青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そこで、朝陽がこう言いだした。今の大学には入学金を支払っており、無駄になってしまうと。大学に合格したら、また新たに入学金と授業料が必要だ。一体どうするのかという。それは解決済みだと言える。ママが出すことになった。昨日、その話をママとしているときの黒崎は口が悪くて、さっさと倉口さんに家を売らせて金を作らせろだとか、今のうちにママ名義の死亡保険を増やしておけとか話していたのを聞いた。そして、一貴さんが朝陽に、今、それを言ってしまった。

「え?お母さんが出すって?金があるんだろう、出せって、お兄ちゃんが言ったんですか?」
「ああ。そうだよ。家を売らせておけとか、お母さんが亡くなったら、死亡保険金で費用が出来るとか言っていたんだよ。とんでもないお兄ちゃんだね」
「もうーーー、朝陽がショックを受けたじゃん~」

 もう朝陽は聞いてしまった。純粋な面があるからショックを受けているだろう。いくら女の子と遊び回っていたとはいえ、まだ子供の面がある。それは俺だって同じだ。しかし、朝陽は一貴さんの元で鍛えられたようで、そうですかと、項垂れた。反抗はしないそうだ。

「朝陽、働き出したら、お母さんを助けたら良いんだよ」
「うん……。お父さんのことも……」
「へえーー、大嫌いなお父さんじゃないのか?」

 一貴さんが朝陽の顔をのぞき込んだ。そして、泣いていないのが分かり、つまらないと言い出した。何て人なのだろうか。しかし、朝陽の高校の先生から振り込まれた4万円のことは口に出さなかった。朝陽にはストレスが掛かっている。父親が高校の先生なのかも知れないというのが本当かも知れないと、この間知ったばかりだ。もちろん、連絡先は分かっている。今も同じ高校に居ることも。

 DNA鑑定をすることになったら、先生ともするのだろうか。先生はしたがっているそうだ。ママがそう打ち明けた。先生が朝陽を見て、自分の子供ではないかと言い、振り込みを続けているのだという。そして、ママのことがまだ好きだと告白してきたことも聞いた。

 黒崎はずっと振り込みを続けさせているママのことを嫌がったし、DNA鑑定が先だろうと怒っていた。倉口さんにバレたくないからだとママが正直に言い、そこが分からないと、黒崎が言い返していた。朝陽が赤ちゃん頃はまだDNA鑑定がそんなになかったそうだ。父がそう言っていた。今では私的鑑定といって、郵送で申し込める。結果が分かるのは、1週間ぐらいが最長だという。なんと、24時間で結果が分かるサービスもあるらしく、流行っているのかと驚いた。

 これでいつでもサンプルを採取し、鑑定が出来ると分かった。その後にあるのは、話し合いだ。朝陽が倉口さんの子供では無かった場合の慰謝料や養育にかかった費用のこと、朝陽の父親との付き合い方のことなどだ。黒崎はこう言っていた。譲った土地と家で十分、倉口さんへの慰謝料と養育費の代わりになるだろうと。家はママの財産で建てた物だからだ。離婚の時に倉口さんに譲らせたのは、手切れ金代わりだということと、すんなり受け取る男なのだと、ママに教えるためだったという。譲られるのを断れば、倉口さんはしっかりした人なのだと思えたそうだ。

(ママ、そうだろう?そういう男だ。分かったか?黒崎さん、そう言っていたな……)

 別れた当時はママは倉口さんの元に帰ろうとしていた。例え暴力を受けてもだ。今はそうでもない。都内に引っ越してきた後、10歳年下の役員の男性と付き合っていたし、今は23歳年下の38歳の彼氏候補がいる。時々デートをしていると言っていた。相手にはされていないんだけどと言いながらも、好きなんだと言っていた。黒崎としては、ママには幸せになって貰いたい気持ちがある。朝陽と二葉は心中複雑だそうだ。ママが次々と交際相手を作るということに対してだ。

 それに対して、黒崎は2人にはっきりと言っていた。お母さんは若い男が好きなんだと。お義父さんは年上だから例外だが、だから、同じ年の倉口さんと逃げたんじゃないかとまで言った。そして、女好きも男好きも、死ぬまで治らないから諦めろと言った時、2人が吹き出して笑いだして、俺はホッとした。
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