342 / 938
11-25
しおりを挟む
すると、黒崎の足下でオモチャで遊んでいたアンが大広間を出て行った。お義父さんが帰ってきたのだろう。窓の外を見ると、たしかにお義父さんが歩いてくるのが分かった。足音は聞こえない。匂いだって、建物の壁に隔てられて分からないと思う。それなのに、どうして分かったのだろう。俺が不思議そうにしていると、黒崎が答えを言った。ああ、とつぶやいたからだろうということだ。
「すごいね。それで分かったんだね。ハンバーガーのオモチャも持って行ったよ」
「新しいオモチャだから、見せたいんだろう」
「あ、お義父さんが入ってきたよ。アンが何か言っているよ~」
最近になり、アンが何かを喋ろうとするようになった。おかえりとか、どこに行っていたの?とか、そういう言葉だと思う。すると、プラセルで一番の動物好きだと言われている一貴さんが、六槍さんに微笑みかけた。うちのアンはすごいだろうという自慢だ。
「はははは。一貴さんの顔が本当に嬉しそうだ」
「カズ兄さん。あんたは誰か帰って来ても気づかないくせに……。いた!」
「夏樹。今日はその口はやめておけ」
黒崎から頬をつねられてしまった。そうだ、今日はクリスマスイブだから、嫌みはやめておこう。俺は立ち上がり、キッチンに行こうと思った。お義父さんの分のお蕎麦を用意するためだ。すると、アンにじゃれつかれながら、お義父さんが部屋に入ってきた。パッと見て、黒崎に似ている。黒崎が年を取ったらお義父さんのような感じになるのかなと思った。
「お義父さん、おかえりなさい。お腹空いているよね?お蕎麦があるよ」
「ありがとう。頂くよ。アンはすごい子だ。私が玄関を入ったら、もう待ってくれていた」
「黒崎さんが教えたんだって。でも、ああってつぶやいただけなんだよ。お義父さんが歩いてくるのを三てなんだよ」
「そうか。私が居ないと分かっていたんだろう。ああ、何を話したいんだ?」
お義父さんがアンの頭を撫でた。たしかに何か話しているようだ。どこに行っていたのかと聞いているのだろうか。すると、お義父さんがまたアンの頭を撫でて、賢い子だと褒めた。
「一貴なんか、私が帰ってきても気がつかない。ユリウスが部屋の外に出たら、慌てて探しに行くというのに……」
「この間のことだね~。お義父さんがリビングにいたから驚いて、尻もちをつきそうになったんだ……」
何か良からぬ事を考えていたのだろうと思った。一貴さんは悪戯書きはしない。だから、怒られることなんかない。しかし、厳冬に問題があるときがあり、お義父さんや俺達から叱られるときがある。例えば、プラセルの今後の躍進を願って、ある企業を陥れて、ライバルを減らすという計画を話し始めたときなどだ。一貴さんは本気だ。だから、止めないといけない。せっかく好感度が上がっているのに台無しだ。
六槍さんが立ち上がった。お義父さんはそれを止めた。据わっていてくれと言っている。朝陽に告白したことは知っているから、からかうように笑い、朝陽君と話していてくれと言った。それに対して、朝陽は首を振った。
「俺は女の人が好きなんです」
「そうなのか?六槍君も悪くないと思うよ。はははは。やめておこうか。ああ、二葉はまだ帰っていないのか。今日は昼過ぎに帰ってくると言っていたのに。南波君の仲間達と話が弾んでいるのか……」
「そうだといいね。おかしいなあ。もう帰ってきても良いよね~。まさか、テレビのことで何かあったかな。会社の方で……。黒崎さん……」
「今、ラインを送った。どこに居るんだと……」
黒崎がスマホを見て、自分の方には何もメッセージが入っていないと言った。朝陽にもない。そして、ユーリーが声を上げた。一貴さんが頭を抱え込んで隠れようとしたからだ。
「カズ兄さん。どうしたの?」
「ああーーー、しまった……」
「何があったんだよ?二葉から連絡が入っていたの?スマホを見せてよ」
「だめだ。それは見せられない。あ……」
「ふうん……」
黒崎が一貴さんのスマホを手に取り、ぷっと吹き出した。この間までユリウスの写真を待ち受けにしていたのに、浜辺で撮影された藤沢の写真になっている。かっこいい写真だから、ちっとも恥ずかしくない。それなのにまだ隠そうとするから、黒崎がラインを開いてみた。
「すごいね。それで分かったんだね。ハンバーガーのオモチャも持って行ったよ」
「新しいオモチャだから、見せたいんだろう」
「あ、お義父さんが入ってきたよ。アンが何か言っているよ~」
最近になり、アンが何かを喋ろうとするようになった。おかえりとか、どこに行っていたの?とか、そういう言葉だと思う。すると、プラセルで一番の動物好きだと言われている一貴さんが、六槍さんに微笑みかけた。うちのアンはすごいだろうという自慢だ。
「はははは。一貴さんの顔が本当に嬉しそうだ」
「カズ兄さん。あんたは誰か帰って来ても気づかないくせに……。いた!」
「夏樹。今日はその口はやめておけ」
黒崎から頬をつねられてしまった。そうだ、今日はクリスマスイブだから、嫌みはやめておこう。俺は立ち上がり、キッチンに行こうと思った。お義父さんの分のお蕎麦を用意するためだ。すると、アンにじゃれつかれながら、お義父さんが部屋に入ってきた。パッと見て、黒崎に似ている。黒崎が年を取ったらお義父さんのような感じになるのかなと思った。
「お義父さん、おかえりなさい。お腹空いているよね?お蕎麦があるよ」
「ありがとう。頂くよ。アンはすごい子だ。私が玄関を入ったら、もう待ってくれていた」
「黒崎さんが教えたんだって。でも、ああってつぶやいただけなんだよ。お義父さんが歩いてくるのを三てなんだよ」
「そうか。私が居ないと分かっていたんだろう。ああ、何を話したいんだ?」
お義父さんがアンの頭を撫でた。たしかに何か話しているようだ。どこに行っていたのかと聞いているのだろうか。すると、お義父さんがまたアンの頭を撫でて、賢い子だと褒めた。
「一貴なんか、私が帰ってきても気がつかない。ユリウスが部屋の外に出たら、慌てて探しに行くというのに……」
「この間のことだね~。お義父さんがリビングにいたから驚いて、尻もちをつきそうになったんだ……」
何か良からぬ事を考えていたのだろうと思った。一貴さんは悪戯書きはしない。だから、怒られることなんかない。しかし、厳冬に問題があるときがあり、お義父さんや俺達から叱られるときがある。例えば、プラセルの今後の躍進を願って、ある企業を陥れて、ライバルを減らすという計画を話し始めたときなどだ。一貴さんは本気だ。だから、止めないといけない。せっかく好感度が上がっているのに台無しだ。
六槍さんが立ち上がった。お義父さんはそれを止めた。据わっていてくれと言っている。朝陽に告白したことは知っているから、からかうように笑い、朝陽君と話していてくれと言った。それに対して、朝陽は首を振った。
「俺は女の人が好きなんです」
「そうなのか?六槍君も悪くないと思うよ。はははは。やめておこうか。ああ、二葉はまだ帰っていないのか。今日は昼過ぎに帰ってくると言っていたのに。南波君の仲間達と話が弾んでいるのか……」
「そうだといいね。おかしいなあ。もう帰ってきても良いよね~。まさか、テレビのことで何かあったかな。会社の方で……。黒崎さん……」
「今、ラインを送った。どこに居るんだと……」
黒崎がスマホを見て、自分の方には何もメッセージが入っていないと言った。朝陽にもない。そして、ユーリーが声を上げた。一貴さんが頭を抱え込んで隠れようとしたからだ。
「カズ兄さん。どうしたの?」
「ああーーー、しまった……」
「何があったんだよ?二葉から連絡が入っていたの?スマホを見せてよ」
「だめだ。それは見せられない。あ……」
「ふうん……」
黒崎が一貴さんのスマホを手に取り、ぷっと吹き出した。この間までユリウスの写真を待ち受けにしていたのに、浜辺で撮影された藤沢の写真になっている。かっこいい写真だから、ちっとも恥ずかしくない。それなのにまだ隠そうとするから、黒崎がラインを開いてみた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる