青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 黒崎が俺達のそばに来た後、シャワーを浴びてくると言った。冬になっても、黒崎は毎朝浴びてくる。そうしないと目が覚めないからだという。

「黒崎さん。ちゃんと身体を拭いてきてね」
「ああ、分かった。お前、よく見ているな」
「あんたの腕に水滴がついていたからだよ~。風邪引くよ?」
「行って来る」
「うん」

 俺は黒崎に手を振り、俺達の朝ご飯の支度を始めた。そして、テレビ画面を見た。今朝の天気予報が流れ始めたからだ。今日も明日も天気が良いそうだ。

「良かった~。洗濯物を干せるよ~」

 今日はシーツを洗って干したい。洗濯物干し場は日当たりが良いから、すぐに乾きそうだ。服も干す。乾燥機が便利だが、一気に乾かせる外干しの習慣がついているから、そうなってしまう。タオルも外で干す。パラソルハンガーZという洗濯物干しを使えば、楽々だ。

「お腹が空いてきたなあ~。ららら~」

 今朝の朝ご飯は簡単だ。作り置きのほうれん草のおひたしと厚焼き卵だ。他にも作り置きのおかずを皿に盛るだけだ。炊飯器からはお米の炊けた良い匂いがしている。

「今朝は変わった夢を見たんだよねえ。もしかして、俺、宇宙船に乗ったのかも?うひゃひゃひゃ……」

 思い出すのは、今朝の夢だ。俺は宇宙船に招待されて、室内を案内されていた。そして、ある物の前に立った。それは”のり弁の自動販売機”だった。1個700円だったのを覚えている。印象的だったのは、6個の商品ラインナップのうち、半分がのり弁だったことだ。残りの3個は覚えていない。

「なんで、のり弁なんだろう。伊吹お兄ちゃんが好きなやつだから、もしかしたら、お兄ちゃんも同じ夢を見たかもね……。温めるのは電子レンジだよねえ……」

 夢の続きが見たくなった。俺がその自動販売機を見て驚いたところで目が覚めてしまったからだ。黒崎に話したら、どんな反応をするだろう。俺達は滅多に食べないから、食べようと言うだろうか。

「お弁当と言ったら、幕の内弁当を選ぶもんね。たまには、のり弁もいいかも。黒崎さんのお弁当もそうしようかな?」

 彼のお弁当を作るのは明後日になる。しかし、夢の話をしたら食べようと言うだろうから、今夜の晩ご飯になりそうだ。買ってくるか、作るかだ。家から出ないと言うから、作る方になりそうだ。材料はある。

「ふんふんふんーーー」

 厚焼き卵をお皿に盛り付けた。大根おろしも添えた。そして、しらすを小鉢に盛り、ほうれん草のおひたしや南蛮漬けも出した。それをダイニングテーブルに並べて、後はご飯をお茶碗によそうだけになった。

 カタン。すると、バスルームから音がした。黒崎が出てきたのだろう。少し待っていると、柑橘系のボディーソープの匂いがしてきた後、彼がキッチンに入ってきた。今朝はきちんとTシャツを着ている。彼はいつも上半身裸で出てくるから、冬の間はやめさせた。風邪を引かせるからだ。

「黒崎さーん。良い子だね~」
「ああ、お前がうるさいから着てやった。もう汗をかいている」
「そんなことはないだろ。うん。かいていないみたいだよ。あのさ、今朝見た夢の話をしたいんだけど、聞いてくれる?」
「ああ、もちろんだ。聞かせてくれ」
「うん。あのね……」

 さっそく夢の話をすると、黒崎が笑った。俺の予想通り、のり弁を食べようということになった。外に出かけないから作るというと、買ってきてくれるという。しかも、遠くにある、遠竹さんが美味しいと言っていた店だ。

「いいよ。俺が作るよ~」
「いや、いい。お前はゆっくりしていろ」
「材料が揃っているんだ。冷蔵庫の中を整理したいからさ」
「そうか?」
「うん。ちょうど良かったんだよ」
 
 これで晩ご飯の献立が決まった。黒崎がダイニングテーブルの前に立ち、今朝も美味そうだと言ってくれた。それを聞いて気分が良くなり、ご飯をよそいにいった。
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