青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
194 / 938

8-38

しおりを挟む
 今年に入り、開明高校の入学希望者が一気に増えたそうだ。去年の2倍近い数字だという。心を閉ざした子、周りと馴染めない子、乱暴な子が入学条件だ。もちろん、学力テストもある。しかし、基準に達していなくても、入学させる子もいる。その子は遠くからの入学希望者で、学校の敷地内に建っている寮に入ることになる。そこで仲の良い子が見つかり、前に進んでいく。

 開明高校を卒業後も友達づきあいは続いていき、一生の友達ができるということで、入学希望者が増えたそうだ。俺の方もその理由には納得できる。開明高校の同窓会が開かれるなら、是非とも参加したいと思うからだ。先生にだって会いたい。

「琉芯君がさ。開明高校のこと知らなくて、知っていたら出願したのに!って言っていたんだ。でも、問題児じゃないと入れないんだよって言ったら、どんな学校なの?って聞いてきてさ。聡太郎君も開明だし、うちのお兄ちゃんもそうだよって言ったら、ちっとも曲がっていないじゃないかって言うんだ。それを聞いてさ、たしかにその通りなんだよ」
「伊吹君は桜木君に付きそうっていう出願理由だっただろう。3年間、同じクラスだった。曲がっていないと思うのは、学校が良かったからじゃないか?お前こそ、前を向いているじゃないか」
「まあね。俺は荒れていたからねえ……。昨日なんか、田中先生から、俺の書いた字が読めなくて、何回も頭をひねって答案を採点して、苦労したんだって言ったんだ。俺の書いた作文が学校内に貼ってあるんだって。こんな字を書く奴がいるんだけど、ちゃんと卒業できたんだって言うためにだよ。恥をかいたよ。でもさ、大学の先生達って、負けず劣らず、字が下手なんだ。うひゃひゃひゃ。先生達は俺の字を読めるんだよ~」
「田中先生は悔しがっていただろう。自分しか読めないはずだと……」
「うん。神仙教授の字を見せたら、ビックリしていたよ。なんだこれって。本当は上手に書けるんだけど、あえて書かないんだ。なんかね、そういう主義だそうだよ」
「よく分からない人だな……」

 黒崎が笑ったことで、周りの視線が集まってきた。そろそろお開きというところだろうと。その中には一貴さんがいて、伊吹と向かい合って、何かを話している。2人は笑顔だ。しかし、剣呑な空気もあり、やれやれと思って、ため息が出た。六槍さんの話をした方がいいだろうから、今、伝えることにした。

「お兄ちゃん。さっき、カズ兄さんの秘書の六槍さんと話したんだけど、悪い噂を流したのって、彼なんだって……」
「ああ、島川社長から聞いた。なかなかのやり手だ。俺が気が弱くて頼りないのは本当のことだからな。見抜かれてしまったぞ」
「そうなの?ああ、お兄ちゃんって、そうなんだね。それにしては、ずうずうしいんだけど……。それ、長谷部さんからもらったんだろ?」
「ああ、頂いた。久弥さんのサイン色紙だ。それに、コンサート限定グッズも頂いた。いろいろあるぞ。ほら……」
「大きなエコバッグだね~。貰うつもりで来たんだろ~」

 そう言って、俺は伊吹が椅子に置いてあるエコバッグの中を見た。色んなグッズが入っている。買ったわけではない。IKUから貰ったものばかりだ。会社で飾るのだという。会食の話題にも出すし、テレビ出演のあかつきには、コンサートの感想も話すことにしているそうだ。だから、色々とプレゼントされたらしい。伊吹は物を貰うのが上手な人だ。わらしべ長者というニックネームがついているそうだ。黒崎からそれを聞いている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...