青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 すると、もう一人のユリウスことユーリーが、南波さんに絡み始めた。しっかりと番組に映っている。最近はどうなのとか、社内で君の取り合いになった騒動が起きたそうじゃないかと、黒崎から聞いたという話をし始めた。

 それをしたのは、お義父さんがユーリーのことを南波さんに紹介しようとしたからであり、まだ社内では落ち着いていないから、まだそういう気持ちになれないだろうと思ってのことだった。そして、それをしっかり聞いていたくせに、ユーリーが南波さんに絡んでいる。それには黒崎が反応し、やめておいてくれと言った。

 しかし、ユーリーは楽しそうにしていて、話題を変えようとしない。そこで、黒崎がそばに行って止めるしかなくなり、画面に映った。すると、画面が沸いた。やっぱり黒崎が出ると違うようだ。威圧感たっぷりだから、見たらびっくりしそうなのに、なかなか好評のようだ。

「なんていう名前ですか?っていう質問があるよ。ここには黒崎さんが沢山居るからねえ。圭一だよって紹介したら?」
「夏樹。やめておいてくれ。ユーリー、何をするんだ」
「いいじゃないか。はははは。皆さん、この人は圭一です。南波君の上司だった人で、この家の息子の一人です……」
「ユリウスさん。もっとこっちに来て映って下さい……」

 ユーリーが黒崎のことを引き寄せていたから、ユーリーが全然画面に映っていなかった。そういうわけで、二人が並び直し、もう一度黒崎のことが紹介された。すると、見たことがあるというコメントが流れた。黒崎ホールディングスという、懐かしい会社名が流れた。

 すると、黒崎がユーリーから離れて、俺のところに戻ってきた。そして、さっきの人はどこに行ったのかという言葉がいくつも流れていき、黒崎にリクエストが入ったことが分かった。

「黒崎さん。もっと映ってきたらいいのに……」
「いや、俺はいい。遠慮しておく。良い感じじゃないか……」
「え?」
「南波とユーリーだ。一目会ったときから気が合っていたようだぞ」
「そっか、あんたから見るとそうなんだね……」

 俺は寄り添うようにして画面に向かっているユーリー達を見つめた。俺はこういうことに鈍いから、黒崎の言うとおりなのだと思った。そして、南波さんがたくさんの質問を受け始めた。黒崎のことは、どんな上司だったのかということや、黒崎製菓なんだよね?といったものだ。

 それには答えられないと言った南波さんだったが、もう分かっている人が多いと思うぞと黒崎が言うと、黒崎製菓に勤務しているよと打ち明けた。悠人がキシヤマ味噌のインスタントの用意をし始めたのが後ろに映っていて、しっかり宣伝している。そうなると、黒崎製菓という会社名が浮かぶそうだ。そんなことを書いているコメントがあった。TDDのスポンサー企業同士だと知っている人だ。

「ユリウスさん。恋人はいないのかという質問ですが……」
「それがいないんだよ。恋をしている人は遠くに行っていて、しかも、長年付き合っている人が居るんだ。え?僕たち、付き合ったら良いって?お似合い?そうかな?」
「はははは!“初めて会ったんですか?”って。そうだよ。ユリウスさんとは、はじめましてだったよ。僕が池に落ちたときに助けてくれたんだ」
「南波君。どうか、僕のことはユーリーと呼んでくれ」
「それはいけません。年上の方ですから……」
「そうか?そう……」

 ユーリーがフラれたと言い出して、南波さんが慌てた。さっきは彼の方がフラれた感じだったのに。そこで、ユーリーが南波さんの方を向くと、南波さんの顔が赤くなった。そして、綺麗な瞳の色ですねとつぶやいた。

「そう?実家のバーテルス家に多い色なんだ。弟は父親似で、緑色なんだけどね……」
「綺麗なブルーです。いいなあ……。憧れます……。え?」
「あ……」

 チュ。そんな音が鳴ったかと思った。ユーリーが南波さんのおでこと頬にキスをしたからだ。そして、ニコッと笑って、南波さんのことを見つめた。

「あの……、ユリウスさん……」
「君のこと、好きになったみたいだ」

 冗談でもなさそうな様子のユーリーの一言に、南波さんが顔を真っ赤にして、キスをされたおでこに手を当てた。コメントには、良い感じとか、ヒューーとか、あら、よかったわねという言葉が流れた。

 俺達はというと、まるで時間が止まったかのように二人を見つめ続けた。そして、長谷部さんから久弥が到着したという知らせを受けて、門の方へ行くために立ち上がった。その間も、みんな静かに、ニコニコと笑っているユーリーと、真っ赤な顔のままの南波さんのことを見つめていた。
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