青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺達は静かに警察と消防の到着を待った。そして、その間に、数多くの近所の人が集まった状態になった。中には泣いている高齢の女性もいた。一貴さんも泣き出して、黒崎が涙を拭いてやっている。宏尚君の声はたった一度だけ聞こえただけだ。さすがに外までは聞こえないのか。すると、真利奈さんが首を横に振った。

「夏樹君。そうでもないのよ。この家、構造は普通だと思うだけど、室内の声が外まで聞こえるんだって噂だったのよ。だから、住人がよく変わるんだと思っていたの。外の声も聞こえるってことだろうと思っていて……。泣き止んだのかしら。どうなっているのかしら……」
「もうすぐで警察が来ると思うから、またインターフォンを鳴らさない方がいいですよ。相手が迷惑を掛けられたって主張してくるケースがあるって聞いたことがあるんです」
「そうなのね……。あ、来てくれた!」

 するとその時だ。遠くの方から、パトカーのサイレンがいくつも重なって聞こえてきた。そして、その音はだんだんと近くに来て、3台のパトカーと、1台の普通車がサイレン灯を灯して、家の前に到着した。集まっている俺達と近所の人は道を空けて、下りてきた警察官に対して、通報者の黒崎が手を振った。

「あなたが通報をされた方ですか?」
「はい。黒崎です。この家の住人の同級生です。……夏樹。動画を撮っている人が居るかも知れない。画面に映らないようにしろ」
「うん。満羽ちゃん、こっちに来ようね」
「うん。あ、消防車だ!……美紀ちゃん!今助けるからね!」

 すると、消防車のサイレンが近づいてきた。レスキュー車もだ。そして、家のそばに到着した。そして、数人の消防隊が下りてきた。警察官と話をしている人も居る。その間に警察がインターフォンを鳴らし、奥さんが出てくるのを待ち始めた。しかし、何度鳴らしても応答が無いようで、俺たちはまさかという思いがよぎった。まさか無理心中などでは無いかという思いだ。

 そして、集まっている近所の人達がまた場所を移動した。警察と消防隊員が、ベランダにいる美紀さんのことを救出するためだ。それにはレスキュー車からハシゴが出されて、すぐにベランダに組まれた。もうすぐで助けられる。体温は大丈夫だろうか。そんなことをハラハラしながら見守っている間も、一貴さんが満羽さんと月島さんとで美紀さんに話しかけている。安心させるためだ。玄関には数人の警察官がいて、中から奥さんが出てくるのを待っている。

「夏樹。ベランダから中に入るそうだ」
「それしか無いよね……。あ、たどり着いた……」

 ベランダには数人の消防隊が立ち、美紀さんに話しかけた。そして、俺にはこういう姿が見られた。ベランダに居る5体の霊体が美紀さんのそばに集まり、すっと消えていく姿をだ。そして、美紀さんに光が差した後、俺は自然と涙が流れた。月島さんに聞くと、あの光は、美紀さんと宏尚君のことを守っている先祖だということだった。

 そして、彼女のことを背負うようにして装置が取り付けられた。辺りは灯りが灯されるように明るくなり、それはパトカーのサイレンからの光なのか、消防隊員が付けている灯りなのかと思った。しかし、それだけではないようだった。空は快晴で、満月だから月が大きくて、しかも、スーパームーンという月だから、夜なのに明るいのだと分かった。

 そして、少し経ち、ハシゴを伝って、美紀さんのことが救出されて、みんなから自然とため息が漏れた。安堵のため息と、こういうことが起きて残念だというため息だと思った。消防隊員に背負われた美紀さんは小さく震えていて、すぐに毛布が掛けられて、救急車の担架に寝かされた。そして、彼女が満羽さんの名前を呼んだ。

「満羽ちゃん……」
「美紀ちゃん、ごめんね!宏尚君にも謝るからね!警察の人が家の中に入っていくんだって!だから、助けて貰えるよ!」
「うん……。おばさん……」

 美紀さんが真利奈さんのことを呼んだ。真利奈さんはそばに居て、毛布にくるまれている美紀さんは手を伸ばすことができなくて、涙を流し始めた。そんな美紀さんに、真利奈さんがもう大丈夫だと言った。そして、美紀さんが救急車の中に運ばれていった。

「……おい!」
「止まって下さい!」
「え……」

 すると、玄関から物音がした後、大柄な男性が飛び出してきた。警察官が静止させようと取り囲んでいる。しかし、一人の男性警察官に攻撃するように何度も身体を押し、門の外まで出てきた。そして、逮捕された。公務執行妨害だ。そういうことだと思った。

 そして、すぐに警察官と消防隊員が家の中に入り、男の子を救出したという報告が聞こえてきた。怪我はしていないだろうか。俺達がそっと見守っている中、担架が運び込まれて、毛布にくるまれている宏尚君が救出されて家の中から出てきた。その姿にも光が灯っていた。

「宏尚君!」
「満羽!」

 満羽さんが飛び出して宏尚君のそばに行こうとして、真利奈さんが止めた。宮川さんが暴れ始めたからだ。そして、数人の警察官によって宮川さんが警察車両に乗せられた。さらに家の中から女性が出てきたが、女性警察官と男性警察官に付き添われて歩き、その足下はフラついているようだった。

 その姿を見守り、そして、俺達は辺りが静かになるまで待ち、事情を説明するということで、真利奈さんと黒崎が警察官と話を始めた。そして、場所を警察署に移すことになった。俺は満羽さんと一貴さんとで手を繋ぎ、今日のことを忘れられないと思って、唇を引き締めた。
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