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20時。
お義父さんの家に戻ってきたところだ。さっそく一貴さんの部屋に行き、クローゼットから着替えを散りだした。どこに何が入っているのかすぐに分かるようになっている。それは、一貴さんが下着類や部屋着はきちんとクローゼットにしまってあり、引き出しにラベルを付けて、その通りに収納しているからだこれは小さい頃からの習慣だという。そうしないと落ち着かないのだそうだ。しかし、スーツ類もきちんとしまわれているが、休日ファッションの洋服は無造作にあちこちに置かれている。
「うーーん。どうして休日ファッションの洋服は片付けないのかな。どこに何があるのか分からないと思うんだけど……。皺にならない素材を選ぶから、そういう面は心配ないのか……。黒崎さん。着替えを用意したよ」
「ありがとう。一貴の休日ファッションは無造作がテーマだということだ。だから、服も無造作に置いて、そうやって置いても格好が良いデザインを選んでいるそうだ。プラセルで扱うデザイナーを選ぶためでもあるそうだ」
「そうなんだねーー。なるほど。納得したよ。ザ・詐欺師みたいなファッションだよね。イケイケ、イケおじ、イケカジとかでインスタを検索しているのを知っているんだよ。カズ兄さんの好きな服を探そうと思ったら、そういうキーワードじゃないと探せないんだってさ」
「そうか。今日の服装は普通で良かった」
「そうだね。病院だもんね。イケイケ過ぎてたら目立つもんね。うひゃひゃひゃ。この間さ~、カズ兄さん、女の人から警戒されたんだってさ~。聞いてた?」
「いや、まだ知らない。忘年会の話か?」
「うん。プラセルと縫製工場の会社との忘年会で、向こうの会社の取引先の人も来ていて、カズ兄さんが挨拶したら、ザ・島川社長って感じに見えたみたいで、ドン引かれたそうなんだ。朝陽が言っていたんだよ。六槍さんが選んだスーツとネクタイにすればよかったのって。インテリジェンスがテーマだったのに、マジシャンみたいなネクタイをして行ったからだって」
「あのネクタイか……。ジャケットもあれだろう……」
黒崎が、どの服装で一貴さんが出席したのか想像を始めた。たいてい当たっている。最近はイケイケファッションばかりだ。そのファッションが目の前にある。ポールハンガーに吊られている、お出かけコーディネートセットだ。
「これもイケイケだね。どこに着ていくつもりだと思う?」
「これはファッションショーのリハーサルの控え室に行くときに行くつもりのものだ。俺が選んだ」
「へえーー。本人が選んだやつだと思ったのに」
「その本人が体面を気にして、俺に選んでくれと言ってきた。これでおとなしめだ。急に変えるというのもな……」
「まあねえ。警察に呼ばれたくないから、真面目なファッションにするんだって言っていたよね。見た目で判断されるんだって……」
「その通りだ。ああ、ユリウスが起きたのか……」
「ほんとだ。こっちに来たね。おいでーー」
さっきまでユリウスはリビングで寝ていた。ユーリーが彼のゲージをリビングに移動させて、ハンモックで寝かせるためにだ。そのユリウスが起きて、この部屋に戻ってきた。一貴さんを探しているのだろう。
「ユリウス。急にごめんね。今夜はカズ兄さんがいないんだ。ユーリーの部屋で寝てね」
「俺もいない。一貴の病室で付き添いだ。ん?戻っていった」
「うん。分かったのかな。ああ、ユーリーが呼んでいるからだね」
開いているドアの向こうから、ユリウスを呼んでいるユーリーの声が聞こえてきた。ユリウスはすっかりユーリーに懐き、名前を呼ぶと振り向くし、ゲージの外にいるときは走って行く。アンも同じだ。そのアンはリビングで熟睡中だ。すると、ユリウスを抱いたユーリーが部屋の中に入ってきた。
「ユーリー。着替えを用意したよ。あんたも行くの?」
「いや、家にいるよ。オバケ探査は、また今度にする。足だけのオバケには興味があるけどね」
「そうしてくれ。聖加世病院は目撃例がないらしい」
一貴さんが一人で病室で寝られないからと、お義父さんが付き添っているのだが、今頃、お義父さんが止めるのを聞かずに、スマホで心霊動画を見ていることだろうと想像し、頭が痛くなってきた。怖がりなのに見たがる人だ。俺は着替えを袋に詰めて、黒崎に渡した。これからすぐに家を出て、黒崎は病院に向かう。その後ろ姿を見送った。
お義父さんの家に戻ってきたところだ。さっそく一貴さんの部屋に行き、クローゼットから着替えを散りだした。どこに何が入っているのかすぐに分かるようになっている。それは、一貴さんが下着類や部屋着はきちんとクローゼットにしまってあり、引き出しにラベルを付けて、その通りに収納しているからだこれは小さい頃からの習慣だという。そうしないと落ち着かないのだそうだ。しかし、スーツ類もきちんとしまわれているが、休日ファッションの洋服は無造作にあちこちに置かれている。
「うーーん。どうして休日ファッションの洋服は片付けないのかな。どこに何があるのか分からないと思うんだけど……。皺にならない素材を選ぶから、そういう面は心配ないのか……。黒崎さん。着替えを用意したよ」
「ありがとう。一貴の休日ファッションは無造作がテーマだということだ。だから、服も無造作に置いて、そうやって置いても格好が良いデザインを選んでいるそうだ。プラセルで扱うデザイナーを選ぶためでもあるそうだ」
「そうなんだねーー。なるほど。納得したよ。ザ・詐欺師みたいなファッションだよね。イケイケ、イケおじ、イケカジとかでインスタを検索しているのを知っているんだよ。カズ兄さんの好きな服を探そうと思ったら、そういうキーワードじゃないと探せないんだってさ」
「そうか。今日の服装は普通で良かった」
「そうだね。病院だもんね。イケイケ過ぎてたら目立つもんね。うひゃひゃひゃ。この間さ~、カズ兄さん、女の人から警戒されたんだってさ~。聞いてた?」
「いや、まだ知らない。忘年会の話か?」
「うん。プラセルと縫製工場の会社との忘年会で、向こうの会社の取引先の人も来ていて、カズ兄さんが挨拶したら、ザ・島川社長って感じに見えたみたいで、ドン引かれたそうなんだ。朝陽が言っていたんだよ。六槍さんが選んだスーツとネクタイにすればよかったのって。インテリジェンスがテーマだったのに、マジシャンみたいなネクタイをして行ったからだって」
「あのネクタイか……。ジャケットもあれだろう……」
黒崎が、どの服装で一貴さんが出席したのか想像を始めた。たいてい当たっている。最近はイケイケファッションばかりだ。そのファッションが目の前にある。ポールハンガーに吊られている、お出かけコーディネートセットだ。
「これもイケイケだね。どこに着ていくつもりだと思う?」
「これはファッションショーのリハーサルの控え室に行くときに行くつもりのものだ。俺が選んだ」
「へえーー。本人が選んだやつだと思ったのに」
「その本人が体面を気にして、俺に選んでくれと言ってきた。これでおとなしめだ。急に変えるというのもな……」
「まあねえ。警察に呼ばれたくないから、真面目なファッションにするんだって言っていたよね。見た目で判断されるんだって……」
「その通りだ。ああ、ユリウスが起きたのか……」
「ほんとだ。こっちに来たね。おいでーー」
さっきまでユリウスはリビングで寝ていた。ユーリーが彼のゲージをリビングに移動させて、ハンモックで寝かせるためにだ。そのユリウスが起きて、この部屋に戻ってきた。一貴さんを探しているのだろう。
「ユリウス。急にごめんね。今夜はカズ兄さんがいないんだ。ユーリーの部屋で寝てね」
「俺もいない。一貴の病室で付き添いだ。ん?戻っていった」
「うん。分かったのかな。ああ、ユーリーが呼んでいるからだね」
開いているドアの向こうから、ユリウスを呼んでいるユーリーの声が聞こえてきた。ユリウスはすっかりユーリーに懐き、名前を呼ぶと振り向くし、ゲージの外にいるときは走って行く。アンも同じだ。そのアンはリビングで熟睡中だ。すると、ユリウスを抱いたユーリーが部屋の中に入ってきた。
「ユーリー。着替えを用意したよ。あんたも行くの?」
「いや、家にいるよ。オバケ探査は、また今度にする。足だけのオバケには興味があるけどね」
「そうしてくれ。聖加世病院は目撃例がないらしい」
一貴さんが一人で病室で寝られないからと、お義父さんが付き添っているのだが、今頃、お義父さんが止めるのを聞かずに、スマホで心霊動画を見ていることだろうと想像し、頭が痛くなってきた。怖がりなのに見たがる人だ。俺は着替えを袋に詰めて、黒崎に渡した。これからすぐに家を出て、黒崎は病院に向かう。その後ろ姿を見送った。
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