青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 車が黒崎家の門を通り抜けて、庭を入って行った。通っていくときに、うちの家も見えた。壁には防犯カメラとセキュリティーライトが設置されているのが見えた。ここに引っ越してきた時は小さなライトだけだったのに、今ではあちこちに設置されてある。家族の数が増えて防犯上良くなったと思うのに、このライトの数かと、庭にも設置されている装置を見て、ため息をついた。

「黒崎さん。車庫までライトが多いよね。お義父さんの家まで来たらライトは減るよね。家が奥にあるから?」
「ああ。奥ほど用心しろとは思うが、夜になったらなったで明るい庭になる。親父の家まで多く取り付けると、遊園地のイルミネーションのようになる」
「そう言われるとそうだね~。クリスマスの時期になったらウケるかも。アレクシスさんの勉強部屋って、そんなにオバケの目撃情報があったの?」
「ああ。彼がドイツに帰国した後、誰もいない家の中で動いている霊を見た人が多くいたそうだ。だから壊したそうだ。着いたぞ」

 車が車庫の前まで来て停まったから、俺達は先に降りた。すると、眩しいほどの太陽の光が降り注いで来て、思わず目を閉じた。そして、庭の匂いが鼻をくすぐり、木の匂いが立ちこめていることに気づいた。

「ねえ、ユーリー。この庭が好きだろ?」
「ああ。もちろんだ。池でも遊んだことがあるんだよ。君は近づくのも禁止されているけど……」
「カズ兄さんもだよ。バシャンって落ちたからねえ。南波さんと一緒にさ。彼から連絡は来た?」
「来たよ。あけましておめでとうっていうラインと電話だ。明日、家の中から動画配信するからという知らせだった。あーーあ、付き合うはずだったのに……。そしたら僕は、明日は彼が配信しているのを観られたんだ……」
「ふうん。反省しているんだね……」

 やれやれと思いながら、ユーリーの背中をさすった。そういえば、今朝は稽古をしていなかった。昨日もそうだった。お正月だから休んだのだろうか。

「ねえ、ユーリー。昨日と今日は稽古をしていなかったね。お正月休みなの?」
「ああ。そういうことにした。それに、寒いからだ。町野先生のように裸足で過ごせるほどは寒さに強くない。夏樹。風邪を引かないな。僕がここに来てから、一度も寝込んでいない」
「うん。おかげさまで元気だよ。コンサートの後は寝込むかと思ったんだけどね。黒崎さんも元気だし、喘息の発作は起きていないし、ホッとしているよ」
「どうして圭一の入院先に見舞いに来なかったんだろうな……」

 ユーリーはぽつりとつぶやいた。俺もそれには頷ける。黒崎が小学生の時に喘息で入院している間、お義父さんとママは一度も来なかった。それなのに、俺は2人のことを嫌うなんて出来ないと思っている。

 私はそうされているの。ママが今日、俺とユーリーに教えてくれた話を思い出した。どういうわけかそうなるし、そうされるというのは、今見上げている空にある天からの指示や命令のようなものだろうか。月島さんが昨日、友達から入ったラインを見た後の顔が変わった二葉のことを見て、これを仕事というと言っていた。

 俺達は生かされている。それぞれの目的でこの地にいるのなら、その目的という物を知っておきたい。しかし、それを知らされることは無くて、毎日を暮らしている。どうして自分は産まれたのだろう。産まれてこなければよかった。そういうことを言った黒崎のことを思うと、胸が痛くなる。

「ねえ、ユーリー。あんたは自分がここにいる目的を知っている?産まれてきた理由だよ」
「いいや。気がついたら、ユリウスという名前だった。そして、月島君に追いかけられている身だ。いいな。過去世を見られるなんて。あ、一貴さんが危ない……」
「ほんとだ。アンにじゃれつかれて、池の方まで連れて行かれているよ。あ、お義父さん!ただいま~」

 いつの間にかお義父さんの家からアンが出てきていて、一貴さんのことを池まで連れて行こうとしている。そして、それを見て、お義父さんが笑っている。俺達が手を振ると、玄関から二葉も出てきて、俺達に手を振ってくれた。そして、そばに来たお義父さんに黒豆の甘煮を渡した。少しだけ苦い顔をしている。本当は黒崎だけが食べる予定だったが、みんなで食べようと決めた。

 すると、空がまた明るくなった気がして見上げると、今朝見たような大きな天使の羽のような雲が浮かんでいて、驚いた。そして、それをカメラで撮り、俺達は家の中に入っていった。
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