青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 少し歩いていると、風が吹いてきた。キャンパスに植えられている木の匂いもして来た。そして、花壇があり、花が植えられていて、満開になっていた。すると、お義父さんが俺に声を掛けてきた。そして、向こうにある花を見るようにと言われた。

「夏樹。お前の誕生花だ。4月20日はシバザクラだ。一面に咲いてある」
「ほんとだ!午前中は気がつかなかったね。こっちの方向に来ていなかったからだね」
「ああ、綺麗に咲いている。今村先生。今日はこの子の誕生日でしてね」
「そうだったんですか!おめでとうございます。こちらのシバザクラは、毎年……の方でオーダーして、……で、それで、こうしまして……。それで……」
「ああ、手が込んでいますね。ははは。良い物を見ました」

 お義父さんがシバザクラを見てため息をついた。それだけ綺麗だからだ。花言葉は花の横に説明が載ったプレートが置かれているから分かった。燃える恋、合意、忍耐、臆病な心だということだ。花の色によっても意味が違うのだろう。

 すると、三橋君が、それならと言いだした。偶然にも、4月20日の誕生花が花壇で咲いているそうだ。4月20日繋がりだから偶然だなと思いつつ、理事長の誕生日でも、創設者の誕生日でもないのに不思議だと思っていたそうだ。

「この花はディモルフォセカです。花言葉は、富、豊富です」
「あ、たしかに今日の誕生花だよ~。オレンジ色の花も綺麗だねえ」

 目の前の花壇にはその花が咲いていた。うちでも植えようと晴海さんが言っていたが、庭のコーディネートとしては、黄色の花が良いということで、別の花を植えてある。ミモザだ。

「お義父さん。俺、今日はラッキーだったよ。自分の誕生かを二つも見られたんだから」
「ああ、そうだね。ん?こっちに誰か来るようだ」
「ああ、上楽先生です。朝陽君が一番最初にこの大学で授業を受けた先生でしてね……。そうです。午前中に倒れた先生です。もう大丈夫なんですよ」
「そうでしたか……」

 今村先生が片手を上げると、向こうに居る男性が頷き、こっちに向いてペコッと頭を下げた。そこで、もちろん俺達も頭を下げた。そして、俺達のそばに来たのはたしかに若い先生で、今村先生の方から、改めて、上楽先生だと紹介を受けた。

「初めまして。上楽です」
「初めまして。黒崎隆です。……女性かと思いました。失礼しました」
「すみません。僕、髪の毛が長いので……」

 俺達は上楽先生の見た目に驚いた。金髪の髪の毛を長くしている。根元は黒いから、染めているのだと分かった。うっすらメイクもしているのだと言うことも分かった。だから、お義父さんが女性だと間違えて、エスコートしようとしていた。そして、男性だと分かり、手を止めた。バンドをしているのだろうか。そういう空気感がある。なぜだか俺には分かるようになった。
 
 そこで、黒崎の方から上楽先生に聞いてくれた。何かバンドをしていませんかと。そこで、上楽先生が微笑み、ジャズバンドで歌っているのだと答えた。それには話に花が咲き、みんなが微笑んだ。まずはお義父さんから上楽先生に話しかけた。

「この子も歌を歌っています」
「はい。存じ上げております。黒崎夏樹さんですね。今村先生からお聞きしています。今日は朝陽君に会いにいらっしゃったとか……」
「はい。午前中に会えました」
「実は学長室に忘れ物があって、取りに来られたんだ」
「そうだったんですか。ああ、僕が倒れたこともご存じで。恥ずかしいです」

 今村先生からの説明に、上楽先生が顔を赤くした。色が白いから目立っている。なんだか本当に女の人見える。線が細い感じがして、たしかに貧血で倒れそうなイメージがある。そして、彼がユーリーと目が合った。お互いに微笑んで、ペコッと頭を下げ合った。

「こんにちは。ユリウス・バーテルスです」
「こんにちは。上楽桜生おうせいです。来月の記念講演にいらっしゃるそうですね。今村先生から聞きました。あ、三橋君。僕は平気だよ」
「先生。無理をしないでください」

 上楽先生の脇を支えるようにして、三橋君が先生の後ろに立った。また倒れそうなのだろうか。俺は心配になった。すると、先生がフラッと身体を倒し、三橋君が支えた。しかし、思ったよりも前に倒れそうになり、そばにいたユーリーが先生の身体を抱きかかえるようにして腕に抱いた。

「彼が倒れた!」
「病院に搬送します!」

 三橋君の判断により、上楽先生が隣にある病院に搬送されることになった。今村先生が病院に連絡を入れ始めて、三橋君が先生の手首を取り、脈を測り始めた。すると、保健室のある方から生徒達が来て、担架を運んできた。白衣姿の人も居る。お医者さんなのだと分かった。そして、上楽先生が担架に乗せられて、手当が行われ始めた。
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