青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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14-47(夏樹視点)

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 18時。

 南波さんが帰る時間になった。夜食のビーフシチューとパンの入った容器を紙袋に詰めて、彼に渡した。ユーリーが寂しそうだ。今の様子も配信で流れている。明日は朝早くからおじいさんの家に遊びに行くということで、今日は早めに帰ることになった。

「南波さん。明日は雨だから、気を付けて行ってきてね。車の運転は大変だね」
「大丈夫だよ。うちのおじいちゃん、足を骨折してね。うちのお母さんが泊まっているんだけど、僕も何かしないといけないと思って……」
「そうなんだね!遊びに行くって行っていたから、元気なんだと思っていたよ。いつ怪我をしたの?」
「先週だよ。おばあちゃんもいるから大丈夫だって言っていたんだけど、おばあちゃん、腰痛があるんだ。おじいちゃんの世話で腰が痛くなってさーーー。あははは。久弥さん、また放送に出てください」
「喜んで。気を付けてな!」

 久弥が手を振った。彼は今日ここに泊まることになった。アレクシスさんが興味を持った心霊スポットに同行するためだ。それは近所にあるコンビニの駐車場だ。オバケの目撃例が多発していて、夜中に行くことにした。

 南波さんのことを黒崎が車で送っていく。ユーリーには家に居てもらうと黒崎が言ったから、彼が大人しくした。やっぱり友達づきあいだ。今日、彼は南波さんのことを諦めると発言した。南波さんから改めてフラれたからだ。

 初めてこの庭で出会った時はユーリーに心がときめいた南波さんだったが、ユーリーの二股疑惑で心が折れて、一瞬だけ燃え上がった恋の炎は沈下されたと言い切った。それに、月島さんに対するユーリーの態度を見て、恋心がそっちに移っていると思うよと指摘までしていた。ユーリーはそのことを認めた。毎日連絡が入るからだと、プリプリ怒っていた。

「南波さん。また来てね」
「もちろんだよ。ユリウスさん。もう一度、月島さんと食事をするといいよ。よく考えて。僕じゃユリウスさんのことを止められないんだ。今日だって、副社長からツッコミを受けて泣きそうになって怒りだして、僕じゃ落ち着かせられなかったんだ。それなのに、月島さんから電話が掛かってきたら、急に機嫌が良くなったでしょう。アレクシスさんにだって止められなかったんだ。ユリウスさんさ、月島さんと話し始めたら、もっと機嫌が良くなっていたよ。恋のおまじないでもされたんじゃないの?」
「嫌なことを言わないでくれ。僕は君のことが……。ああ、いけない。もう言わない約束だった」

 ユーリーが言いとどめた。きちんと諦めたという証だと分かった。南波さんはいわば失恋状態であり、それはユーリーが相手で、心の傷を癒やすのには時間が掛かるだのと言っていた。しかし、友達づきあいをしていきたいから、これからも連絡するよと言ってくれた。ユーリーはもう口説かない約束をした。

 すると、南波さんがアレクシスさんのことを見て笑い出した。さっき、ユーリーの口まねをして口説くという冗談をしたからだ。それがそっくりそのままで驚き、まるで本人みたいだと言っていた。俺もその場にいて驚いた。

 南波さんからすると、アレクシスさんは気難しい人なのでは無いかと思っていたそうだ。ユーリーがそうだからだ。しかし、実際に会ってみると良いお兄さんで、穏やかだし話しやすいしということで、想像だけでは分からないという体験が出来たと言ってくれた。

 そのアレクシスさんはダメージジーンズに着替えていて、リラックスムードだ。俺もそうだったが、ドイツにある城から出かけてきた紳士みたいな人だと想像していたのに、全然そんなことが無くて、実はがっかりもしている。かっこいい人だが、違う意味で、すごくかっこいい人だと期待していたからだ。黒崎がいい男ではあると言っていたからでもある。

 それは南波さんも同じだったそうで、日本でよく見かける人だという印象で、城から出てきた人みたいじゃなくて、酔っぱらって道で寝ている感じもあり、どうしてユーリーのお兄さんがヤンキー口調なんだということで、それには驚いたそうだ。

 さて、俺達は玄関で南波さんのことを見送ることにした。ばいばいと手を振り、黒崎の後を歩いて、ドアを閉める姿を見守った。
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