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バタン。15分後、ローザーさんとミカさんを乗せたタクシーがマンションの前から走り去って行った。これからテレビ番組の仕事に戻るためだ。朝4時で終わりだそうだ。出演者の着物の着付け担当の人が来るまでの2時間空くということで、いてもたってもいられず、ここに来てくれたのだと知った。
黒崎が送っていくと言ったが、一貴さんの着替えのことがあると聖河さんが話したから、ローザーさん達が遠慮した。ここからスタジオまではそう遠くないから大丈夫だと言っていた。さて、俺達は聖河さんのことを部屋まで送り届けることにしよう。
「聖河さん。家の玄関を入るところまで見届けるからね」
「僕ならいいのに。ごく普通の玄関だよ。ここの11階に住んでいるんだ」
黒崎は車で待機している。だから、俺と二葉で送り届けることになった。聖河さんの後ろを付いて歩いて行くと、エントランスの雰囲気が、俺が黒崎と付き合い始めたときに彼が住んでいたマンションに似ていると思った。それを口にすると、マンションのオーナーの会社の名前を聖河さんが言った。同じだと分かった。
「同じだよ。だから似ているんだなあ。けっこう広い部屋なんだろ?」
「ああ。僕は荷物が多いからね。本が多い。引っ越しの時は整理せずに、そのまま持ってきた。六畳の部屋には本が山積みだ。なんとか寝室を確保できたんだよ」
「へえーー。今度、上がらせてよ。二葉、どこに行くんだよ?」
「ごめん。よそ見をしていたんだ。なんだか懐かしい雰囲気だなって、俺も思ったんだ。聖河さん、今日は疲れているよね。ゆっくり寝てね」
「ありがとう。二葉君の方こそ疲れただろう。町野君の診察の話を圭一君から聞いたよ。お母さんの話をしたのに、お母さんの腕に抱かれているみたいだろう?っていう体操の話……」
「ははは。そうなんだよ。今から思えば、そう思うと落ち着くだろうっていう話だと思ったんだ。でも、その時は俺、先生が話を聞いてくれなかったって思ってさ。そんなことはないと思うのに……」
「そうだよね。そんなことはないよね」
俺もそう思うことにしたから聖河さんにそう言うと、渋い顔になった。そして、ちゃんと聞いていなかったかも知れないと言いだしたから、俺と二葉は慌てて訂正した。
「いや、そんなことはないって。二葉が気にしすぎなんだよ~」
「そうだよ。俺が気にしすぎたんだ~。前の先生なんか、ふん!って横を向く人だったんだ。その点、町野先生は優しかったよ。俺は元から不安を感じやすい性格をしているんだそうだよ。それは幼少期からの体験が影響したに決まっているから、ずっと付き合い続ける性格になるんだって言われたよ。でも、何かに没頭できるようになったら、その世界のことに夢中になれるだろうから、自分の性格のことは忘れてしまうだろうってさ。その後は、ふとしたときに、まるで天井が落ちてくるような感覚が起きるかも知れないと思うけど、その時は、そういう時だけ使う薬があるから、その時になったら試すといいよって教えてくれたんだ。でも、使わないかも知れないって言われたよ。俺、大学は順調でさ。友達だっているから好きなんだ。会社の方も仲の良い人が出来たんだ。友達の事件のことでは、俺、会社に居づらくなると思ったけど、心配してくれる声が多くてさ……。黒崎製菓の団結力を見た気がするよ」
「そうか。裸足が気になったら僕に言ってくれ。靴をはいてもらう」
「それはいいんだよ。話を聞いたときは驚いたけどさ。俺も先生に習って、裸足で診察室に入ろうかと思ったんだよ。そう思えたんだ」
「寒いからいけないよ。ありがとう。町野君が喜ぶよ。じゃあ、圭一君が待っていると思うから……」
「うん。今日はお疲れさまでした。ゆっくり寝てね」
「おやすみなさい」
聖河さんの家のドアの前に着き、彼がドアを開けて家の中に入っていく姿を見届けた後、ホッと息をついた。また男の人の顔を見ると思ったし、また見たいと思ったが、今は何も見えなかった。それは二葉も同じ感想で、自分も見たかったと言った。
そして、黒崎が待ちかねていると思うから急ごうと言い、マンションを出た。聖河さんの家の号室はA1105だった。黒崎の部屋は1510だったから、共通ある数字で、また懐かしくなり、ほっこりした気持ちになった。
黒崎が送っていくと言ったが、一貴さんの着替えのことがあると聖河さんが話したから、ローザーさん達が遠慮した。ここからスタジオまではそう遠くないから大丈夫だと言っていた。さて、俺達は聖河さんのことを部屋まで送り届けることにしよう。
「聖河さん。家の玄関を入るところまで見届けるからね」
「僕ならいいのに。ごく普通の玄関だよ。ここの11階に住んでいるんだ」
黒崎は車で待機している。だから、俺と二葉で送り届けることになった。聖河さんの後ろを付いて歩いて行くと、エントランスの雰囲気が、俺が黒崎と付き合い始めたときに彼が住んでいたマンションに似ていると思った。それを口にすると、マンションのオーナーの会社の名前を聖河さんが言った。同じだと分かった。
「同じだよ。だから似ているんだなあ。けっこう広い部屋なんだろ?」
「ああ。僕は荷物が多いからね。本が多い。引っ越しの時は整理せずに、そのまま持ってきた。六畳の部屋には本が山積みだ。なんとか寝室を確保できたんだよ」
「へえーー。今度、上がらせてよ。二葉、どこに行くんだよ?」
「ごめん。よそ見をしていたんだ。なんだか懐かしい雰囲気だなって、俺も思ったんだ。聖河さん、今日は疲れているよね。ゆっくり寝てね」
「ありがとう。二葉君の方こそ疲れただろう。町野君の診察の話を圭一君から聞いたよ。お母さんの話をしたのに、お母さんの腕に抱かれているみたいだろう?っていう体操の話……」
「ははは。そうなんだよ。今から思えば、そう思うと落ち着くだろうっていう話だと思ったんだ。でも、その時は俺、先生が話を聞いてくれなかったって思ってさ。そんなことはないと思うのに……」
「そうだよね。そんなことはないよね」
俺もそう思うことにしたから聖河さんにそう言うと、渋い顔になった。そして、ちゃんと聞いていなかったかも知れないと言いだしたから、俺と二葉は慌てて訂正した。
「いや、そんなことはないって。二葉が気にしすぎなんだよ~」
「そうだよ。俺が気にしすぎたんだ~。前の先生なんか、ふん!って横を向く人だったんだ。その点、町野先生は優しかったよ。俺は元から不安を感じやすい性格をしているんだそうだよ。それは幼少期からの体験が影響したに決まっているから、ずっと付き合い続ける性格になるんだって言われたよ。でも、何かに没頭できるようになったら、その世界のことに夢中になれるだろうから、自分の性格のことは忘れてしまうだろうってさ。その後は、ふとしたときに、まるで天井が落ちてくるような感覚が起きるかも知れないと思うけど、その時は、そういう時だけ使う薬があるから、その時になったら試すといいよって教えてくれたんだ。でも、使わないかも知れないって言われたよ。俺、大学は順調でさ。友達だっているから好きなんだ。会社の方も仲の良い人が出来たんだ。友達の事件のことでは、俺、会社に居づらくなると思ったけど、心配してくれる声が多くてさ……。黒崎製菓の団結力を見た気がするよ」
「そうか。裸足が気になったら僕に言ってくれ。靴をはいてもらう」
「それはいいんだよ。話を聞いたときは驚いたけどさ。俺も先生に習って、裸足で診察室に入ろうかと思ったんだよ。そう思えたんだ」
「寒いからいけないよ。ありがとう。町野君が喜ぶよ。じゃあ、圭一君が待っていると思うから……」
「うん。今日はお疲れさまでした。ゆっくり寝てね」
「おやすみなさい」
聖河さんの家のドアの前に着き、彼がドアを開けて家の中に入っていく姿を見届けた後、ホッと息をついた。また男の人の顔を見ると思ったし、また見たいと思ったが、今は何も見えなかった。それは二葉も同じ感想で、自分も見たかったと言った。
そして、黒崎が待ちかねていると思うから急ごうと言い、マンションを出た。聖河さんの家の号室はA1105だった。黒崎の部屋は1510だったから、共通ある数字で、また懐かしくなり、ほっこりした気持ちになった。
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