでしまったという夢だったというから、お互いに笑った朝だった。
俺が座っているのは3列目だ。隣には聡太郎と悠人が座っている。高山さんと大和は前の席だ。助手席には長谷部さんが座り、事務所と電話で話している。これからホールに向かうという連絡のためだ。
ここからホールまでは歩いて行けるの距離だ。しかし、15分ぐらいかかるから、みんなで車で来た。スタッフ達さんを運んできた大きなバス4台は手前を走っている。湾岸線の静けさを車の窓から見て、まだ夜明け前だから、夜だと錯覚しそうになった。悠人も同じだという。
「ああーー、一昨年、お義父さんと市場に行ったのを思い出すよ。お正月前に行ったんだ。朝5時だったよ。人がそこそこ多くてさ。魚とお惣菜を買ってきて、一緒に食べたんだ」
「黒崎さんは一緒じゃなかったの?」
「もちろん、一緒に行っていたよ。もう空気みたいな存在だからさ。俺とセットになっているのって、先月までだよ。忙しくてさ。休みの日に別々に行動するなんて、思ってもみないことだったよ」
「そうだねーー。俺と居るときの方が多くない?」
「うん。悠人とは大学でも一緒だもん。でも、空気とは言わないからね」
「ふむふむ。気を遣ってくれてありがとう。味噌汁コマーシャルの時、もう別の世界の人みたいって言っていたのは、訂正するんだろ?」
「うん。やっぱり悠人だなあって思うよ。うちでご飯を食べている時と同じだよ。本当に行儀が良いよねえ。お箸の持ち方が綺麗だよ。コマーシャル撮りの前に練習しなくて良かったんだろ?」
「へへへ……」
悠人が出たコマーシャルには、マナー講師も呼ばれていたという。お箸の持ち方や、味噌汁の飲み方を伝授されるという。しかし、悠人はきちんとしているから練習することはなく、それどころか褒められっぱなしで顔が赤くなり、心を落ち着かせる方が大変だったという。その撮影の時のヘアメイクとスタイリストも、ローザーさんが担当した。
第4弾のCMでは、悠人はツンツンヘアをしている。その子が大人しく味噌汁を飲む光景が評判が良くて、ヘアスプレーの広告の仕事まで入ってきたそうだ。悠人は大忙しだ。
そして、俺にも仕事が入ってきた。黒崎製菓のチョコレートのCMのナレーションだ。シャルロットとジュリエットがチョコを食べているところをアニメーションの俺が現われて、なんと、チョコを奪い取ろうとしているCMだ。最終的には3人で仲良く食べるという構成になっている。
しかし、黒崎が俺にはCMに出さないと言っている。ナレーションでもいけないという。音楽の仕事と開発部の仕事だけでやってくれということだった。事務所とIKUとしては断れない話だと言い、俺もやりたい。
黒崎とは話し合うしかない。俺のことで心配事があるというよりは、独占欲からそう言っているのだと分かったからだ。俺が出ている雑誌記事を最後まで読もうとしないし、動画も観ない。しかし、伊吹の出ている番組だけは毎回見ている。一体、なんの違いがあるのだろうかと思っている。
「全く、うちの黒崎さんってば……」
「君の動画も記事も、こっそり読んでいると思うよーー?」
「そうかなあ……。俺のこと、もう餌をやらないって感じ?」
「そんなことはないよーー。リハーサルの時、ずっと送り迎えをしてくれただろーー」
「まあね。うへへ……」
たしかにそうだと思った。今朝の黒崎の寝言は俺の名前だった。うなされている感もあったから心配になり、途中で起こした。すると、俺が庭の溝に足を突っ込んでしまったという夢だったというから、お互いに笑った朝だった。
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