青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 16時。

 カップラーメンにお湯を注ぎ入れた後、テントの前に座り、スマホカメラに背を向けた。隣にはインスタント味噌汁のカップを持っている悠人が居る。そして、南波さんがカメラに向かって話し始めて、夏樹君と悠人君が登場だよと紹介してくれた。

 さらに、キシヤマ味噌からのゲストということで、月島さんのことも紹介された。本当は一緒に登場して欲しかったが、まずは俺達が出ないといけないということで、後から出てくれることになった。その月島さんはお義父さんの隣の椅子に座り、どうもどうもと腰を低くして、みんなに挨拶を始めている。ついさっき、到着したところだ。

「月島君。どうぞお茶を飲んでください。喉が渇いたでしょうし、外は寒かっただろうから……」
「黒崎社長、ありがとうございます!どうもご無沙汰しています。ああ、社長では無かった。黒崎さんとお呼びしてよろしいでしょうか……」
「もちろんです。今日は息子たちもいます。一貴とは初めて会ったのではなかったですね。圭一とはすれ違いだったそうですね」
「ええ、そうです。今日はお会い出来ると聞きまして、緊張しています。いやーー、急に来ておいて、恥ずかしいです。しかしながら、生放送という経験をしたくなりましてね。キャンプに、うちの商品を持ち込んで頂けるなんて……。うっうっ」
「泣かないで下さい。南波君は味噌汁好きで、会社でもよく飲んでいました。味噌といえばキシヤマさんです。そうだろう?南波君……」

 お義父さんからの声かけにより、南波さんが立ち上がり、ニコッと微笑んだ。月島さんも微笑んだ。黒崎と名刺を交換しながら一貴さんから声を掛けられて、あれこれと忙しそうだ。

「はい!黒崎製菓でも味噌汁を出すといいと思っていました!」
「そうか。そうだろうとも。しかし、こんなに強力なライバルがいる。とても叶わない」
「そうでした!こんなに美味しい味噌汁があるんですから!」
「その通りだ。今日はキシヤマ味噌一筋の月島さんが来て下さった。番組が華やかになる」
「はい!」

 南波さんがもう一度笑ったことで、月島さんが満開の笑顔になった。そして、とても美しい声をしていると言い出した。さらに、ダボダボのニットとズボン姿でどうしたのかと言った。何かあったのだろうと。それには一貴さんが説明を始めた。自分が池に片足を突っ込んでしまい、助けてくれようとした南波さんを巻き添えにして落ちて、ずぶ濡れになったのだと。そういうわけで、自分の服を着て貰っているのだと言った。もう洗濯は乾燥まで終わっているが、よく似合っているからと、そのまま着てもらっている。持って帰ってくれと、一貴さんが言っていた。

「そうでしたか。大変でしたね。冷たかったでしょう」
「いやーー、あの時は驚きの方が勝っていて、温度は感じませんでした。南波君には僕の隣の部屋にあるバスルームでお風呂に入ってもらいましてね……。僕も一緒にと思ったんですが、圭一から止められましてね……」
「はははは。裸の付き合うということですか」
「ええ。僕が責任を持って、彼の背中を流そうと思っていました。しかし、僕はそそっかしいところがありまして、何か重ねてトラブルを起こしてはならないということで、別々に入ったわけです……」
「はははは……」

 一貴さんが南波さんと一緒にお風呂に入りたかったとえらく強調するからなのか、月島さんが小さく笑った。変態だと思われたのだろう。ついさっきカップルになったユーリーが聞いたら怒るかも知れない。そのユーリーは今、月島さんのために、絵本を取りに部屋に戻っている。今月の新作絵本だ。

 キシヤマ味噌では、黒崎製菓のようにアーティスト支援をしたくて、色々と企画会議を重ねているところだという。しかし、お義父さんが支援団体に入って活躍中だということで、自分たちの会社では、絵本のことをしようかと思っているそうだ。
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