青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 一貴さんの電話は続いている。俺達は外に出ていようかと話した。落ち着かないかも知れないからだ。すると、一貴さんが電話を終えた。そして、ニコッと微笑んだ。家に居るときの顔だ。

「カズ兄さん。もういいの?」
「いいよ。プラセルにも攻撃が来ていると、六槍君から電話が入ったんだ。今日の午前10時と、15時だ。修輔君は何も問題ないけど、さっきの電話で話していたとおり、sutaba0000からのアクセスがあったそうだ。僕が週刊誌の記事に出たことがあるから、二葉の勤務先が黒崎製菓だって分かったんじゃないだろうか。そこまでは知らなくても、兄貴がそうだって分かっただろう」
「俺の記事もあると思うよ。カズ兄さんの記事には、家の門の写真は載っていなかっただろ?」
「そうだったなあ。僕はここに住んでいるっていうを書かれた記事だった。父親と住んでいますということも書いていたけど、そんな記事、どうするのか聞いたら、載せることになっていますって言われたんだ」
「ふうん……。たしか、伊吹お兄ちゃんと黒崎さんだったよね?カズ兄さんがここに住んでいるって書いて貰おうとしたのって……」
「ああ。その通りだ。おかげで通販サイト運営会社の社長が仲良くしようって言ってきて、僕にはそういう人しか近づいてこないんだって思ったんだ。伊吹君をいじめた人だ」
「うん。カズ兄さんもね……」

 人のことは言えないだろう。そんなことを言いたかったが、一貴さんが妙にウキウキした顔をしているから、なんだか嫌な予感がした。

「ねえ。今、何を思っているの?」
「これは戦いだって思ったんだ。僕に任せてくれ。これでも僕は業界から嫌われている男だ。二葉のことを励ましておく」
「……」

 俺達3人は静まりかえった。一貴さんが任せてくれという時は、あまり良い結果にならないことが多い。それに、黒崎は二葉のことを伊吹に紹介し、師匠と弟子という関係を結ばせてある。その師匠である伊吹としては、うちにおまかせすると言っていた。そこで、お義父さんか黒崎か、他の誰かか全員かで彼女のことを応援するすれば良いのだが、一貴さんがやっぱりウキウキした顔でいるから心配になった。

「二葉になんて言うの?」
「一度逮捕されたからって、どうって事は無いと言っておく。今回は友達が逮捕されたわけだけど、すぐに釈放されるだろうし、またやらないとは限らない。だから、色んな意味で、どうって事はないと言っておきたいんだ」
「自分が逮捕されるかもっていうときは泣いていたくせに……」

 ほんの数日前のことを俺達は忘れていない。一貴さんが言いたいのは、またあるかも知れないから、しっかりしろということなのだろう。そして、ウキウキしているのは、滑りこけた敵を見てのことなのだろう。

「カズ兄さん、嬉しいんだろ?」
「そんなことはないよ。大変なことだ。でも、友達づきあいは終わりを迎えることが出来る。これからは良い人しか寄ってこないと思えば良い。悪いことがあれば、良いことが起こるという仕組みだ。逆もある。ここの住所を知ったのは、どうしてかな?」
「今橋さんっていう友達なんじゃないかなって思っているんだ。志乃ちゃんは言っていないって、電話で言っていたよ。今橋さんじゃないかもしれないけど。どこでどう繋がってこうなったかなんて、犯人に聞かないとさ……」
「その子からは連絡は?」
「まだなかったよ。二葉のスマホを見せてもらったんだ。全然、連絡が入ってこないよ。こっちからしなくても良いと思っているんだ」
「なるほど。二葉が黒崎製菓で働いているとまでは知らなかったかも知れないな。いや、電話で問い合わせることができるか。倉口二葉さんに繋いでくださいと言えばいい。これで勤務していることが分かる」
「そうだな……」

 黒崎がため息をついた。そして、こうまでして攻撃してくる気持ちというのは、どこから沸いてくるのかというため息だと言った。俺達も同じで、はあっと息を吐いた。
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