青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺の髪の毛は茶色だったのに、だんだんと色が変わってきて、まるで金髪のような明るさになっている。マデリンは茶色い髪の毛だ。そこで、俺の髪の毛の色は、曾お祖父さんに似ているのではないかと言っていた。母は黒髪だ。伊吹も万理もだ。瞳の色も真っ黒だ。兄弟の中で俺だけが茶色の瞳で茶色の髪の毛だということだが、嫌では無かった。沙羅叔母さんが茶色の髪の毛をしていたからだった。

 だから、茶色だということを嫌がると、まるで彼女のことまで嫌がっているという風に思えた。小さい頃は俺の髪の毛の色は真っ黒だった。だんだんと色が変わってきて、小学校に上がる頃には茶色になった。そして、高校生になった時に、自分の髪の毛の色が好きになった。何がきっかけだったのかは覚えていない。

「ユーリー。俺もあんたみたいな茶色い髪の毛をしていたんだよ。でも、小さい頃は、伊吹お兄ちゃんみたいな黒い髪の毛だったんだよ。だから、今よりももっと顔が似ていたんだ。マデリンおばあちゃんが間違えたことがあるんだよ」
「そうなのか。4歳違うと、身体の大きさが違うだろう」
「そうなんだけどね。お化け屋敷に3人で入ったときだったから、暗くて分からなかったみたい。小さい方の俺の手を引くつもりが、伊吹お兄ちゃんの方の手を引いてゴールに着いて、しまった!って思ったそうだよ。うひゃひゃひゃ」
「君は平気だったのか。今なら大騒ぎだろう」
「うん。伊吹お兄ちゃんが悪いんだよ。俺は小さい頃は、オバケの話は平気だったんだ。それなのに、お兄ちゃんがすごく怖かったオバケの話をして俺のことを脅かすからさ、それ以来、怖くなったんだ~」

 なにもかも伊吹のせいだ。すごく怖かったオバケの話をしておいて、昨日の神社では、破魔矢で遊ぶという罰当たりなことをしていた。その伊吹は年末に夏山家の祖父とマデリンに会いに行ったそうだ。もちろん、うちの両親と万理もだ。俺だけが2年近く会っていない。

 祖父母をコンサートに呼んだのだが、大勢で詰めかけるのは悪いし、都会に行くのは腰が重いと言い、動画で観たいということだった。そういうわけで、沙羅叔母さんが母達と一緒に来てくれた。母と仲が良い彼女は自分でもバンドをしているから、俺達のバンドに興味を持ってくれた。

 俺が去年のステージで髪型をコーンロウというスタイルにしたのは、彼女がステージでコーンロウにしている写真を、俺が長谷部さんと久弥と悠人に見せた頃がきっかけだった。長い髪の毛を編み込んでもらう作業は時間がかかり、そして、芸術的な仕上がりになり、感動したことを覚えている。

 その彼女がこの間、ユーリーとビデオ通話をして初めて話した。流暢な日本語を話すマデリンというお母さんを見ているはずなのに、流暢な日本語を話すユーリーに驚いて、カタコトのドイツ語で挨拶したり、カタコトの英語等を口にしていた。そして、ユーリーが大笑いしたことで打ち解けた。

「そうだ。伊吹お兄ちゃんと沙羅叔母さんって似ているんだよ。どっちもずうずうしいんだ。だから、お兄ちゃんの性格は、マデリンからきているんだと思うよ」
「そうだろうか。おじいさんの方じゃないのか?面白い人だと言っていたじゃないか」
「そうだねえ。そう言われるとそうかも……。貨物船のスタッフとして日本からオーストラリアに渡ったときにマデリンと出会って好きになって、日本に連れて帰ってきたんだ。面白い人だったからマデリンが好きになったんだと思うんだ。オーストラリアへ向かう船の中で、スタッフ同士でいじめが起こって、おじいちゃんが報復としてみんなの晩ご飯を8人分まで食べてしまって、罰として船のマストにてっぺんにくくりつけられるってことをされても、へこたれずにいたんだ。それで、仲の良いスタッフの人とオーストラリアに降りたら船から逃亡して暮らそうって計画していたところで、そうならなかったのは、マデリンに会ったからなんだ。俺はラッキーなんだって言って、口説いたそうだよ。カタコトの英語でさ……。日本で山道を走っていたときに車がガードレールを突き破って川に落ちても、無事だったおじいちゃんなんだ。それを口説き文句にしたんだよ。おばあちゃん、日本語が得意だったから、伝わったんだ。どれも若い頃の話だよ~」
「ああ。すごいなあ。ああ、二人とも、待っているよ」
「あ、ほんとだ!」

 いつの間にか、書店の駐車場までたどり着いていた。見慣れた車のそばには黒崎と一貴さんが立っていて、俺達を見て笑っていた。
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