359 / 938
12-11
しおりを挟む
俺達は今、手水舎にいる。みんなで順番に手や口を水でゆすいで、ハンカチで手を拭いた。水が冷たくて身体が冷えてしまったというのは、罰当たりだろうか。ぶるっと震えた俺のことを心配した黒崎が、すぐに温かくなっている手で俺の手を握った。みんながいる前でだ。
「黒崎さん。どうしたんだよ?」
「冷たそうだったからだ。正月ぐらいは良いことをしたい」
「ふうん。なるほど。ユーリー、どうしたんだよ?え……」
ユーリーが立ちすくんでいたから気になって彼の視線の先を見ると、小瀬さんが家族で参拝に来ているのが分かった。高野さんも一緒だ。そして、その後ろには伊吹がいるのが見えた。ということは、南波さんも来ているということなのか。それで、自分と来てくれないのだとショックを受けているというわけか。
そういうわけで俺がじっと見ていると、ユーリーが驚いている理由が分かった。伊吹が破魔矢で鼻をほじっていたからだ。ふざけているのだろう。こんなこと、どんなに小さい子でもやらないと思う。
「ユーリー。見なかったことにしてよ……」
「ノアが言っていたんだ。伊吹君は危険だと。でも、好感は持っているんだ」
「ユーリー。向こうに行こうよ……。罰当たりのことなんて、視界に入れたらだめだよ。ほら、目を合わせないで。知らない人だっていうことにしようよ。あ、ますます他人のふりをしたくなった……」
伊吹が鼻をほじった破魔矢の先で、前に立っている高野さんの背中に字を書き始めた。俺はここで伊吹の弟だと思いたくなくて、さっとユーリーの手を引いた。そして、歩き始めた。めざすは神前だ。伊吹に気づかれる前に参拝を済ませたい。神様の前で俺のことを願われたくないからだ。何を言われるか分かった物ではない。
「ユーリー、行こうよ。みんな、伊吹お兄ちゃんに気づかれないでね……。高野さんには後で、挨拶のメールを送ったら良いと思うんだ。黒崎さん!だめだよ!高野さんに声を掛けないで!」
「そうは言っても、同じグループだ。そういうわけにはいかない。ああ、小瀬君の両親は、たしかに痩せているようだ……」
黒崎が心配そうな顔で、小瀬さん一家を見つめた。受験のことで痩せた身体が元に戻っていないというのは本当だと思った。俺も心配になった。元々は標準体重だった両親が7キロから8キロも痩せたら、大変だと思う。俺も痩せると体力の面で心配だから、気になってしまう。
「黒崎さん。挨拶してきてよ……」
「お前は先に行っていろ」
そう言って、黒崎がまずは小瀬さんに声を掛けに行き、両親と挨拶を始めた。伊吹は高野さんからやり返されて、向こうに行っている。黒崎のことに気づいていないようだ。その間に、俺達は神前に向かった。
「えーーっと……。どこだっけ?」
「夏樹。こっちだ」
「そうだったね。こっちだったね~」
ユーリーが俺の手を引いた。俺達の先を歩いているのが、聖河さんと月島さんだ。すっかり打ち解けたようだ。すると、月島さんが誰かに会ったようで、手を振っている。そこに居たのは、噂に聞いた友達らしい。銀座のバーでママをしているという人だと思った。
「佐々木君!君も来ていたのか!」
「あらーーー、月島君!年末に店に来てくれてありがとう!年明けは7日から営業よ!」
その友達が俺達の側に来た。今日は数人出来ているようで、月島さんから、仲の良い友達で、この間の南波さんの番組の時に話題に出た人で、好みの男性に、パンツを一万円で買い取ると話しかけるという友達の佐々木さんを紹介してもらった。もう一人は、店のオーナーである吉田さんだという。
「夏樹君。彼は佐々木君だ。こちらはオーナーの吉田さんだ。銀座と新宿に店があるんだよ」
「初めまして。黒崎です」
俺が挨拶すると、佐々木さんと吉田さんから手を握られた。そして、イケメンだと言ってもらえた。さらに、月島さんが吉田さんに声を掛けた。ライブに行ったんだよねと。
「そうなのよ!あなたのことは聞いていますよ!テレビでも、ライブでも見ました!」
「ありがとうございます!来て頂けたなんて……。あの、悠人から聞いています。お店にお伺いしたことがあるそうで……」
「そうなんですよーーー。おかげで繁盛しましてね。佐々木君にはママとして、銀座の店に出て貰っています。いつか夏樹君にも会いたいと思っていたところへ、元旦に会えて、私、ラッキーです!」
「わああ~~~」
俺は吉田さんと佐々木さんから抱きしめられた。それを月島さんが軽く促すようにして俺から引き離した後、僕達はこれから参拝だと言った。
「そうよねーーー。私達はもう終わったところなの。新年からいい男に会えて嬉しかったわ!じゃあ、また会いましょう!」
「はい!お店に行きます!」
「ありがとう!」
ばいばいと言って、吉田さん達が神社を後にした。俺達も手を振り、また神前に向かって歩き出した。
「黒崎さん。どうしたんだよ?」
「冷たそうだったからだ。正月ぐらいは良いことをしたい」
「ふうん。なるほど。ユーリー、どうしたんだよ?え……」
ユーリーが立ちすくんでいたから気になって彼の視線の先を見ると、小瀬さんが家族で参拝に来ているのが分かった。高野さんも一緒だ。そして、その後ろには伊吹がいるのが見えた。ということは、南波さんも来ているということなのか。それで、自分と来てくれないのだとショックを受けているというわけか。
そういうわけで俺がじっと見ていると、ユーリーが驚いている理由が分かった。伊吹が破魔矢で鼻をほじっていたからだ。ふざけているのだろう。こんなこと、どんなに小さい子でもやらないと思う。
「ユーリー。見なかったことにしてよ……」
「ノアが言っていたんだ。伊吹君は危険だと。でも、好感は持っているんだ」
「ユーリー。向こうに行こうよ……。罰当たりのことなんて、視界に入れたらだめだよ。ほら、目を合わせないで。知らない人だっていうことにしようよ。あ、ますます他人のふりをしたくなった……」
伊吹が鼻をほじった破魔矢の先で、前に立っている高野さんの背中に字を書き始めた。俺はここで伊吹の弟だと思いたくなくて、さっとユーリーの手を引いた。そして、歩き始めた。めざすは神前だ。伊吹に気づかれる前に参拝を済ませたい。神様の前で俺のことを願われたくないからだ。何を言われるか分かった物ではない。
「ユーリー、行こうよ。みんな、伊吹お兄ちゃんに気づかれないでね……。高野さんには後で、挨拶のメールを送ったら良いと思うんだ。黒崎さん!だめだよ!高野さんに声を掛けないで!」
「そうは言っても、同じグループだ。そういうわけにはいかない。ああ、小瀬君の両親は、たしかに痩せているようだ……」
黒崎が心配そうな顔で、小瀬さん一家を見つめた。受験のことで痩せた身体が元に戻っていないというのは本当だと思った。俺も心配になった。元々は標準体重だった両親が7キロから8キロも痩せたら、大変だと思う。俺も痩せると体力の面で心配だから、気になってしまう。
「黒崎さん。挨拶してきてよ……」
「お前は先に行っていろ」
そう言って、黒崎がまずは小瀬さんに声を掛けに行き、両親と挨拶を始めた。伊吹は高野さんからやり返されて、向こうに行っている。黒崎のことに気づいていないようだ。その間に、俺達は神前に向かった。
「えーーっと……。どこだっけ?」
「夏樹。こっちだ」
「そうだったね。こっちだったね~」
ユーリーが俺の手を引いた。俺達の先を歩いているのが、聖河さんと月島さんだ。すっかり打ち解けたようだ。すると、月島さんが誰かに会ったようで、手を振っている。そこに居たのは、噂に聞いた友達らしい。銀座のバーでママをしているという人だと思った。
「佐々木君!君も来ていたのか!」
「あらーーー、月島君!年末に店に来てくれてありがとう!年明けは7日から営業よ!」
その友達が俺達の側に来た。今日は数人出来ているようで、月島さんから、仲の良い友達で、この間の南波さんの番組の時に話題に出た人で、好みの男性に、パンツを一万円で買い取ると話しかけるという友達の佐々木さんを紹介してもらった。もう一人は、店のオーナーである吉田さんだという。
「夏樹君。彼は佐々木君だ。こちらはオーナーの吉田さんだ。銀座と新宿に店があるんだよ」
「初めまして。黒崎です」
俺が挨拶すると、佐々木さんと吉田さんから手を握られた。そして、イケメンだと言ってもらえた。さらに、月島さんが吉田さんに声を掛けた。ライブに行ったんだよねと。
「そうなのよ!あなたのことは聞いていますよ!テレビでも、ライブでも見ました!」
「ありがとうございます!来て頂けたなんて……。あの、悠人から聞いています。お店にお伺いしたことがあるそうで……」
「そうなんですよーーー。おかげで繁盛しましてね。佐々木君にはママとして、銀座の店に出て貰っています。いつか夏樹君にも会いたいと思っていたところへ、元旦に会えて、私、ラッキーです!」
「わああ~~~」
俺は吉田さんと佐々木さんから抱きしめられた。それを月島さんが軽く促すようにして俺から引き離した後、僕達はこれから参拝だと言った。
「そうよねーーー。私達はもう終わったところなの。新年からいい男に会えて嬉しかったわ!じゃあ、また会いましょう!」
「はい!お店に行きます!」
「ありがとう!」
ばいばいと言って、吉田さん達が神社を後にした。俺達も手を振り、また神前に向かって歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる