青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺とユーリーは画面に映らない場所に立ち、組み立てられていくテントと南波さんのことを見つめ続けた。そして、あっという間に出来上がり、その華麗な手さばきに感動した。そして、リビングのようになっている場所でテーブルと椅子を置いた。そこでは何をするかというと、英語の勉強をするのだそうだ。また大学に行きたいのだと聞き、ユーリーと同じだと思って驚いた。

「この人も同じなんだよ。また勉強をしたいんだって……」
「はははは。ユリウスさんは本当に行くんだろう。僕の場合は、沈みがちな気分を紛らわしくて、何か目標が欲しいなっていう気持ちで勉強しているんだよ」
「そうなんだね……。大丈夫?気分って……」
「俺ね、少しだけ……、鬱っぽい時があるんだよ。やば!って思って、何とかしようって思って動いているんだ。何かをしていないといけない気分になるんだよ」
「そういう時は寝た方が良くない?」
「ううん。動いていた方が楽なんだよ。あ、ユリウスさん。ありがとうございます!」

 ユーリーが近くにあったハンカチタオルを南波さんに渡した。涙ぐんでいるからだ。その姿は画面に映っていて、つらいよねとか、僕も同じだよというコメントが流れていった。この涙はどの気持ちのものだろうか。かつて好きだった人との思い出を振り返っている涙なのか、色んな事で疲れが出てきてしまった涙なのか。

「はははは。恥ずかしいなあ。ええ?15000人も見ているんだね!カウンターが見えていなくって……。いつも500人ぐらいなんだけど……。もっと夏樹君を出してとかのリクエストはないかな?」
「ううん。南波さんを見たいんだと思うよ。ずっと見ているよって書いてくれているよ……」

 泣かないで。そういうメッセージが流れ始めた。そこで俺は何か食べて貰うことにした。お昼前からの放送だから、お互いに、朝ご飯の時間を遅くして食べている。しかし、そろそろお腹が空いたのではないだろうかと思った。

「南波さん。これ食べてよ。コンビニで買ってきたバウムクーヘンなんだけどね。美味しいんだよ……」
「ありがとう!見たことあるよ。314カロリーだなんて、ホワイトデーみたいな数字だね。うっうっ」
「どうしたんだよ~?」
「ごめん、夏樹君!ユリウスさん!僕ね、さっき話した好きだった友達に彼氏が出来たんだ!今年のバレンタインデーに告白されて、ホワイトデーのお返しをした日から付き合うことになったんだ。僕に一番先に報告してくれたんだよ。その友達が、気になっていた人なんだよ……」
「ああーーー、そっかーーー……」
「だから、今年のクリスマスは僕とじゃなくて、その人と過ごすんだ。そうなるよね。今までは僕とだったのに……」
「ああーーー、泣いちゃえ!」

 俺は南波さんのことを抱きしめた。放送で聞こえているようで、知っていたよという言葉が流れた。今銀いまがね君のことだよねという言葉もあった。放送に出ていたということだと分かった。

 その彼がこの放送を見ていたら、驚くだろうか。しかし、もう流れてしまった。そして、ユーリーも好きな人が遠くに行った過去があるから、しんみりした顔になっている。

「南波君。僕も同じなんだ。好きだった人に彼氏が出来たんだよ。遠く離れたアメリカだから、幸せそうな姿を間近で見ていないから、嫉妬に狂うことはないんだけどね。でも、泣きたい気持ちはあるんだよ」
「ああ、ユリウスさん……」

 俺は南波さんの身体を離し、ユーリーに抱きしめさせた。色んな人の温もりが必要だ。ユーリーだって癒やしが必要だ。そして、二人が抱きしめ合っている姿を眺めながら、このバウムクーヘンを買ったいきさつを話すことにした。ちょっとしたアクシデントだ。笑って貰えると良い。
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