青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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13-30(黒崎視点)

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 19時前。

 俺達はコンビニを出て、宮川の家に向かって歩き始めた。俺の前には月島さんが夏樹と一貴のことを連れて歩いてくれている。そして、夏樹が満羽の手を繋いでいる。隣には一貴がいて、最近の株価動向と衣料品の値動きなどを話している。相手は満羽だ。一貴は9歳の子になったままだが、大人の話題を出している。久しぶりに同年代の子と話すのが嬉しいのだろう。そういう嫌みを言ってやりたかったが、やめておくことにした。満羽の前だからだ。かっこいいところを見せたいという気持ちだろうから、そっとしておきたい。

「真利奈。すまない。あの兄貴は変わっている。普通はあの年の子には、アニメの話とか、女の子が好きそうなコスメの話をするものだろうが……」
「きゃはは。コスメはまだ早いわよ。でもね、同じクラスの女の子が読んでいる漫画雑誌に、デパートで売っている化粧品の紹介がされていたそうよ。デパコスっていうのよ。知ってる?」
「ああ。聞いたことがある。そうなのか。小学生がデパコスに興味を持つのか。本当か?」
「本当に載っていたのよ。それでね、満羽が隣のクラスの子が、お母さんのデパコスを学校に持ってきていて、満羽ったら、私にこう言うのよ。デパコスなんてリッチねって。すごいわ、憧れるという意味よ。学校で色んな事を覚えて帰ってくるのよ。それを義父が面白がってねーー。マイナンバーカードってあるじゃない。病院に行ったときにカードリーダーで読み込んで、本人認証をするんだけど、あれ、顔認識ができるのよ。そこで義父がそれを話題に出して、満羽に、“お前のお母さんはカードの顔写真が実物と違うんだ。盛ってあるからだ。だから、病院の受付で顔認識ができないんだぞ“って、言ったのよ。それ聞いて、アタシは盛っていないから!って否定しておいたわ。お義母さんも止めてくれてね。そんなことないわよって。それで、満羽にカードの写真を見せたら、いつものお母さんだって言ってくれたのよ。義父は口が悪いのよ」
「幸せにやっているじゃないか」
「うん。そうだと思う。私と旦那が帰ってくるまで、満羽は義父の家で面倒を見て貰っているの。宿題をしながら義父の話を聞いて、色々と影響を受けているわよ。話題はこんなのよ。全国ニュースとかネットの記事とか、新聞の記事からいくつか話題に選んで、親が死んだ後で遺体を放置して捕まった息子の話とかを話し始めて、親が死んだら火葬しないといけないことと、そういうのは葬儀屋さんが詳しいから、親が死んだら葬儀屋を呼ぶんだぞと教えてくれたそうよ。それと、“おじいちゃんはあと何年後に死ぬから、後のことは任せたとか” ……。死生観を語って教えることもあるのよ」
「田川永さんの死生観か。9歳の子にか……」

 孫が可愛いのだろう。俺はそう思った。一人息子のところに生まれた一人娘だ。話題としてはもっと可愛らしい物を想像していたが、そんな話をするなんて思わなかった。田川永さんの10代の頃の話は聞いてある。父の後妻に可愛がられなかったという話だった。

 当時虫歯があった永さんは歯医者に通っていて、なるべく柔らかい物を食べるように言われていたが、ある日、後妻がステーキ肉を夕食に用意したそうだ、ところがそれが固い肉で、治療中の歯を持つ永さんは噛むのが辛くて、しかし残したら父から叱られるからと、かみ切れない肉と飲み込んで完食したそうだ。後妻の子供である弟2人には、軟らかい肉が用意されていたそうだ。

 永さんは生みの母を9歳の時に病気で亡くし、翌年、父親に後妻がきた。永さんは一人息子だった。長男である永さんは祖父母から大事にされたそうで、後妻も最初はそうだったらしいが、自分の子供が生まれた後は辛く当たってきて、永さんは12歳から全寮制の学校に通い、実家を離れた。しかし、夏休みや冬休みには帰宅が必要で、そこで、固い肉が出されたというエピソードが生まれた。
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