青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 黒崎が好きな珈琲豆を使って煎れようと思って、棚から珈琲豆を取り出した。ここには家族の好みに合わせて、色んな豆や紅茶葉、緑茶類が置かれている。一貴さんが引っ越してきた時は棚はスカスカだったのに、だんだんと種類が増えてきて、ぎっしりと詰まっている。それぞれの部屋にも置いてあるはずだから、一カ所にまとめると量が多そうだ。

「これがカズ兄さんの好きなほうじ茶なのか……。黒豆茶って書いてあるんだけど……」

 たしかに一貴さんはほうじ茶だと言っていたのに違うと思ったが、まあいいかと思い、その茶葉を片付けた。そして、ドリップコーヒーを用意した。

「ふんふんふんふん~。さあ、お湯を注ごうっと……。コーヒーの良い匂いがするなあ。コーヒーメーカーで入れても良い匂いだし、こうして手で煎れても良い匂いだし、落ち着くなあ……。もし六槍さんが来てくれるなら、朝陽も一緒かな?だったら、何か用意しておかないとなあ……」

 今日ははクリスマスイブだが、ご馳走は用意していない。ケーキもない。さすがに寂しいだろうか。この間は出前のウナギを食べたから、ご馳走は食べてある。そこで、ピザでも頼もうかと思った。

「あ、ピザはいけないのか。お義父さんが食べたくないって……。うっうっ。あんなに好きだったのに……」

 お義父さんは一貴さんや二葉、ユーリーと一緒に食べるために、宅配のピザを頼むことがあった。しかし、ママのモデルスクールに身に覚えのないピザの出前が届いていたと知り、色んなことを思い出すようで、食べたがらない。しかし、俺達だって、何か食べたい。

 そこで、今日はチキンを買ってこようかと思った。オードブルサラダもだ。近くにあるコンビニでは、クリスマスの商品が並んでいるだろう。

「予約していないけど、買えるよね。去年はいっぱい並んでいたんだ。ケーキもあったよね。でも、カンテールのショートケーキもいいなあ。買えるかな?予約のみだろうなあ……」

 クリスマスは何もしないと決めてあっても、黒崎も一貴さんも休みを変更すること無く休暇を取ったから、家に居る。だから、ますます何か食べたくなってしまった。

 珈琲を煎れ終えて、リビングに戻った。2人の電話は終わっていた。ソファーには一貴さんが座っていて、ユーリーがテレビの前に立ち、画面をじっと見ている。何か面白いニュースが流れているのだろうか。

「ユーリー、どうしたの?」
「犬の面白映像が流れているんだ。アンと同じ犬種のシーズーが出ている」
「へえーー。ああ、散歩中のわんこあるあるだって……。途中で疲れて、道で寝転がる犬か……。この子は柴犬だね。あ、シーズーも寝転がっているよ」
「アンは偉いな。寝転がらない」
「そういえばそうだねえ。最後までちゃんと歩くよ。お義父さんが杖を付いているって分かっているかも。今は付いていないことが多いけど……。俺と一緒の時も歩くけどね。身体が弱いって分かってくれているのかも。うっうっ」
「夏樹。良かったな。アンがいて。一貴さんのように池に片足を突っ込んだら、アンが吠えて周りに知らせてくれる」
「そうなんだよね~。ちゃんと教えてくれるんだ。……黒崎さんがまだ帰ってこないね。遠藤さんの家に行っているかも」
「リリーに会いに行っているんだろう。フリージアはアンを見ても怖がらないし、リクとも会えるから、お向かいさんで良かったな」
「うん。ねえ、ユーリー。カズ兄さん、さっきからその姿勢のままなの?」
「ああ、君が珈琲を煎れに行った後から、その姿勢だ」
「カズ兄さん。どうしたんだよ?」

 俺はカップをテーブルに置き、一貴さんのそばまで行った。彼は落ち込んでいるスタイルといった感じで、膝の上で手を組み、考え込んでいるようだ。さっきのニュースのことだろう。コメンテーターの2人の仲裁をするということで、作戦を練っているのだろうか。しかし、それなら落ち込まなくても良いだろう。
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