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黒崎が、俺達の前にあるテーブルの上に、ブローチの入った箱を置いた。それは長方形のそこそこ大きさのある箱であり、いくつか入っているのだろうと思った。そして、その箱を彼が開けると、繊細な細工が施された物が見えた。
「わーー、綺麗だね!縄文時代のやつ?」
「ばかやろう。80年ぐらい前の物かも知れない。いつの間にか、この倉庫の中に置いてあった。親父の祖父が置いたんだろうということだ。純白叔母さんが祝いの席で身に付けたことがあるそうだ。一番端の、アンバーの石が入ったブローチだ」
「ふうん。黒崎製菓の副社長就任のお祝いの席だったんだねえ。……その席には、拓海さんは秘書として参加していたんだよね?」
「ああ、その数年後に、兄さんが副社長に就任した。たった半年間になったが……」
純白叔母さんとは、お義父さんの妹のことだ。俺達が住んでいる家の元の持ち主だった。副社長を退いた後、黒崎家の集まりには一切出ず、交流を絶っていたそうだ。家庭菜園を営み、時々訪ねてくるお義父さんとお茶を飲んでいたという。拓海さんが親しくて、晴海さんも可愛がって貰ったそうだ。
黒崎がこの家に来たときは、全然会ったことがないという。もしかしたら、知らないうちに会っていたのかも知れないとは言っている。黒崎が好きな夏椿の花の絵を描きに叔母さんの家の近くまで行った時、話しかけられたかも知れないそうだ。その時は大きな噴水が置かれていて、黒崎は近づいてはならないと言いつけられていたから、ますます叔母さんと会う機会がない。
どうして会わなかったかというと、叔母さんが黒崎のことを可愛がることで、黒崎に親戚達の注目が集まってしまうのを避けるためだったそうだ。ただでさえ、本妻の瑛子さんがお義父さんと離婚して家を出て行き、その数年後にママと黒崎がこの家に引っ越してきた。お義父さんが黒崎を息子だと認めたということだ。
いや、息子には違いなくて、一緒に暮らすのはちっともおかしくないが、本妻以外の間に生まれた子に黒崎姓を名乗らすのは珍しいことだったから、拓海さん、晴海さんに続く跡継ぎとして認められたという風に言われて、黒崎の命が危なかったという。誘拐が考えられたという。しかも、小さい頃の黒崎は身体が弱くて、大人しかったから、ひっそりと育てられたということだ。主に拓海さんが教育を担当し、身の回りの世話はお手伝いさんがしていた。ママはお義父さんと出かける日々が続いていた。遊んでいたわけではない。妻として覚えることや、会う人が多すぎて、黒崎と過ごす時間が無かったのでないかと、俺は思っている。
しかし、お義父さんは俺にこう教えてくれた。黒崎は跡取り息子の一人には違いなくて、親と引き離し、一番信頼できる人物に教育を任せるのが黒崎家の教育だったということだ。だから、それには拓海さんが選ばれた。では、拓海さんの教育は誰がしたのかというと、適任者がいなくて、お義父さんがしたという。晴海さんも同じだった。それはもう厳しかったのだろうと想像が出来る。瑛子さんが拓海さん達のことを庇おうとすると、お義父さんが、お前は引っ込んでいろと言ってしまったという。晴海さんがいまだに恨みに思っているし、夢でうなされるのだと、冗談っぽく話してくれた。
「ねえ、ユーリー。あんたの瞳の色に似ている石だと思わない?綺麗なブルーだよ」
「そうか、そう言ってくれるのか。夏樹は可愛いな」
「黒崎さーーん。ヤキモチを焼けよ~」
「そんなわけあるか。ユーリー、こっちにはお前の好きな緑色の石があるぞ」
「はははは。弟には手を出さないよ……」
そう言って、ユーリーがまずは青い石の入ったブローチを手に取った。年代物だろう。誰も身に付けなくなって、何年経っているのだろうか。すっかり男ばかりになるとは、昔の黒崎家の人達は想像していただろうか。
「わーー、綺麗だね!縄文時代のやつ?」
「ばかやろう。80年ぐらい前の物かも知れない。いつの間にか、この倉庫の中に置いてあった。親父の祖父が置いたんだろうということだ。純白叔母さんが祝いの席で身に付けたことがあるそうだ。一番端の、アンバーの石が入ったブローチだ」
「ふうん。黒崎製菓の副社長就任のお祝いの席だったんだねえ。……その席には、拓海さんは秘書として参加していたんだよね?」
「ああ、その数年後に、兄さんが副社長に就任した。たった半年間になったが……」
純白叔母さんとは、お義父さんの妹のことだ。俺達が住んでいる家の元の持ち主だった。副社長を退いた後、黒崎家の集まりには一切出ず、交流を絶っていたそうだ。家庭菜園を営み、時々訪ねてくるお義父さんとお茶を飲んでいたという。拓海さんが親しくて、晴海さんも可愛がって貰ったそうだ。
黒崎がこの家に来たときは、全然会ったことがないという。もしかしたら、知らないうちに会っていたのかも知れないとは言っている。黒崎が好きな夏椿の花の絵を描きに叔母さんの家の近くまで行った時、話しかけられたかも知れないそうだ。その時は大きな噴水が置かれていて、黒崎は近づいてはならないと言いつけられていたから、ますます叔母さんと会う機会がない。
どうして会わなかったかというと、叔母さんが黒崎のことを可愛がることで、黒崎に親戚達の注目が集まってしまうのを避けるためだったそうだ。ただでさえ、本妻の瑛子さんがお義父さんと離婚して家を出て行き、その数年後にママと黒崎がこの家に引っ越してきた。お義父さんが黒崎を息子だと認めたということだ。
いや、息子には違いなくて、一緒に暮らすのはちっともおかしくないが、本妻以外の間に生まれた子に黒崎姓を名乗らすのは珍しいことだったから、拓海さん、晴海さんに続く跡継ぎとして認められたという風に言われて、黒崎の命が危なかったという。誘拐が考えられたという。しかも、小さい頃の黒崎は身体が弱くて、大人しかったから、ひっそりと育てられたということだ。主に拓海さんが教育を担当し、身の回りの世話はお手伝いさんがしていた。ママはお義父さんと出かける日々が続いていた。遊んでいたわけではない。妻として覚えることや、会う人が多すぎて、黒崎と過ごす時間が無かったのでないかと、俺は思っている。
しかし、お義父さんは俺にこう教えてくれた。黒崎は跡取り息子の一人には違いなくて、親と引き離し、一番信頼できる人物に教育を任せるのが黒崎家の教育だったということだ。だから、それには拓海さんが選ばれた。では、拓海さんの教育は誰がしたのかというと、適任者がいなくて、お義父さんがしたという。晴海さんも同じだった。それはもう厳しかったのだろうと想像が出来る。瑛子さんが拓海さん達のことを庇おうとすると、お義父さんが、お前は引っ込んでいろと言ってしまったという。晴海さんがいまだに恨みに思っているし、夢でうなされるのだと、冗談っぽく話してくれた。
「ねえ、ユーリー。あんたの瞳の色に似ている石だと思わない?綺麗なブルーだよ」
「そうか、そう言ってくれるのか。夏樹は可愛いな」
「黒崎さーーん。ヤキモチを焼けよ~」
「そんなわけあるか。ユーリー、こっちにはお前の好きな緑色の石があるぞ」
「はははは。弟には手を出さないよ……」
そう言って、ユーリーがまずは青い石の入ったブローチを手に取った。年代物だろう。誰も身に付けなくなって、何年経っているのだろうか。すっかり男ばかりになるとは、昔の黒崎家の人達は想像していただろうか。
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