173 / 938
8-17
しおりを挟む
コンコン。
控え室のドアがノックされた。長谷部さんがドアを開けてくれた。すると、スタッフがいて、俺達の出番だと呼びに来たことが分かった。
「行って来るよ!」
「ああ、行ってこい。俺は関係者席で観ている」
「いつもそこだよね。いいの?あんまりよく見えない席だけど……。サイドから観ていたら?悠人のお父さんは、今回そうするんだ」
「そうなのか。久田さんがいるのか。1人か?宮田さん達は観客席なのか」
「ううん。涼花さんと藍生ちゃんもだよ。兄貴の働くところを見せるんだって。可愛いよね」
「あの爆音が平気なのか……」
「あんまり音が大きく聞こえない場所で見せるそうだよ。まあ、悠人の妹だからね。音楽が好きみたいだよ。ハードロックなのに、大人しく聴いているんだ。まだ2歳なのに……」
「そうか……」
黒崎が笑い出した。クラシックよりもヘヴィーメタルやハードロックが好きらしいと、長谷部さんから聞いたからだ。いつか悠人のように、ギターをかき鳴らすのかも知れない。その時が来るのは何年後だろう。俺達は何歳になっているだろうか。
(俺、元気でいるかな?今と変わらない方が良いな。みんな元気でさ……)
この言葉は口に出さないことにした。廊下には悠人と久弥が立っていた。早速俺は部屋から出て、2人とハイタッチをした。これからステージが始まる。ステージサイドにあるホールのロビーを映しているカメラには、俺が好きなトラ顔プリントのTシャツ姿の子や、悠人のトゲトゲのヘアスタイルを真似した子、久弥のエスニックファッション姿の人達が映っていた。物販コーナーで、グッズを買う列に並んでくれている。
「おおーー、会場限定のカチューシャがあるもんね。男の子も買ってくれているんだって!」
「へえーー。出して良かったね。エスニックキャットの耳のやつ」
それは久弥がデザインしたキャラクターだ。TDDが終わると、もう売らなくなる予定だ。会場からは久弥コールが起こっているそうだ。もちろん、俺や悠人の名前も呼んでくれている。
俺達は廊下を歩き進み、励ましの言葉をかけてくれているスタッフさん達の手をタッチしながら歩いた。ステージサイドには、衣装のコーナーが置かれている。替えの衣装だ。俺は中盤から上半身裸になるから、主に久弥の衣装になる。悠人はクールに決めたくて、衣装チェンジはしない希望だ。
久弥の今日の衣装は、ディアドロップ時代のイメージだ。一見、女性のように見える。これが好きな人がいて、懐かしいと言ってもらえるのが狙いだ。そして、聡太郎にギターを変わってもらうときに、久弥は今の男っぽいイメージの衣装に変わる。
俺は悪い男風の衣装になる。そして、それを脱ぎ、2階席近くまで歌いながら歩くという演出もする。それまでは、シンプルなTシャツと黒のジャケット姿だ。そして、マイクスタンドには飾りが付けられている。俺がマイクスタンドを振り回して歌う時に輝くように装飾されている。結構派手だ。
「なつきーー、あのマイクスタンド、かっこいいね!」
「うん。ローザーさんが作ってくれたんだ。照明に映えるようにしてくれていてさ……。手作り感があるよね。いいよね、アットホームでさ。ああーー、なんか泣けてきたよ~。うっうっ」
俺の後ろには黒崎がいる。一貴さんと伊吹のことが心配だから、やっぱり関係者席でステージを観ることにしたそうだ。黒崎のハンカチで目元を拭いた後、久弥に手を差し伸べられた。すると、黒崎が俺の背中を押した。
「頑張ってこい」
「うん!行ってきまーーす!」
俺の手を引くのは悠人だ。聡太郎と大和が手を振ってくれている。それに振り返しているうちにステージに着いてしまい、もう少しでフライングするようにして中央に立つところだった。
気持ちは落ち着いている。そして、胸の鼓動が高鳴った。ステージはまだ真っ暗だ。スタッフが動いていて、ドラムの後ろには仙頭さんが待機している。歩き回ってカメラで映すためだ。この仙頭さんがファンの間では馴染みになっているようで、仙頭コールが起こっていて、スタッフに笑いが起こった。さあ、これからステージが始まる。
控え室のドアがノックされた。長谷部さんがドアを開けてくれた。すると、スタッフがいて、俺達の出番だと呼びに来たことが分かった。
「行って来るよ!」
「ああ、行ってこい。俺は関係者席で観ている」
「いつもそこだよね。いいの?あんまりよく見えない席だけど……。サイドから観ていたら?悠人のお父さんは、今回そうするんだ」
「そうなのか。久田さんがいるのか。1人か?宮田さん達は観客席なのか」
「ううん。涼花さんと藍生ちゃんもだよ。兄貴の働くところを見せるんだって。可愛いよね」
「あの爆音が平気なのか……」
「あんまり音が大きく聞こえない場所で見せるそうだよ。まあ、悠人の妹だからね。音楽が好きみたいだよ。ハードロックなのに、大人しく聴いているんだ。まだ2歳なのに……」
「そうか……」
黒崎が笑い出した。クラシックよりもヘヴィーメタルやハードロックが好きらしいと、長谷部さんから聞いたからだ。いつか悠人のように、ギターをかき鳴らすのかも知れない。その時が来るのは何年後だろう。俺達は何歳になっているだろうか。
(俺、元気でいるかな?今と変わらない方が良いな。みんな元気でさ……)
この言葉は口に出さないことにした。廊下には悠人と久弥が立っていた。早速俺は部屋から出て、2人とハイタッチをした。これからステージが始まる。ステージサイドにあるホールのロビーを映しているカメラには、俺が好きなトラ顔プリントのTシャツ姿の子や、悠人のトゲトゲのヘアスタイルを真似した子、久弥のエスニックファッション姿の人達が映っていた。物販コーナーで、グッズを買う列に並んでくれている。
「おおーー、会場限定のカチューシャがあるもんね。男の子も買ってくれているんだって!」
「へえーー。出して良かったね。エスニックキャットの耳のやつ」
それは久弥がデザインしたキャラクターだ。TDDが終わると、もう売らなくなる予定だ。会場からは久弥コールが起こっているそうだ。もちろん、俺や悠人の名前も呼んでくれている。
俺達は廊下を歩き進み、励ましの言葉をかけてくれているスタッフさん達の手をタッチしながら歩いた。ステージサイドには、衣装のコーナーが置かれている。替えの衣装だ。俺は中盤から上半身裸になるから、主に久弥の衣装になる。悠人はクールに決めたくて、衣装チェンジはしない希望だ。
久弥の今日の衣装は、ディアドロップ時代のイメージだ。一見、女性のように見える。これが好きな人がいて、懐かしいと言ってもらえるのが狙いだ。そして、聡太郎にギターを変わってもらうときに、久弥は今の男っぽいイメージの衣装に変わる。
俺は悪い男風の衣装になる。そして、それを脱ぎ、2階席近くまで歌いながら歩くという演出もする。それまでは、シンプルなTシャツと黒のジャケット姿だ。そして、マイクスタンドには飾りが付けられている。俺がマイクスタンドを振り回して歌う時に輝くように装飾されている。結構派手だ。
「なつきーー、あのマイクスタンド、かっこいいね!」
「うん。ローザーさんが作ってくれたんだ。照明に映えるようにしてくれていてさ……。手作り感があるよね。いいよね、アットホームでさ。ああーー、なんか泣けてきたよ~。うっうっ」
俺の後ろには黒崎がいる。一貴さんと伊吹のことが心配だから、やっぱり関係者席でステージを観ることにしたそうだ。黒崎のハンカチで目元を拭いた後、久弥に手を差し伸べられた。すると、黒崎が俺の背中を押した。
「頑張ってこい」
「うん!行ってきまーーす!」
俺の手を引くのは悠人だ。聡太郎と大和が手を振ってくれている。それに振り返しているうちにステージに着いてしまい、もう少しでフライングするようにして中央に立つところだった。
気持ちは落ち着いている。そして、胸の鼓動が高鳴った。ステージはまだ真っ暗だ。スタッフが動いていて、ドラムの後ろには仙頭さんが待機している。歩き回ってカメラで映すためだ。この仙頭さんがファンの間では馴染みになっているようで、仙頭コールが起こっていて、スタッフに笑いが起こった。さあ、これからステージが始まる。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる