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13-1 黒崎家の法事
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1月25日、日曜日。午前6時。
今日は年に一度の黒崎家の法事がある日だ。午前10時にお寺に集まり、お坊さんの読経を聞く。先月チェックした黒崎家の亡くなった人達の名簿は印刷ミスはなくて、スムーズに法事の準備が出来ていった。今年から晴海さんが施主になるから、お義父さんはのんびりとしていた。その晴海さんとはお寺で待ち合わせだ。お正月も花の仕事で忙しく、4日にうちに遊びに来てくれた。少しやつれていたのが心配だった。
晴海さんの仕事は華道家の北岡さんのアシスタントだから、イベントで花を生ける仕事に同行している。お正月前は特に忙しくて、ホテルのロビーに生ける花の仕事で都内をあちこち移動して、お正月はお弟子さん達と集まり、北岡さんの家でおせちを食べたそうだ。そして、テレビ番組が華やかになるようにと花が生けられることになり、ある番組のお正月スペシャルでは、スタジオの花を晴海さんが担当して生けてある。その番組は録画してある。
来月にはプラセルのファッションショーがあり、ロビーに飾る花を北岡さんが担当するそうだ。それにも晴海さんが同行し、また忙しくなる。それに、北岡さんは南青山でフラワーショップも持っているから忙しい。かつて、聡太郎がバイトしていたお店だ。いろいろと接点があり、楽しいと思う。
俺は今、朝ご飯の準備を終えて、黒崎に先に食べて貰うことにした。今朝は洋食系だ。俺はおむすびだけでいい。昨日の夜にお菓子を食べ過ぎて、お腹がいっぱいだからだ。
それは、安斎さんからもらったお菓子だ。お正月に月島さんから貰ったかりんとうが美味しくてハマり、安斎さんが遠くの店で買ってきてくれて、おすそ分けしてくれた。それをほとんど全部食べてしまったわけだ。当然、黒崎からは叱られそうになった。しかし、アンを散歩に誘いに来たお義父さんが庇ってくれて、黒崎は今、静かに目玉焼きを食べ始めている。
「夏樹。お前も座って食べろ」
「立ったままでいいよ。座ったら腰が重くなるんだ。今日は忙しいからねえ。二葉が参加するって事で、ひそひそと噂話に花を咲かせていた親戚達が、彼女の周りに集まってくると思うんだ。あんただって忙しいよ」
「ああ。二葉には、こんにちはだけ言えと言ってある。それ以上の言葉を交わすことは無い。見れば分かるだろう。親父の娘だ。男だけどな。男物のスーツを着ているから、親戚達は納得する。ああ、男なのかと。そういう面はいい人達だ」
「そうだよね。詮索しないで受け入れるっていうのって、全員がそうだと思えないのに、この家はそうなんだってね。拓海さんがきっかけなのか~」
「ああ。いつまで経っても結婚しない純白叔母さんに嫌みを言っていた親戚達に、兄さんが、俺が女装してもいいのかと言ったことで、色々と詮索するなという、お触れのようなものが回ったわけだ。次期当主からのお触れだ」
「拓海さんから面倒を見られているんだって言って、あんたは偉そうにしていたんだろ?」
「親父からそう躾けられたんだ。兄さんから言われたわけじゃない」
「あんたは偉そうだよ。生まれながらの性格じゃないの?」
そう言って、俺は黒崎のことを眺めた。姿勢良く椅子に座り、目玉焼きを食べている。そして、俺の方を向いたときにはいかにも偉そうにして、お茶を飲み始めた。
「夏樹。目玉焼きの醤油を変えただろう?」
「うん。もう使いたかった醤油だったんだ。あんたの好きなおでんに使う醤油だけどさ。中途半端に残っていたから、それに使ったんだよ。だめなの?」
「いつもの醤油がいい。これはこれで美味い」
「ほらね。偉そうじゃん……。あんまり言うと、車に乗る前に置いて行かれそうだから、言わないでおくよ。うひゃひゃひゃ」
ふと、元旦の日のことを思い出して笑った。安斎さんの旦那さんが神社の駐車場で、奥さんのことを置いて車で走り出したときのことだ。すぐに戻ってきてくれたとはいえ、あれには驚いた。旦那さんも驚いていた。
黒崎が俺のことを置いていくとは思えないが、そういうこともあるかも知れないと思った。そういうわけで、最近は俺はまだ乗っていないからねと言って声を掛けるようにしている。その度に黒崎は俺に、ばかやろうと言っている。
今日は年に一度の黒崎家の法事がある日だ。午前10時にお寺に集まり、お坊さんの読経を聞く。先月チェックした黒崎家の亡くなった人達の名簿は印刷ミスはなくて、スムーズに法事の準備が出来ていった。今年から晴海さんが施主になるから、お義父さんはのんびりとしていた。その晴海さんとはお寺で待ち合わせだ。お正月も花の仕事で忙しく、4日にうちに遊びに来てくれた。少しやつれていたのが心配だった。
晴海さんの仕事は華道家の北岡さんのアシスタントだから、イベントで花を生ける仕事に同行している。お正月前は特に忙しくて、ホテルのロビーに生ける花の仕事で都内をあちこち移動して、お正月はお弟子さん達と集まり、北岡さんの家でおせちを食べたそうだ。そして、テレビ番組が華やかになるようにと花が生けられることになり、ある番組のお正月スペシャルでは、スタジオの花を晴海さんが担当して生けてある。その番組は録画してある。
来月にはプラセルのファッションショーがあり、ロビーに飾る花を北岡さんが担当するそうだ。それにも晴海さんが同行し、また忙しくなる。それに、北岡さんは南青山でフラワーショップも持っているから忙しい。かつて、聡太郎がバイトしていたお店だ。いろいろと接点があり、楽しいと思う。
俺は今、朝ご飯の準備を終えて、黒崎に先に食べて貰うことにした。今朝は洋食系だ。俺はおむすびだけでいい。昨日の夜にお菓子を食べ過ぎて、お腹がいっぱいだからだ。
それは、安斎さんからもらったお菓子だ。お正月に月島さんから貰ったかりんとうが美味しくてハマり、安斎さんが遠くの店で買ってきてくれて、おすそ分けしてくれた。それをほとんど全部食べてしまったわけだ。当然、黒崎からは叱られそうになった。しかし、アンを散歩に誘いに来たお義父さんが庇ってくれて、黒崎は今、静かに目玉焼きを食べ始めている。
「夏樹。お前も座って食べろ」
「立ったままでいいよ。座ったら腰が重くなるんだ。今日は忙しいからねえ。二葉が参加するって事で、ひそひそと噂話に花を咲かせていた親戚達が、彼女の周りに集まってくると思うんだ。あんただって忙しいよ」
「ああ。二葉には、こんにちはだけ言えと言ってある。それ以上の言葉を交わすことは無い。見れば分かるだろう。親父の娘だ。男だけどな。男物のスーツを着ているから、親戚達は納得する。ああ、男なのかと。そういう面はいい人達だ」
「そうだよね。詮索しないで受け入れるっていうのって、全員がそうだと思えないのに、この家はそうなんだってね。拓海さんがきっかけなのか~」
「ああ。いつまで経っても結婚しない純白叔母さんに嫌みを言っていた親戚達に、兄さんが、俺が女装してもいいのかと言ったことで、色々と詮索するなという、お触れのようなものが回ったわけだ。次期当主からのお触れだ」
「拓海さんから面倒を見られているんだって言って、あんたは偉そうにしていたんだろ?」
「親父からそう躾けられたんだ。兄さんから言われたわけじゃない」
「あんたは偉そうだよ。生まれながらの性格じゃないの?」
そう言って、俺は黒崎のことを眺めた。姿勢良く椅子に座り、目玉焼きを食べている。そして、俺の方を向いたときにはいかにも偉そうにして、お茶を飲み始めた。
「夏樹。目玉焼きの醤油を変えただろう?」
「うん。もう使いたかった醤油だったんだ。あんたの好きなおでんに使う醤油だけどさ。中途半端に残っていたから、それに使ったんだよ。だめなの?」
「いつもの醤油がいい。これはこれで美味い」
「ほらね。偉そうじゃん……。あんまり言うと、車に乗る前に置いて行かれそうだから、言わないでおくよ。うひゃひゃひゃ」
ふと、元旦の日のことを思い出して笑った。安斎さんの旦那さんが神社の駐車場で、奥さんのことを置いて車で走り出したときのことだ。すぐに戻ってきてくれたとはいえ、あれには驚いた。旦那さんも驚いていた。
黒崎が俺のことを置いていくとは思えないが、そういうこともあるかも知れないと思った。そういうわけで、最近は俺はまだ乗っていないからねと言って声を掛けるようにしている。その度に黒崎は俺に、ばかやろうと言っている。
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