青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ダイニングテーブルで黒崎と向かい合い、朝ご飯を食べ始めた。しらすが美味しいと思った。そして、高菜の辛子漬けもご飯によく合う。黒崎も同じ感想であり、一緒にスーパーで選んで良かったと思った。

「あんたと選んで良かったよ。また美味しくないとか言われて、喧嘩になりかねないもん」
「お前が選ばずに、さっさと買い物カゴに入れるからだ」
「だって、忙しいんだもん。あんたと一緒じゃないと買い物に行けないんだし。おかげで買いだめができるけどね。大量に……」
「そうだろう。俺は荷物持ちだ。活用しろ」
「まあね。あんたは力持ちだから、助かっているよ」

 そういうことにして、話を終わらせた。俺はなるべく価格抑えめの商品を買っている。俺達の行くスーパーは美味しい物が多いから、何を買ってもハズレはない。しかし、黒崎はそうではない。好みがうるさくて、新しい物を買うときは面倒だ。新商品を試したくて買おうとしても、黒崎が首を縦に振らないことがある。いつものやつがいいと言うからだ。

「今日の厚焼き卵の味はどうかな?あんたの好きな塩にしたんだ」
「ああ、美味い。塩はこれがいい。やっと前の分を使い切ったのか……」
「ううん。あんたが嫌がるから、お義父さんに貰ってもらったんだよ~。お義父さんは、マズいなんて言わなかったんだよ。いつものやつと同じじゃないかって……」
「前の分は辛かった……」
「そうかなあ。あんた、辛いのが苦手だっけ?好きだよね?」
「ああ、辛い物は好きだ。お前の作る豆腐チゲも美味いと思っている」
「それ、美味しいって言っていたよね。絶賛してくれたね。俺が見ている番組のレシピを使ったんだ。今度、藤沢が出るんだよ」
「そうなのか。意外な組み合わせだな」
「藤沢が彼女のファンなんだよ~」

 その番組とは、動画配信されているやつだ。テレビではない。ある女性が、仮装をして街を歩いたり、料理をしたりしている。実は本人は男性だが、いわゆるニューハーフという人だ。話が面白くて、引き込まれている。藤沢もファンで、彼女と連絡を取り、今度、番組に出ることになっている。一緒に料理をするそうだ。一ノ瀬春那いちのせはるなさんという。

「藤沢さ~。春那さんから、”食べちゃいたい、ペロペロ~”って言われていたんだよ~。今度、藤沢が番組に出るっていう紹介する場面でさ。うひゃひゃひゃ」
「お前、彼女が好きだな」
「だって、面白いんだもん。芸能人のものまねメイクとか、コスプレとか、部屋の片付けとか……。俺も配信中にコメントしてみようかな?美味しそうとか、かっこいいですねとか……」
「やってみると良いと言いたいが、トラブルが起きがちだ。やめておけ」
「やっぱりそう言うと思ったよ~。南波さんの番組には、俺、声だけ登場させてくれるんだろ?」
「ああ、俺は良いが、事務所の返事はどうだったんだ?」
「オッケーだったよ。カップラーメンを食べるところに出ることになったんだ~」

 もうすぐで南波さんが黒崎家の庭でキャンプをする。それは生放送で動画配信される。俺は昼ご飯を一緒に食べるという形で出演し、カップラーメンを食べることになっている。南波さんは都内某所からの生放送だと告知しているが、森の中のように思われるだろう。お義父さんの家や、うちの家は映さない。どこなのか当ててもらうためだ。

「当たる人、いるかな?この家がネットに載っていたそうだよ。長谷部さんが言っていたんだ~」
「それはそうだろう。取材陣が来ていたことがある」
「そうだね。懐かしいよ。そう思えるのがいいね……」

 思い出すのは、俺達がデビューして間もなくの頃のことだ。俺が黒崎製菓の社長の養子だと分かり、取材が入っていた。突然のことだった。同性がパートナーだということで、珍しいと思われたのだろう。
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