青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 すると、テレビ画面から味噌汁のコマーシャルの音楽が流れ始めた。悠人が出ているキシヤマ味噌のコマーシャルだ。今日から新しいバージョンで流すと聞いてあったとおり、すっかり長くなった髪の毛を後ろでまとめた悠人が行儀良く味噌汁を飲んでいるシーンが流れた。背景は日本風家屋だ。フリーズドライ味噌汁と、昔ながらの味噌の紹介がされている。音楽の作曲は悠人が担当した。

「ほら、ユーリー。幸運の女神が微笑んだよ。あんたの相手は月島さんだよ」
「あの人は嫌だ。意地悪を言うからだ」
「うちの黒崎さんと同じじゃん。黒崎さんは俺が二股をしようものなら許さないだろうけど、月島さんは違うって言っていただろ?そうしてもいいんだよって、言ってくれたじゃん。二股王子なんだろ、あんたは……」
「嬉しくないニックネームだ。南波君が付けてくれたとは言え、呼ばれたくない」
「いいじゃん。王子って言ってもらえたんだから。本当に王子様かと思ったんだって。手にキスをして口説いてくるから……」

 なかなかうまくいかないものだ。ユーリーが好みの子に出会って恋に落ちて、口説いて成功したかと思えば、滑り込んできた人に二股を暴露されてしまい、失恋している。そして、窓の外の二人を見て、切なくなっている。

 すると、ユーリーのスマホにラインが入った。月島さんだろう。いつも昼頃にメッセージを入れてくれるからだ。ユーリーが嫌がっているくせに、すぐにスマホを手に取った。そして、ラインを確認している。

「なんだよ。月島さんのことが気に入っているじゃん」
「南波君かと思ったんだ。月島君だったよ。バレンタインデーのデートの誘いだ」
「随分と先の約束だねーー?」
「僕がいつも忙しいと言ってデートを断っているうちに、どんどん先の日付で誘いが来るようになったんだ。ホワイトデーはだめだと言ってある。南波君が失恋した日は、僕と一緒に過ごして貰いたいから……。ん?なんだって?ホワイトデーは、南波君は伊吹君達と釣りに行くのか!先を越された……」
「月島さんからの報告なんだね。南波さんと月島さん、タッグを組んでいるじゃん。うひゃひゃひゃ」

 ユーリーは誰と付き合うことになるのだろう。月島さんが微笑んでいる気がした。本当は違う相手なのかも知れないと思ったのはいけないことだろうか。月島さんだって、本当はユーリーとクリスマスに会いたかっただろう。ユーリーは家でゆっくりしたいと言いつつも、彼が遊びに来るならいいよと言っている。

 しかし、月島さんの方は忙しいようで、バタバタしているはずだと、お義父さんから聞いてあった。会食の誘いが多いそうだ。クリスマスはどの会社も遠慮し合うそうだ。休肝日として、早めに帰宅して寝ていたいだろう。

「そういえば、ユーリーの会社は忘年会は済んだの?」
「ああ、もうしてある。月島君は今日は来ないのか……。ふうん……」
「家で寝たいだろうと思うよ。黒崎さんだって、会食続きだったんだ。月島さんは今年社長になったばかりだから、会う人が多いんだと思うって、言っていたよ。なんだよ、寂しいなら、明日来てもらったら?」
「そうしようかな。オードブルセットは沢山頼んであるんだろう?」
「うん。今日来てもらっても、お腹いっぱいになると思うよ」
「来てもらう。……僕のことが好きなら、今日来てくれ。送信……」
「なんだよ、強引だねえ。けっこう好きなんじゃん。え?明日も来いって送ったのかよ?僕のことが好きならって……」

 ユーリーの書きように驚いた。随分と威張っていると思った。月島さんからの返信はすぐに来て、来たいということだった。そこで、俺はみんなに言った。月島さんが来てくれるよと。それにはみんな喜び、ユーリーのことをからかい始めた。彼は椅子にふんぞり返って座ること無く、なんだかそわそわしている。結局は月島さんのことが気になるのだろう。

 そんな彼の事を俺もからかい、もう一度、窓の外の二人を見た。寒いねと言っているようだ。そろそろ家の中に入ってくるだろう。そこで、俺はお茶の用意をすることにした。二人を迎え入れるために。
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