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六槍さんと視線が合った。一貴さんの秘書だから、敵対者ではないだろう。しかし、社内に敵がいないとは限らず、彼が一貴さんを敵対視するようになるかも知れない。そういうことを考えて、肩に力が入った。
そして、今の会話は六槍さんの冗談かと思った。実際に、彼は微笑んでいる。人が悪そうには見えない。一貴さんと伊吹の争いは収まり、仲直りを済ませている。今になって、実はこうだったのだと話したいのだろうか。
「あの……。今の話、黙っていたら良かったと思うんです。俺には……。あ……」
しまった。本音が出てしまった。黒崎から言いつけられているのに。初対面の相手に心の内を打ち明けるなと。しかし、六槍さんの目を見ていると、すーーっと、心の中にある鎖が解かれてしまい、ぽろぽろと本音が口からこぼれだしそうな感覚に襲われた。こんなこと、初めてだ。
「あの……。すみません。喉の調子が悪くなって……」
「ああ、いいですよ。僕の特徴なんです。相手を困らせる発言をしてしまう。そして、相手も僕に合わせて、困る発言をすることになる。そういうわけで、建前だけじゃなくて、本音で話し合うことになるんです」
「それって……」
「社長にもある特技です。僕、占いが得意で、バイトをしたことがあるんです。そういうわけで、僕の前では本音が出るんだと思います」
「ああーー、そういうことですかーー」
それなら納得だ。俺もローザーさんの前では最初から本音で話していた。安心感があるからだ。何か特別な力があるのだろう。一貴さんも不思議な人だから、そういう話を聞いても驚かない。奇々怪々な黒崎家の中にも居るし、お義父さんだって魔法を使えるのではないかと本気で思ったことがあり、慣れている。
「分かって頂けましたか?」
「分かりました。特別な力があるっていうタイプですよね」
「そうそう。そういうことです。話が早いなあ。僕、本音で話すのが好きなんですよ。夏樹さんのことも、メンバーさんのことも、好ましい方達だと思っています。だから、社長に無理を言って、コンサートを観に来ました。本当は会社に残って仕事をしないといけなかったんですけどね」
「ありがとうございます。なんだか、変な感じなんです。俺、今思っていることとか、不安なことをペラペラ喋りそうです……」
「ああ、まずいですね。僕は席を外します。黒崎副社長に名刺を受け取って頂きましたから、何かあったら、連絡を下さい。電話でも良いですし、メールでも良いです。人生相談でも良いです。僕の年齢は28歳で、そんなに年が離れていないから、話しやすいかと思って、さっき、強引に名刺を受け取って頂いたわけです」
「それはそれは、すみません。あのーー、さようならと言っていましたよね。失礼だったかも……」
「それはいいんですよ。ナンパだったので」
「え?」
「はははは。僕のタイプだったから。かっこいいよね。ゾクゾクする感じ。良いなあ、夏樹さん。ああいう人が伴侶だなんて。僕も新しい恋を見つけなくちゃ……。じゃあ、また!」
「はい。また今度。連絡すると思いますので……」
「はははは。本当だよね。ありがとう……」
そう言って、六槍さんが関係者席から出て行った。気がつくと、他の人も帰り支度を始めているし、ホールを出ている人もいる。残っているのは数人だ。その中にはもちろん黒崎もいて、さっきの六槍さんとの会話を聞かれていたのだと知った。それなら助けに来て欲しいと思った。
「なんだよ~、助けに来いよ~。人生相談するところだったんだよ~」
「俺はそばにいた。いつでも助けられる」
「俺が恥をかいてもいいわけ?傷つくことだってあるかも知れなかったんだ。もしかしたら、そういう発言が飛び出してくるかも知れないだろ」
「一貴の秘書だ。そういうことはないはずだ。ナンパは冗談だ」
「ふうん。安心して話していい人って事なんだね……」
黒崎は六槍さんとの会話を止めなかった。ということは、信頼できる人物だということだ。会話の中身はハラハラする感じがあったのに。ナンパだって本気だと思った。
そして、今の会話は六槍さんの冗談かと思った。実際に、彼は微笑んでいる。人が悪そうには見えない。一貴さんと伊吹の争いは収まり、仲直りを済ませている。今になって、実はこうだったのだと話したいのだろうか。
「あの……。今の話、黙っていたら良かったと思うんです。俺には……。あ……」
しまった。本音が出てしまった。黒崎から言いつけられているのに。初対面の相手に心の内を打ち明けるなと。しかし、六槍さんの目を見ていると、すーーっと、心の中にある鎖が解かれてしまい、ぽろぽろと本音が口からこぼれだしそうな感覚に襲われた。こんなこと、初めてだ。
「あの……。すみません。喉の調子が悪くなって……」
「ああ、いいですよ。僕の特徴なんです。相手を困らせる発言をしてしまう。そして、相手も僕に合わせて、困る発言をすることになる。そういうわけで、建前だけじゃなくて、本音で話し合うことになるんです」
「それって……」
「社長にもある特技です。僕、占いが得意で、バイトをしたことがあるんです。そういうわけで、僕の前では本音が出るんだと思います」
「ああーー、そういうことですかーー」
それなら納得だ。俺もローザーさんの前では最初から本音で話していた。安心感があるからだ。何か特別な力があるのだろう。一貴さんも不思議な人だから、そういう話を聞いても驚かない。奇々怪々な黒崎家の中にも居るし、お義父さんだって魔法を使えるのではないかと本気で思ったことがあり、慣れている。
「分かって頂けましたか?」
「分かりました。特別な力があるっていうタイプですよね」
「そうそう。そういうことです。話が早いなあ。僕、本音で話すのが好きなんですよ。夏樹さんのことも、メンバーさんのことも、好ましい方達だと思っています。だから、社長に無理を言って、コンサートを観に来ました。本当は会社に残って仕事をしないといけなかったんですけどね」
「ありがとうございます。なんだか、変な感じなんです。俺、今思っていることとか、不安なことをペラペラ喋りそうです……」
「ああ、まずいですね。僕は席を外します。黒崎副社長に名刺を受け取って頂きましたから、何かあったら、連絡を下さい。電話でも良いですし、メールでも良いです。人生相談でも良いです。僕の年齢は28歳で、そんなに年が離れていないから、話しやすいかと思って、さっき、強引に名刺を受け取って頂いたわけです」
「それはそれは、すみません。あのーー、さようならと言っていましたよね。失礼だったかも……」
「それはいいんですよ。ナンパだったので」
「え?」
「はははは。僕のタイプだったから。かっこいいよね。ゾクゾクする感じ。良いなあ、夏樹さん。ああいう人が伴侶だなんて。僕も新しい恋を見つけなくちゃ……。じゃあ、また!」
「はい。また今度。連絡すると思いますので……」
「はははは。本当だよね。ありがとう……」
そう言って、六槍さんが関係者席から出て行った。気がつくと、他の人も帰り支度を始めているし、ホールを出ている人もいる。残っているのは数人だ。その中にはもちろん黒崎もいて、さっきの六槍さんとの会話を聞かれていたのだと知った。それなら助けに来て欲しいと思った。
「なんだよ~、助けに来いよ~。人生相談するところだったんだよ~」
「俺はそばにいた。いつでも助けられる」
「俺が恥をかいてもいいわけ?傷つくことだってあるかも知れなかったんだ。もしかしたら、そういう発言が飛び出してくるかも知れないだろ」
「一貴の秘書だ。そういうことはないはずだ。ナンパは冗談だ」
「ふうん。安心して話していい人って事なんだね……」
黒崎は六槍さんとの会話を止めなかった。ということは、信頼できる人物だということだ。会話の中身はハラハラする感じがあったのに。ナンパだって本気だと思った。
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