青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 伊吹の声は俺と似ている。骨格も同じだからだろう。そういう伊吹がぎゃあぎゃあとまくしたてるようにして、一貴さんに噛みつくように話しかけている。何かあったに違いない。しかし、本人には聞かずに、先に黒崎に事情を聞くことにした。

「黒崎さん。伊吹お兄ちゃん、何かあったの?」
「"島川社長”から雑誌対談の第二弾の申し込みがされた。ついでに、週刊誌に書かれる予定だそうだ。親戚同士と言える2人の確執を超えて、対談へというタイトルの予定らしい。伊吹君がテレビで顔が広まったから、"島川社長”からが和解を申し込んだというあらすじだ」
「もう和解しているじゃん。そっか。世間で見ると、そうじゃないんだね。ネタになるもんね。プラセルの宣伝にもなるし。ブロッコリーの宣伝にも……。でも、そんな宣伝いらないんじゃないの?」
「いや、和解したという証が必要だ。”島川社長”が黒崎家に住んでいることが週刊誌の記事で出たことで、ブロッコリーの社長とは親戚じゃないかと言われている。だからこそだ」
「ふうん。また喧嘩になるなら、やめた方が良いと思うのに。まさか、2人でテレビに出たいとか?」
「一貴、そうなのか?」

 黒崎が足を組んだ姿勢でだらっとして座り直し、一貴さんに問いかけた。すると、一貴さんは笑い声を立てて俺達の方に振り向いた。顔がますます嫌みな人に変わっている。

「ああ、そういうのも良いかもしれないと思っている。仲が悪いことは評判になっているから、和解とは受け取られない。デジタルカタログをブロッコリー社に発注しているんだけど、この通り、僕は中山社長に嫌われている。僕は顧客だぞ?会食なしで発注したんだ。信頼している証だよ。どうだ?」
「うぬぬぬぬ……。良い仕事を頂いて感謝していますが、あんたは裏がある人間です!」
「そうだろうなあ。親しくはなりたくないという証だ。僕はまず、仕事を依頼する相手とは食事をする。それがなかった。仲が最悪だという証でもある。それでも発注したのは、落とし穴があるということだよ」
「うぬぬぬぬ……」

 伊吹が歯を食いしばる顔をした。それでも仕事を受けたのは、取引先がプラセルということで、美味しい仕事だったからだ。そして、国内外にカタログが配布されることになるからだと、一貴さんが言った。それを聞き、黒崎が無表情になった。喧嘩には関知しないという証だ。

「カズ兄さん。やめろよ~。仲良くしてよ~。伊吹お兄ちゃんもさ、上昇気流に乗っているなら、仕事を受けなくても良いだろ。会社のことはよく分かっていないけどさ。職人気質で通したらいいじゃん。あちこちから仕事が入ってきているんだし……。プラセルの仕事を断ったからと言って、批難されるようなことはないはずだよ。だって、プラセルって嫌われているんだし。カズ兄さんが家の中で言っていたんだ」
「夏樹っ。とても良い値段だったんだ!食いつきたいに決まっている。だから胃を壊して、胃腸科に通院している。嫌なことを我慢して、こうして島川社長と会って交流を深めて、対談の申し込みを了承し、歯を食いしばっている。来期のブランド展開にも、うちのブロッコリーを使ってもらえるという話だ。こんなに美味しい話に乗らないわけにはいかない!」
「お兄ちゃん……。胃潰瘍なの?」
「いや、カメラを飲んだら、傷ひとつ付いていなかった。会食で飲み過ぎたんだろう。たまに胃が痛いぐらいだ」
「なんだ~」

 それを聞いて、ホッとした。聡太郎がステージに立つという今、倒れるわけにはいかないだろう。いくら俺達が付いているとはいえ、一緒に乗り越えたいはずだ。
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