青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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8-10(夏樹視点)

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 午前9時半。

 俺は今、神社に来ている。神主さんによるお祓いを受けたところだ。メンバーは、久弥と俺と悠人だ。蘭さんと高山さんは昨日受けてある。本当なら、ステージに立つみんなで受けたいところだったが、TDDは3人だから、3人で受けるのがベストだという話になり、別々になった。神主さんのお勧めだ。

 この神社は勝負の神様がまつられている。野球選手など、スポーツ選手が多く訪れるという。他にも、交通安全の祈祷も受け付けしている。勝負の神様ということで、復縁を目指す人も訪れるそうだ。そういうわけで、俺はざわざわしている。もしも、黒崎の過去のデート相手が参拝に来て、願いを叶えられたら困ると思っている。

 この話を久弥と悠人が聞き、大笑いをした。悠人まで笑うとは思わなかった。てっきり、俺と一緒に狼狽えてくれると思っていたのに。

「なんだよー。ゆうとー、余裕かよーー?」
「違うよーー。さっきからラインが入りっぱなしだろー。黒崎さんから……」
「そうだけどさ……。心配掛けているんだよ。俺の身体の具合をさ……」
「そうだろうとも。さあ、少し散歩して帰ろう。ありがとうございました」

 俺達に付き添ってくれたのは長谷部さんと遠藤さんだ。遠藤さんと久弥が神主さんにお礼を言い、まずはお祓いが済んだといったところだ。これから1時間の自由時間があり、境内を散歩しても良いし、ホールに戻ってもいい。そこで、俺達は神社の中を散策することにした。

 じゃり……。奥にある大きな木の方に行ってみたくて、砂利を踏んで、奥の方を覗いた。すでに参拝客がいる。もう少し後の方が良いだろう。何かお願い事をしているようだからだ。

「なつきーー。俺達は後にしようよ」
「うん。俺、恋愛おみくじを引きたいな。お守りも欲しいんだ」
「夏樹、お前、すっかり恋愛ひいきになったな。ローザーの占いの結果が良かったからか?」

 すると、久弥が俺の肩に触れた。木の葉がついているという。それをそっとした力で取ってくれた瞬間、不思議なことに、肩凝りで頭痛がしていたのが治まった。気が晴れたということだろうか。

「頭が痛いのが治ったよ。ローザーさんが健康には気を付けてって言っていたから、お腹を壊さないようにするよ。寒くなったし……。恋愛運は好調だから、それも信じていくよ。何か一つでも良い運があると安心するよ」
「前向きな考え方だ。悠人、お前は旅行運が良かったんだろう?おみくじとローザーの占いが同じだ。すごいな」
「うん。コンサートが終わった後、箱根に行って来るよーー。あ、出ているよ!」

 悠人が先におみくじが置いてある建物の方に歩いて行った。いろいろな種類があるようだ。お正月に来た時はどれも売り切れになっていて、買えなかった。すると、スーツのポケットからハンカチが落ちてしまった。御手水で手を塗らしたときに拭いたから、まだ湿っている。ハンカチを拾い上げると、そのハンカチが重く感じた。そして、柔軟剤の匂いがぷーんと広がった。

「やばい。この柔軟剤、香りが強めなんだ。黒崎さんがまた俺に文句を言うよ。変えなきゃよかったかも……」
「匂わせてみろ。……多く入れすぎじゃないのか?ああ、けっこう匂う」
「やっぱり?久弥の家は何を使っているの?」
「アンドリュー社のグリーンの香りだ。うちのお母さんが好きな匂いだ。汗をかいても匂わない。無臭だ」
「なるほど。悠人のところは、”無敵快適一番楽”っていう商品なんだ」
「なんだそれ。売っていないぞ」
「あれ?そう言っていたはずなんだけどなあ……」

 その発言の主が、おみくじのそばで俺達に手を振っている。遠目からでもミュージシャンだと分かる。もう悠人には道が決まっていることがよく分かった。
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