584 / 938
17-5
しおりを挟む
俺達はユーリーの寝起きを見つめた。パジャマ姿だ。涼しそうな素材のそれは、俺達からプレゼントした物だ。一貴さんとお揃いにしてある。もらった時のユーリーは笑っていた。この年になってお揃いは無いだろうという反応だった。この家で色違いで来ているなんて面白いだろうと思って、俺が選んだ。どうせ部屋の中でしか着ない。みんな、部屋から出てくるときは服に着替える決まりを守っている。パジャマ姿でウロウロするのはマナー違反とされている。寝起き顔でうろつくのもいけない。顔を洗ってからでないと部屋から出てきてはいけない。
この家にはそれぞれの部屋にトイレとバスルームが設置されてある。各家族はそこで汚れを落とし、家の中を歩く決まりだ。大浴場なんてない。だから、家族との繋がりが薄れがちな感じはあると思う。家族との距離の取り方が問題になると思う。小さかった頃の黒崎は親とお風呂に入ったことが無く、お手伝いさんに手伝われて入っていたというから、パパ、ママと無邪気に親のことを呼んで走り回っていたという記憶が無い。だからなのか、俺は少しだけ姿が見えないだけで騒ぎ出す。子供の頃に安心感が与えられなかったからだと思っている。
では、ユーリーはどうだろうか。物心ついたときはアレクシスさんとお風呂に入った記憶があるというから、距離の取り方は普通だと思う。エミリアさんがよく面倒を見て、悪戯だってたくさんしたという。この家の中で唯一の遊び回った子供だったはずだ。しかし、ルールはルールということで、きちんとした格好でないと部屋から出てこない。今の姿は珍しい。ここはユーリーの部屋の中だからだ。
「夏樹。圭一。すまないけど、僕は起き上がれない。引っ張ってくれ……」
「いいよ。ぐーーーー」
ユーリーの手を取って引っ張った。なるべく優しい力でだ。すると、手が熱いことに気がついた。熱があるのでは無いだろうか。
「ユーリー。手が熱いよ。額に触るよ」
「ああ。風邪を引いた感じはしないけど……」
「どれどれ……」
ユーリーの額に触った。しかし、熱はないように感じた。しかし、念のために熱を測って貰うことにした。そこで、ベッドサイドの小物入れを探り、体温計を取り出した。どうして入っている場所が分かるかというと、この家の決まりだからだ。具合が悪くて起き上がれないときのために、家の中専用の電話も備えられている。まるでホテルの部屋の中のようだ。
「ユーリー。脇に挟んで……」
「分かった。看病されるって良いものだな。大事にされている気になれる」
「何を言っているんだよ。あんたのことはみんな大事にしているよ」
これは短時間で検温できるタイプの体温計だ。ユーリーが脇に挟むとすぐに検温が完了し、36.1度という体温が表示された。ごく普通の体温だ。
「36.1度だよ。熱は無いね。でも、熱を出す前かも……。ゆず茶を作ってあげる」
「ジンジャーシロップの方が良い」
「そっか。そうするよ。キッチンを借りるよ~」
「ああ。ありがとう」
この部屋には小さなキッチンが付いている。そこで俺は飲み物を作ることにした。シンクはピカピカに磨き上げられている。ユーリーも洗うと思うが、掃除のプロの腕前の山崎さんが磨いたおかげだ。床には埃一つ落ちていない。ふきんなどのタオル類も山崎さんが洗濯してくれている。だから、いつも清潔なタオルを使うことが出来る。この家のお手伝いさんは大忙しだ。家族数が多い分、用事が多い。
カチャ。ゴトゴト。ケトルでお湯を沸かした。そして、マグカップにジンジャーシロップを入れて、お湯を注いだ。すると、ショウガの良い匂いが広がった。俺もこの飲み物が好きだ。使った後のマグカップはどうしているかというと、シンクに置いておけば、お手伝いさんが洗ってくれる。ユーリーが洗うときもある。掃除は午前10時から10時半の間に入る。その間、寝込んでいなければ、リビングに移動する決まりだ。
この家にはそれぞれの部屋にトイレとバスルームが設置されてある。各家族はそこで汚れを落とし、家の中を歩く決まりだ。大浴場なんてない。だから、家族との繋がりが薄れがちな感じはあると思う。家族との距離の取り方が問題になると思う。小さかった頃の黒崎は親とお風呂に入ったことが無く、お手伝いさんに手伝われて入っていたというから、パパ、ママと無邪気に親のことを呼んで走り回っていたという記憶が無い。だからなのか、俺は少しだけ姿が見えないだけで騒ぎ出す。子供の頃に安心感が与えられなかったからだと思っている。
では、ユーリーはどうだろうか。物心ついたときはアレクシスさんとお風呂に入った記憶があるというから、距離の取り方は普通だと思う。エミリアさんがよく面倒を見て、悪戯だってたくさんしたという。この家の中で唯一の遊び回った子供だったはずだ。しかし、ルールはルールということで、きちんとした格好でないと部屋から出てこない。今の姿は珍しい。ここはユーリーの部屋の中だからだ。
「夏樹。圭一。すまないけど、僕は起き上がれない。引っ張ってくれ……」
「いいよ。ぐーーーー」
ユーリーの手を取って引っ張った。なるべく優しい力でだ。すると、手が熱いことに気がついた。熱があるのでは無いだろうか。
「ユーリー。手が熱いよ。額に触るよ」
「ああ。風邪を引いた感じはしないけど……」
「どれどれ……」
ユーリーの額に触った。しかし、熱はないように感じた。しかし、念のために熱を測って貰うことにした。そこで、ベッドサイドの小物入れを探り、体温計を取り出した。どうして入っている場所が分かるかというと、この家の決まりだからだ。具合が悪くて起き上がれないときのために、家の中専用の電話も備えられている。まるでホテルの部屋の中のようだ。
「ユーリー。脇に挟んで……」
「分かった。看病されるって良いものだな。大事にされている気になれる」
「何を言っているんだよ。あんたのことはみんな大事にしているよ」
これは短時間で検温できるタイプの体温計だ。ユーリーが脇に挟むとすぐに検温が完了し、36.1度という体温が表示された。ごく普通の体温だ。
「36.1度だよ。熱は無いね。でも、熱を出す前かも……。ゆず茶を作ってあげる」
「ジンジャーシロップの方が良い」
「そっか。そうするよ。キッチンを借りるよ~」
「ああ。ありがとう」
この部屋には小さなキッチンが付いている。そこで俺は飲み物を作ることにした。シンクはピカピカに磨き上げられている。ユーリーも洗うと思うが、掃除のプロの腕前の山崎さんが磨いたおかげだ。床には埃一つ落ちていない。ふきんなどのタオル類も山崎さんが洗濯してくれている。だから、いつも清潔なタオルを使うことが出来る。この家のお手伝いさんは大忙しだ。家族数が多い分、用事が多い。
カチャ。ゴトゴト。ケトルでお湯を沸かした。そして、マグカップにジンジャーシロップを入れて、お湯を注いだ。すると、ショウガの良い匂いが広がった。俺もこの飲み物が好きだ。使った後のマグカップはどうしているかというと、シンクに置いておけば、お手伝いさんが洗ってくれる。ユーリーが洗うときもある。掃除は午前10時から10時半の間に入る。その間、寝込んでいなければ、リビングに移動する決まりだ。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる