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庁舎の中に入るとすぐに総合案内所があり、戸籍届出は108番窓口だと説明を受けた。このまま直線で歩いて行き、右側にあるという。夏樹の届け出の時に来て以来だ。当時と場所は同じだと思い出した。
「わあーー、ドキドキするよ~。あ、こんにちはーーー」
夏樹が歩き出すと、来庁者から次々とナツキだという声が聞こえてきた。コンサートの前後では、随分と多くのテレビで宣伝をさせて貰ったからだろう。それに、心霊番組のナレーションを担当する話が出た後、その番組に出ないかという声も掛かり、そのため、そのテレビ局では、TDDの次のバンドの宣伝を掛けてくれている。
夏樹が手を振ったり笑顔を向けたりして、一時は人だかりができて、立ち止まることになってしまった。今日は家族の手続きで来たんですと夏樹が言うと、みんな笑顔になったり、心配する顔になったりした。ここには様々な用件で訪れているのだろう。
「ありがとうございましたーーー」
夏樹がペコッと頭を下げて声を掛けてくれた人達から別れて、奥に向かった。すると、目的の窓口番号が見えてきた。夏樹が先に歩いて行き、俺達に手を振った。ここだよと。
「お前、今日は元気だな」
「いいじゃん。はしゃいでも。どうせ、2人とも、泣くんだろ?俺は泣かないからね」
「泣くわけあるか。二葉、椅子に座れ」
「うん。すみません。届け出をしたいのですが……」
二葉が窓口の椅子に座り、バッグの中から届け出用紙を取り出した。既に記入済みだ。それと、必要書類も取り出した。俺達は手続きを始めた姿を見て、ため息をついた。ここに来るまでに事故が起こることや、誰かが高熱を出すことなどが想定されたからだ。黒崎家にはそういうことが起きる。夏樹の時はスムーズだったから、父が驚いていた。さて、二葉の場合はどうだろうか。
「黒崎さん。大丈夫だよ。帰り道も安全運転にすれば良いよ」
「ああ。帰りはまっすぐ帰るんだったな?本屋に連れて行ってやるぞ」
「いいんだよ。何かあるといけないもん。怖い話だよね~。家族の誰かが住民票を移したり、引っ越しを考えたりした時に、怪我をしたり、高熱で動けなくなったりするなんてさ~。カズ兄さんも、そうだったよね。前に住んでいたマンションは気に入っていたんだけど、猫が飼えないからって、引っ越しをしようと考えていたら、会社の階段で転んで骨折して、お義父さんの家に引っ越してきたんだ……」
「おかげで退屈しない。本当に変な兄貴だ……」
俺は今朝の一貴のことを思い出して、眉間に皺が寄る思いだ。想いを寄せている藤沢に向けて、詩を書いたそうだ。それを夏樹に見せに来た。昨夜の俺達の留守の間に書いていたそうだ。珍しく藤沢と連絡が取れて、有頂天になって思いついた、彼に贈る詩だそうだ。夏樹は歌詞を書くし、絵本のコラムの連載もしているからと言い、まずは君が見てくれと言っていた。
その詩は、妄想が起きて眠れないという内容だった。寝る前になると君の事が思い浮かび、君から素っ気なくされたり、過去のトラウマが蘇ったりして苦しくなり、そんなときに君がいれば良いのにと思うという内容だった。以前からそうなのだという。それを聞いた医者からは、そういう時は外を歩くなどの気晴らしをするといいと言われてそうしてみたが、君の入浴シーンが思い浮かび、そわそわしてしまう。そんなことを書いていた。こんなもの見せたら終わりだろうと言ってやった。
夏樹は優しいところがあるから、はいはいと言って、最後まで読んでやっていた。突っ込みどころが多かっただろう。一貴こそ、姓を変えた方が良いような気がした。これは俺の”悪口”だ。本当はそうしない方が良いだろうと思っている。島川一貴という名前で、プラセルを背負ってきたからだ。
「わあーー、ドキドキするよ~。あ、こんにちはーーー」
夏樹が歩き出すと、来庁者から次々とナツキだという声が聞こえてきた。コンサートの前後では、随分と多くのテレビで宣伝をさせて貰ったからだろう。それに、心霊番組のナレーションを担当する話が出た後、その番組に出ないかという声も掛かり、そのため、そのテレビ局では、TDDの次のバンドの宣伝を掛けてくれている。
夏樹が手を振ったり笑顔を向けたりして、一時は人だかりができて、立ち止まることになってしまった。今日は家族の手続きで来たんですと夏樹が言うと、みんな笑顔になったり、心配する顔になったりした。ここには様々な用件で訪れているのだろう。
「ありがとうございましたーーー」
夏樹がペコッと頭を下げて声を掛けてくれた人達から別れて、奥に向かった。すると、目的の窓口番号が見えてきた。夏樹が先に歩いて行き、俺達に手を振った。ここだよと。
「お前、今日は元気だな」
「いいじゃん。はしゃいでも。どうせ、2人とも、泣くんだろ?俺は泣かないからね」
「泣くわけあるか。二葉、椅子に座れ」
「うん。すみません。届け出をしたいのですが……」
二葉が窓口の椅子に座り、バッグの中から届け出用紙を取り出した。既に記入済みだ。それと、必要書類も取り出した。俺達は手続きを始めた姿を見て、ため息をついた。ここに来るまでに事故が起こることや、誰かが高熱を出すことなどが想定されたからだ。黒崎家にはそういうことが起きる。夏樹の時はスムーズだったから、父が驚いていた。さて、二葉の場合はどうだろうか。
「黒崎さん。大丈夫だよ。帰り道も安全運転にすれば良いよ」
「ああ。帰りはまっすぐ帰るんだったな?本屋に連れて行ってやるぞ」
「いいんだよ。何かあるといけないもん。怖い話だよね~。家族の誰かが住民票を移したり、引っ越しを考えたりした時に、怪我をしたり、高熱で動けなくなったりするなんてさ~。カズ兄さんも、そうだったよね。前に住んでいたマンションは気に入っていたんだけど、猫が飼えないからって、引っ越しをしようと考えていたら、会社の階段で転んで骨折して、お義父さんの家に引っ越してきたんだ……」
「おかげで退屈しない。本当に変な兄貴だ……」
俺は今朝の一貴のことを思い出して、眉間に皺が寄る思いだ。想いを寄せている藤沢に向けて、詩を書いたそうだ。それを夏樹に見せに来た。昨夜の俺達の留守の間に書いていたそうだ。珍しく藤沢と連絡が取れて、有頂天になって思いついた、彼に贈る詩だそうだ。夏樹は歌詞を書くし、絵本のコラムの連載もしているからと言い、まずは君が見てくれと言っていた。
その詩は、妄想が起きて眠れないという内容だった。寝る前になると君の事が思い浮かび、君から素っ気なくされたり、過去のトラウマが蘇ったりして苦しくなり、そんなときに君がいれば良いのにと思うという内容だった。以前からそうなのだという。それを聞いた医者からは、そういう時は外を歩くなどの気晴らしをするといいと言われてそうしてみたが、君の入浴シーンが思い浮かび、そわそわしてしまう。そんなことを書いていた。こんなもの見せたら終わりだろうと言ってやった。
夏樹は優しいところがあるから、はいはいと言って、最後まで読んでやっていた。突っ込みどころが多かっただろう。一貴こそ、姓を変えた方が良いような気がした。これは俺の”悪口”だ。本当はそうしない方が良いだろうと思っている。島川一貴という名前で、プラセルを背負ってきたからだ。
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