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14-44(黒崎視点)
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17時。
母から電話が掛かってきて、俺は玄関のそばに移動して話した。そろそろ気温が下がることだ。みんなには家の中に入ってもらい、俺もそうした。
母が心配しているのは志乃のことだ。元旦の翌日に夏樹とユーリーが母から自分が霊能者であると打ち明けられて、志乃の家族の思考を読み取り、2人に伝えた。そして、今回のことが起きたことで、母の力は本当なのかもしれないと思った。
父が興味を持ったのは母の霊能力だったのなら、それが正しいのか検証されただろう。そして、当たっていると判断したのだろう。霊能者といえば月島さんだ。俺が彼のことは疑っていない。言っては悪いが、気味が悪いほどに予知が的中するからだ、だから、名前を見るだけその人が考えていることが読み取れるというのは本当のことだと思った。
俺が母に聞きたいのは、志乃の兄貴の気持ちだ。母親から金銭援助を受けて、それが妹の貯金だったと知っていたのかということ、そして、妻も知っていたかということだ。
黒崎製菓で勤務しているうちに、嫁というのが立場が弱いもので、兄嫁が、弟嫁がという話題を聞いたことがある。愚痴だと思ったが、その中には志乃のような話があったに違いないと思った。“兄嫁”、“お兄ちゃんの奥さん”の悪口を言うのはいけないことだとたしなめている社員がいた。しかし、弱い立場だとは限らないだろうと思っている。夫の親のことをコントロールしようとする女性は一定数存在する。それは田所常務から聞いたばかりだ。そして、母というのは、優秀な娘に嫉妬をするケースも一定数あるのだと学んだ。
自分の子供が優秀なら自慢になるだろう。それが多くの親だと思う。しかし、母親の中にはそう思っていない人が居るのだと、俺は田所常務から聞いた。多くの人と接してきた彼女が導き出した答えだ。あなたはいいわね、良い会社に勤められてなどと娘に言う母親が居るそうだ。私なんか可哀想。そんなことまでいう人が居ることも聞いた。
俺の母がそういう人ではないと分かった。二葉のことを傷つけたが、二葉名義の貯金を使い込むなどする人ではない。倉口はそうした男だったが、母は違う。だから、俺の中で、母の事を酷い女だという気持ちが薄れてきている。
「もしもし。すまない。またせた。今なら話せる」
「もしもし。志乃ちゃんはお母さんに会ったのかしら?」
「ああ、もう会って済んであるそうだ。志乃さんから二葉に電話が掛かってきていた。あんなに怒りを持って娘に帰ってこいと言ったお母さんだが、志乃さんが帰ると、静かだったそうだ。喫茶店で待ち合わせなんてなんのこと?とまで聞いてきたそうだ。お父さんから離婚を切り出されたそうだ」
「ああ、そうなったのね。前に離婚したときは、志乃さんが小さかったから復縁したのよ。それに、自分が嫌ったとは言え、息子の生活のこともあるから、母親1人では立ちゆかないと思ったんでしょう。今回は2人とも大人だから、復縁はないでしょう」
そこで俺は、志乃の貯金が使われた経過を話した。母は驚いていなかった。そして、俺は志乃の兄貴がこのことを知っているのかと母に聞いてみた。母はこう言った。知っていることだし、奥さんも勘づいているのよと。
「勘づいているのか。知っているんでは無いんだな」
「お母さんが北岡家の貯金から出産費用を渡したのなら、堂々と渡すと思うのよ。その時のお母さん、いけないことをしているという気持ちがあったし、お嫁さんも勘づいているわ。だって、こそこそしているんだもの。どこから出たお金なのかって思ったと思うわ。名前分かる?」
「博美さんというそうだ」
「今、分かったわ。お嫁さんは、志乃さんの名義の貯金だって分かっているわ。……お兄さんが生まれたときのことと、実の父親の話は聞いてある?」
「ある。妻子持ちの男と交際して子供が出来て産まれたのが、志乃さんの兄貴だ。お兄さんの奥さんも同じことをしたそうだ。奥さんには姉2人がいるが、一番上の姉の夫が交際相手で、子供が生まれた。その後で別れた後、お母さんの職場に就職してきて、子供を1人で育てているなんて大変だという話題が出て、親しくなったそうだ。奥さんの実家の両親は亡くなっている。親戚とは縁を切られたそうだ。そこで、自分の息子の嫁にしたいと思って、見合いをさせたそうだ。実の姉の夫と交際なんて、俺なら見合いをさせないがな……」
「お母さんがお嫁さんと出会ったとき、自分と同じだから、気持ちが分かる、仲間がいたっていう気持ちだったのよ。お母さんは可哀想な人が好きっていう人が居たわね。月島さんが霊視した田川真利奈さんのお母さんのことよ。お母さん同士は似ているんだけど、志乃ちゃんのお母さんは同志を見つけたっていう思いで、お嫁さん事を見ているわ。こういう言い方は悪いけど、しっかりした人がお嫁さんだと、親もしっかりしているでしょう。親同士の付き合いが面倒なお母さんにとっては都合が良かったのよ。それと、暴れる男の子だった息子には、早く女の人を作ってあげないといけないって思って、ちょうどよかったのよ。彼女が欲しくてたまらないのに一歩が踏み出せない内向的な息子さんは、自分に女の人を作ってくれたお母さんに感謝して、言うことを聞きたいと思っているわ」
「頭が痛い気する……」
「私も同じよ」
頭が痛くなった。志乃の貯金は返ってくるとは思えないが、そうなるだろうかと母に聞いてみると、これは天の意志で、志乃から渡されたものとして受け取らせたようなもので、しかし、母は罪を犯したも同然で、報いは来ると言われた。だから、結局のところ、貯金は返ってくるそうだ。それはおばあさんだという。
母から電話が掛かってきて、俺は玄関のそばに移動して話した。そろそろ気温が下がることだ。みんなには家の中に入ってもらい、俺もそうした。
母が心配しているのは志乃のことだ。元旦の翌日に夏樹とユーリーが母から自分が霊能者であると打ち明けられて、志乃の家族の思考を読み取り、2人に伝えた。そして、今回のことが起きたことで、母の力は本当なのかもしれないと思った。
父が興味を持ったのは母の霊能力だったのなら、それが正しいのか検証されただろう。そして、当たっていると判断したのだろう。霊能者といえば月島さんだ。俺が彼のことは疑っていない。言っては悪いが、気味が悪いほどに予知が的中するからだ、だから、名前を見るだけその人が考えていることが読み取れるというのは本当のことだと思った。
俺が母に聞きたいのは、志乃の兄貴の気持ちだ。母親から金銭援助を受けて、それが妹の貯金だったと知っていたのかということ、そして、妻も知っていたかということだ。
黒崎製菓で勤務しているうちに、嫁というのが立場が弱いもので、兄嫁が、弟嫁がという話題を聞いたことがある。愚痴だと思ったが、その中には志乃のような話があったに違いないと思った。“兄嫁”、“お兄ちゃんの奥さん”の悪口を言うのはいけないことだとたしなめている社員がいた。しかし、弱い立場だとは限らないだろうと思っている。夫の親のことをコントロールしようとする女性は一定数存在する。それは田所常務から聞いたばかりだ。そして、母というのは、優秀な娘に嫉妬をするケースも一定数あるのだと学んだ。
自分の子供が優秀なら自慢になるだろう。それが多くの親だと思う。しかし、母親の中にはそう思っていない人が居るのだと、俺は田所常務から聞いた。多くの人と接してきた彼女が導き出した答えだ。あなたはいいわね、良い会社に勤められてなどと娘に言う母親が居るそうだ。私なんか可哀想。そんなことまでいう人が居ることも聞いた。
俺の母がそういう人ではないと分かった。二葉のことを傷つけたが、二葉名義の貯金を使い込むなどする人ではない。倉口はそうした男だったが、母は違う。だから、俺の中で、母の事を酷い女だという気持ちが薄れてきている。
「もしもし。すまない。またせた。今なら話せる」
「もしもし。志乃ちゃんはお母さんに会ったのかしら?」
「ああ、もう会って済んであるそうだ。志乃さんから二葉に電話が掛かってきていた。あんなに怒りを持って娘に帰ってこいと言ったお母さんだが、志乃さんが帰ると、静かだったそうだ。喫茶店で待ち合わせなんてなんのこと?とまで聞いてきたそうだ。お父さんから離婚を切り出されたそうだ」
「ああ、そうなったのね。前に離婚したときは、志乃さんが小さかったから復縁したのよ。それに、自分が嫌ったとは言え、息子の生活のこともあるから、母親1人では立ちゆかないと思ったんでしょう。今回は2人とも大人だから、復縁はないでしょう」
そこで俺は、志乃の貯金が使われた経過を話した。母は驚いていなかった。そして、俺は志乃の兄貴がこのことを知っているのかと母に聞いてみた。母はこう言った。知っていることだし、奥さんも勘づいているのよと。
「勘づいているのか。知っているんでは無いんだな」
「お母さんが北岡家の貯金から出産費用を渡したのなら、堂々と渡すと思うのよ。その時のお母さん、いけないことをしているという気持ちがあったし、お嫁さんも勘づいているわ。だって、こそこそしているんだもの。どこから出たお金なのかって思ったと思うわ。名前分かる?」
「博美さんというそうだ」
「今、分かったわ。お嫁さんは、志乃さんの名義の貯金だって分かっているわ。……お兄さんが生まれたときのことと、実の父親の話は聞いてある?」
「ある。妻子持ちの男と交際して子供が出来て産まれたのが、志乃さんの兄貴だ。お兄さんの奥さんも同じことをしたそうだ。奥さんには姉2人がいるが、一番上の姉の夫が交際相手で、子供が生まれた。その後で別れた後、お母さんの職場に就職してきて、子供を1人で育てているなんて大変だという話題が出て、親しくなったそうだ。奥さんの実家の両親は亡くなっている。親戚とは縁を切られたそうだ。そこで、自分の息子の嫁にしたいと思って、見合いをさせたそうだ。実の姉の夫と交際なんて、俺なら見合いをさせないがな……」
「お母さんがお嫁さんと出会ったとき、自分と同じだから、気持ちが分かる、仲間がいたっていう気持ちだったのよ。お母さんは可哀想な人が好きっていう人が居たわね。月島さんが霊視した田川真利奈さんのお母さんのことよ。お母さん同士は似ているんだけど、志乃ちゃんのお母さんは同志を見つけたっていう思いで、お嫁さん事を見ているわ。こういう言い方は悪いけど、しっかりした人がお嫁さんだと、親もしっかりしているでしょう。親同士の付き合いが面倒なお母さんにとっては都合が良かったのよ。それと、暴れる男の子だった息子には、早く女の人を作ってあげないといけないって思って、ちょうどよかったのよ。彼女が欲しくてたまらないのに一歩が踏み出せない内向的な息子さんは、自分に女の人を作ってくれたお母さんに感謝して、言うことを聞きたいと思っているわ」
「頭が痛い気する……」
「私も同じよ」
頭が痛くなった。志乃の貯金は返ってくるとは思えないが、そうなるだろうかと母に聞いてみると、これは天の意志で、志乃から渡されたものとして受け取らせたようなもので、しかし、母は罪を犯したも同然で、報いは来ると言われた。だから、結局のところ、貯金は返ってくるそうだ。それはおばあさんだという。
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