青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 決まりが多い家だなと、俺はこの家に来てからそう思った。しかし、家族が多かったというから、そうしないとまとまらなかったのだろう。お義父さんはここで一人暮らしをしていたときもルールを守っていたそうだ。小さな頃からの習慣だからだ。そうしないと落ち着かないということだった。ユーリーもそうなのだろう。部屋の中ではグダグダした姿をしている。外に出ればシャキッとする。黒崎と似ている。

「はい。ユーリー。入ったよ。ぬるめにしているよ。熱くて飲めないだろ」
「ありがとう。僕が熱い物が苦手だって見抜かれたときは恥ずかしかったよ。よく分かったなあ」
「ハンバーグを食べているときに気がついたんだよ。だって、冷ましていたもん。熱々のステーキが食べられないなんてって、カズ兄さんが言っていたっけ……」
「ああ。僕はそれが食べられない。冷たいゼリーもだ。子供の頃に事故が起きたらいけないからってことで、ステーキもゼリーも食べさせて貰えなかった。ゼリーを食べたのは、16歳になってからだ。兄さんが食べていて、一つ貰った。バーテルス家の決まりでは、噛めない物と喉に詰まる物は食べるのは禁止されている」
「それを守っているのはあんただけなんだろ?ノアなんて、ゼリー飲料を飲んでいるよ。美味しいけど。ファミレスでステーキだって食べているし、カフェでステーキ丼だって食べていたよ」
「おかしいな。ノアには言っておいたのに。固い肉は禁止だって……。ハンバーグはいいんだ。煮込みハンバーグなら……」
「煮込みハンバーグは熱いだろ?よく食べる気になったね。俺は好きだけど」
「美味しそうな匂いがするからだ。僕は肉は嫌いじゃない。好きな方だ。ああーーー、ファミレスのポテトが食べたくなってきた!」
「好きだよねえ。俺も好きだけど。ファミレスに行く?」

 ユーリーが好きなファミレスは、ここから車で10分かかる場所にある。お昼ご飯で行っても良いと思った。そこで、アンドリューのことを忘れていたと思った。彼のことをこの家に残していくことになる。山崎さんは預けていって良いと言ってくれたが、さすがに子猫の面倒を頼むのは悪いと思っている。そこで、宅配を頼もうと思った。たしかこの家も宅配エリアに入っていたはずだ。

「黒崎さん。お昼ご飯はファミレスの宅配にしようよ。ユーリーはここでお昼ご飯があるから、ポテトだけ頼めば良いよ」
「そうするか。今日の昼食は冷やし中華だったな。ポテトと合わなくも無い」
「うん。俺達は煮込みハンバーグにしようね。ユーリー、分けてあげるよ」

 この家では家族のスケジュールに合わせて、朝昼晩の食事が用意される。急な用事でキャンセルするときもあるが、基本的にそうせずに、きちんと予定通りに食事をすることになる。時々俺達が急にお邪魔するときは、冷蔵庫である物で作って貰うこともある。しかし、最近ではこの家で食べることが増えて、俺達のためのメニュー表も作成され始めた。あらかじめ食べたい物をリストアップしておいて、1週間の献立メニューということで配布される。そして、まるで学校の給食のように、この家のキッチンに貼り出される。

「僕もがっつりと煮込みハンバーグが食べたい。冷やし中華も食べたい」
「そんなに食べたいのか~。でもさ~、ダイエットを始めるんだろ?」
「そうだけど……」
「ユーリー。半分ずつにしろ。俺と分けよう。夏樹。お前はハンバーグを一人前食え。やっとまともに食事が取れ始めたんだ。しっかり食っておけ」
「そう?ユーリー、良かったね。がっつりじゃないけど、黒崎さんから優しくされたんだからさ。良いことがあるよ」

 そう言って、ユーリーのダイエットを応援した。最近、また体重が増え気味だそうだ。先々月にそう言っていた。その後、ダイエットをして体重を元に戻したが、また太ってしまったのだという。あちこち食べ歩きをするからだと言っていた。その相手は月島さんだ。時々、一貴さんも輪に入る時がある。それはもう美味しい物だらけで、もうお腹いっぱいだから食べられないというセリフが出ないらしい。

 その話には黒崎が反応し、都内のデートスポットと店の情報を頭にインプットしていた。いつか俺のことを連れて行ってくれるそうだ。ゴールデンウィークもどこかに行こうと言っていたが、俺の抜歯の後の安静が必要で、拓海さんのお墓参り以外はずっと家に居る。
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