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その様子を眺めていると、黒崎が俺の肩に触れた。肩に天使の羽をデザインした模様が付いているからだ。
「これ、気に入ったみたいだね」
「ああ。よく似合っている。悠人君とお揃いか?」
「ううん。聡太郎君と大和にも作ってくれたんだよ。琉芯君にも。来年のツアーで着るTシャツなんだ」
「そうなのか。琉芯君は加入してくれそうか?」
「うん。高校を卒業したら、即契約だよ。そうしないと、けじめが付けられないって、琉芯君が言うからさ……」
「頼りになる子だな。さすがは12歳からステージに出ている子だ」
「うん。俺よりも長いよ。先輩だよ~」
その琉芯はすでに家に帰っている。家が遠いから、帰宅が遅くなってしまうからと、コンサートの前に控え室に来てくれて、コンサートの後で帰っていった。マネージャーはもう付いていて、長谷部さんが担当する。バンドに加入した後は、飯野さんという大ベテランが担当するそうだ。
「すごい子だよ。オンとオフがきっちり分れているんだ。少しぐらい遅くなってもいいくせに、俺達に遠慮して、早めに帰ったんだと思うよ。ほら、琉芯君のことを、みんなに紹介しないといけなくなるだろ。まずは聡太郎君と大和だっていうことみたいだよ。長谷部さんがそう言っていたんだ」
「そうか……」
黒崎が笑った。18歳の子がバンドに加入してツアーを回るということで、最初は驚いていた。しかし、バンド歴が6年あり、大人だらけの世界にまざっていたからなのか、とてもしっかりしている。引っ込み思案で人見知りで、少し乱暴なところがあるなんて、まるで昔の俺のようだ。
そして、心配なことがある。親から期待されて、無理矢理、音楽の世界に連れて来られたという面だ。リズム感が良かったから、ドラムを叩かせたらとても上手で、上達も早かったから、ギターを弾きたがっているのを押しとどめて、ジャズバンドでドラムを経験させている。同級生と遊ぶ約束をしたくても、ステージの練習があるから仲間に入れなくて、悲しい思いをしたこともあるそうだ。だから、本当は音楽をやめたいし、ギタリストにはなってみたいということだ。
「琉芯君さ。一年経ったら、やめるかも知れないなって思っているんだ。親がやめさせないと思うけど……」
「音楽の仕事をやってもらいたいという期待を背負っている。だが、もう本人の自由だ。いいじゃないか。ドラムはまた探せば良い。いや、そういうわけにはいかないか。プロデューサーの立場としては、どう言っていたんだ?」
「久弥はOKだったよ。やってみたら、めちゃくちゃ面白いかも知れないぞって、本人に言ってあるそうだよ。面白いよね。やりたくてやっているんじゃないのに、とても上手だなんて……」
「上手くいかないな。いや、お前達とじゃなくて、本人の希望通りにいかないという意味だ」
「そうだよね。あんただって、秘書の仕事はしたくてやったんじゃないもんね。本当はピアノニストになりたくてさ……」
黒崎のことを思うと、人生はどうなるか分からないと思った。琉芯は建設現場でクレーン車に乗りたいのだと言っていた。しかし、本当は音楽も好きだから、職業を迷っている。そこで、俺達のバンドは仕事だと思って、割り切ってやってもらいたいと、久弥とIKUが彼のことを説得していた。俺は無理矢理は嫌だという意見だ。そういうわけで、琉芯が心を開いてくれて、バンド加入ということになった。
昨日と今日、開明高校の生徒達が控え室を訪ねてくれた。学校はもう落ち着きを取り戻しているそうだ。田中先生もそう言っていたから、ホッとした。3年生達は受験シーズンに入り、少しだけピリピリした空気を作っているが、だめだったらまた次があるという、穏やかな気持ちでいるそうだ。その話を聞いた琉芯が、自分も開明高校に行けば良かったと言って、笑っていた。
「これ、気に入ったみたいだね」
「ああ。よく似合っている。悠人君とお揃いか?」
「ううん。聡太郎君と大和にも作ってくれたんだよ。琉芯君にも。来年のツアーで着るTシャツなんだ」
「そうなのか。琉芯君は加入してくれそうか?」
「うん。高校を卒業したら、即契約だよ。そうしないと、けじめが付けられないって、琉芯君が言うからさ……」
「頼りになる子だな。さすがは12歳からステージに出ている子だ」
「うん。俺よりも長いよ。先輩だよ~」
その琉芯はすでに家に帰っている。家が遠いから、帰宅が遅くなってしまうからと、コンサートの前に控え室に来てくれて、コンサートの後で帰っていった。マネージャーはもう付いていて、長谷部さんが担当する。バンドに加入した後は、飯野さんという大ベテランが担当するそうだ。
「すごい子だよ。オンとオフがきっちり分れているんだ。少しぐらい遅くなってもいいくせに、俺達に遠慮して、早めに帰ったんだと思うよ。ほら、琉芯君のことを、みんなに紹介しないといけなくなるだろ。まずは聡太郎君と大和だっていうことみたいだよ。長谷部さんがそう言っていたんだ」
「そうか……」
黒崎が笑った。18歳の子がバンドに加入してツアーを回るということで、最初は驚いていた。しかし、バンド歴が6年あり、大人だらけの世界にまざっていたからなのか、とてもしっかりしている。引っ込み思案で人見知りで、少し乱暴なところがあるなんて、まるで昔の俺のようだ。
そして、心配なことがある。親から期待されて、無理矢理、音楽の世界に連れて来られたという面だ。リズム感が良かったから、ドラムを叩かせたらとても上手で、上達も早かったから、ギターを弾きたがっているのを押しとどめて、ジャズバンドでドラムを経験させている。同級生と遊ぶ約束をしたくても、ステージの練習があるから仲間に入れなくて、悲しい思いをしたこともあるそうだ。だから、本当は音楽をやめたいし、ギタリストにはなってみたいということだ。
「琉芯君さ。一年経ったら、やめるかも知れないなって思っているんだ。親がやめさせないと思うけど……」
「音楽の仕事をやってもらいたいという期待を背負っている。だが、もう本人の自由だ。いいじゃないか。ドラムはまた探せば良い。いや、そういうわけにはいかないか。プロデューサーの立場としては、どう言っていたんだ?」
「久弥はOKだったよ。やってみたら、めちゃくちゃ面白いかも知れないぞって、本人に言ってあるそうだよ。面白いよね。やりたくてやっているんじゃないのに、とても上手だなんて……」
「上手くいかないな。いや、お前達とじゃなくて、本人の希望通りにいかないという意味だ」
「そうだよね。あんただって、秘書の仕事はしたくてやったんじゃないもんね。本当はピアノニストになりたくてさ……」
黒崎のことを思うと、人生はどうなるか分からないと思った。琉芯は建設現場でクレーン車に乗りたいのだと言っていた。しかし、本当は音楽も好きだから、職業を迷っている。そこで、俺達のバンドは仕事だと思って、割り切ってやってもらいたいと、久弥とIKUが彼のことを説得していた。俺は無理矢理は嫌だという意見だ。そういうわけで、琉芯が心を開いてくれて、バンド加入ということになった。
昨日と今日、開明高校の生徒達が控え室を訪ねてくれた。学校はもう落ち着きを取り戻しているそうだ。田中先生もそう言っていたから、ホッとした。3年生達は受験シーズンに入り、少しだけピリピリした空気を作っているが、だめだったらまた次があるという、穏やかな気持ちでいるそうだ。その話を聞いた琉芯が、自分も開明高校に行けば良かったと言って、笑っていた。
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